2021年のパソコンはどう進化する? 注目はやはりApple、Intel、Microsoftのプラットフォーム変革本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2021年01月03日 15時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

Apple M1の影響は、むしろArm版Windowsに

 もっとも、ここで忘れてはならないのが、MicrosoftがArm版のWindowsとそれを搭載する独自開発のPCにご執心なことだ。

 Microsoftは2019年、「Surface Pro X」に搭載するSoCの「SQ1」をQualcommと共同開発し、Arm版WindowsとArm上でIntel用Windowsアプリケーションを動かすためのエミュレータを開発した。

 さらにMicrosoftは「SQ2」搭載の第2世代Surface Pro Xを2020年に発売しているが、こちらは動作クロック周波数が少しばかり上がった程度で、大きな変革をもたらすものではない。

Surface Pro X MicrosoftがQualcommと共同開発したSoCの「SQ2」を搭載する第2世代の「Surface Pro X」。Arm版のWindows 10が動作する

 しかしながら、Intel製プロセッサを搭載したモバイルPCの性能向上ペースが鈍いのは消費電力に起因する問題が原因で、体験の質を高める上でCPUの消費電力あたりのパフォーマンスをさらに追求する必要があることをApple M1が世の中に示したため、次世代のMicrosoft製プロセッサには期待が持てるのではないだろうか。

 SQ1、SQ2ともにTSMCの7nmプロセスを用いて製造されていたが、今年のアップデートでは5nmプロセスを前提とした、より大規模なSoCに更新されているはずだ。そうなれば(コンセプトの違いがパフォーマンスの差を生み出す可能性は傍に置くとして)、WindowsにおいてもArm搭載機の方が用途によってはよいという評価、あるいは期待が生まれてくるだろう。

 PCベンダーにしても、Intelアーキテクチャだけに依存せざるを得なかった中、Arm版でも十分な性能が得られ、またそれがユーザーに認知されるようになれば、Intel依存を弱めておきたいと考えるはずだ。

 Microsoftによるエミュレーション技術も、互換性、パフォーマンスともに向上していくとするなら、Intelアーキテクチャに依存しない形でのWindowsプラットフォーム展開は不可能ではない。そのことは、既にAppleが証明している。

 M1の高性能ぶりやそれを搭載するMacのバッテリー駆動性能の高さなどが周知されたことで、大きくWindowsプラットフォームも動くのではないだろうか。

M1の次は果たしてどのような拡張になるのか

 一方でかなり不明瞭なのが、AppleがM1をどのように高性能な製品に展開していくのかだ。Appleは将来的にハイエンドデスクトップのMac Proを含むあらゆるMac製品を自社半導体にするという。

 M1は、1つのチップにメモリを含む必要な要素を集約することで、高性能と省電力を極めて高いバランスで両立させたSoCだ。しかし、一方で拡張性には乏しい。メモリはパッケージ内に封入されているため、最大で16GBしか選ぶことはできない。

 そもそも、M1が低消費電力で高性能な理由はTSMCの5nmプロセスとDRAMまで含めてシングルパッケージに封入した構成にかなり強く依存している。いずれ他社も追い付いては来るだろうが、しばらくは前にいるだろう。

Mac Pro メモリも含めてシングルパッケージに封入し、低消費電力と高性能を両立したApple M1

 しかし、これをMacBook Proでも上位のモデルにまで適用できるかといえば、それが難しいことは、M1を搭載する製品ラインアップからも分かる。MacBook Airは完全に置き換えたが、13インチMacBook Proは下位モデルのみの置き換えで、16インチモデルは何のアップデートも受けていない。Mac miniもIntel CPU搭載モデルと併売のままだ。

 Mac Proに至る前に、まずは13インチMacBook Pro上位モデル以上のクラス(すなわち28W〜)の熱設計を許容できるモデルに対して、どう応えていくかは現在のM1からはみえない。

M1 Mac M1を搭載する最初の製品となった「MacBook Air」「13インチMacBook Pro(下位モデル)」「Mac mini」。より大型で高性能な16インチMacBook ProやiMac、Mac Proには、M1より消費電力(発熱)は大きくても高性能なプロセッサが求められる

 そもそもM1が高性能かつ低消費電力な理由は、同一パッケージに封入されている広帯域で接続されたDRAMを内蔵CPU、GPUが共有することで、メモリ内容をグラフィックスメモリとメインメモリの間で転送する異なる処理できるからという説明だった。

 しかしM1のさらに上の性能を狙うならば、GPUは外付けの独立チップにせざるを得ない。もちろん、CPU、DRAM、GPUを別々のチップで1つのパッケージに搭載し、GPUとGPUを協調動作させることも不可能ではないだろうが、DRAMの拡張性に難を抱えたままとなる。

 2021年、Appleがそこにどのような解決策を持ってくるのかに注目したい。

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