連載
» 2021年01月03日 15時30分 公開

本田雅一のクロスオーバーデジタル:2021年のパソコンはどう進化する? 注目はやはりApple、Intel、Microsoftのプラットフォーム変革 (1/3)

2020年は、AppleがMac向けの独自プロセッサで圧倒的な「電力あたりのパフォーマンス」を見せつけ、Intelが新しいプラットフォームでWindowsノートPCのさらなる進化を促した。2021年もプラットフォームをまたいだ競争に注目が集まりそうだ。

[本田雅一,ITmedia]

 2021年のパソコンはどう進化していくのか。年始のコラムはそれを支えるプラットフォームの変革について話を進めていきたい。昨年末のコラムから続く内容となるので、合わせてご覧いただきたい。

 昨年、第11世代Coreプロセッサを中心とする「Intel Evo」プラットフォームでモバイルコンピュータを大きく前進させたIntelだが、想定外だったのはAppleが独自に開発したMac向けSoC(System on a Chip)の「Apple M1」が予想以上の高性能だったことだろう。

 あれぐらいは想定内だった? いやいや、限られたスペックの範囲内において、そして「電力あたりのパフォーマンス」という視点において、M1は確かに予想以上の性能を出した。M1搭載MacBookシリーズはほとんどのモバイルPCより高性能にもかかわらず、半日使っても15%程度しかバッテリーが減らず、少々重い処理を行ってバッテリーを使ってみようと思っても、さして本体が温かくならない。

M1 MacBook Air 「Apple M1」搭載の「MacBook Air」。モバイルPCとして非常に高い性能にもかかわらず、驚くほどパッテリーが長持ちする

 ただし、M1がパーソナルコンピュータという土俵で圧倒的な性能を示したのは、前述したように、電力あたりのパフォーマンスに依存する一定領域内での話であり、高性能コンピューティングの世界にまで至るスペクトラムの中で、どこまでAppleの設計がスケーラビリティを持つかは未知数だ。

 加えてAppleのM1は、業界でいち早くTSMC(台湾の半導体製造ファウンドリ)の5nm製造プロセスルールを利用できた大規模SoCであり、160億個という極端に多いトランジスタの集積を可能にした。もちろん、それだけの投資をしたからという理屈は成り立つが、筆者の視点はそこにはない。

 どこよりも早く最新の製造プロセスを用いて設計できたということは、次の段階でより大規模なSoCへとステップアップすることは難しいということでもある。TSMCは今年、5nm+といわれるトランジスタ密度を高めたプロセスを導入するものの、劇的なトランジスタ数の増加が見込めるかといえば、難しいだろう。

 恐らくはiPhone向けのA14 BionicがA15 Bionic(仮)に進化する手助けにはなるが、Mac向けのM1をM2(仮)にするには2022年以降の3nmプロセス、あるいはその先の3nm+が必要だと思われる。

TSMC 台湾の新竹サイエンスパークに本拠を置くTSMCは、世界最大手の半導体製造ファウンドリ。その最新世代である5nm製造プロセスルールを利用して160億ものトランジスタを集積できたことが、Apple M1の性能をここまで上げられた大きな理由だ

 言い換えれば、TSMCの製造プロセスを用いたライバルが今後登場するならば、それらがM1のライバルになっていく可能性は十分にあるということだ。5nmプロセスという武器を他社も使えるようになるときに、Apple製半導体の真の競争力が見えてくる。

Apple M1の高性能に対してIntelは?

 長らく停滞しているIntelのモバイルプロセッサの進化に対して、Intel、大丈夫? と思ってきたPCエンスージアストは少なくないだろう。それはTiger Lake(開発コード名)と呼ばれていた第11世代CoreをSoCとして搭載するEvoプラットフォームで挽回したといいたいところだが、実際には性能面でも消費電力の面でもApple M1に大差の状態では、大丈夫? と思われても致し方がない。

11th gen Intel Core Tiger Lakeこと第11世代Core。左が薄型ノートPC向けのUP3パッケージ、右がより小型で省電力なUP4パッケージ

 何しろ12〜28Wの消費電力クラスであるTiger Lake UP3パッケージが、15Wを上限とする13インチMacBook Pro下位モデル搭載時のM1よりもパフォーマンスが低いだけならまだしも、10〜12W程度と想定されるMacBook Airのフォームファクターでも負けてしまうとなれば、いくら製造プロセスが世代違いとはいえ、大丈夫? と思うのは自然なことだろう。7〜15WのUP4パッケージともなれば、M1とは比べるべくもない。

 Intelの言い分としては、10nmプロセス(Intelは他社の7nmプロセス相当の技術と主張しているが、それでもTSMCの5nmよりも1世代古いことになる)における適切なダイサイズ(半導体チップの面積)であり、従来比であれば高い性能と低消費電力を実現しているところをみてほしいのだろう。

 目の前の現実でいうならば、IntelのモバイルプロセッサはAppleのM1に対して(少なくとも製造プロセス≒トランジスタ数)は周回遅れであることは否めない。しかし、だからといってライバルとしての挑戦権がないわけではない。

 AppleのM1はMac専用であり、現実にはIntelが主要顧客としているWindows PCベンダー向けでは直接のライバルとはなり得ないからだ。M1が高性能だからといって、その上でWindowsが動作するわけでもないのに、気にしても仕方がないというのは、考え方によっては正しいかもしれない。

 実際のところ、Macがいくら高性能になったところでIntelプロセッサのシェアが急減するとは思えない。Intelものんびりしているわけではないだろうが、その辺りのプラットフォームとしての強みを考慮した上で「大丈夫、次への布石をゆっくり打っていこう」という考えなのかもしれない。

 同社が他社の5nmプロセス相当と主張するIntelの7nmプロセス立ち上げは2022〜2023年といわれているから、まだまだ先の話。Appleがどんなプロセッサを開発しようとマイペースにロードマップを消化していくつもりだろう。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia PC USER に「いいね!」しよう