「Apple M1」でMacの性能が大きく伸びたワケ Intel脱却計画に課される制約とは?本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2020年11月12日 11時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 Appleは日本時間の11月11日にオンラインイベントを開催し、独自設計の「Apple M1」チップとそれを搭載する「MacBook Air」「13インチMacBook Pro」「Mac mini」を一挙に発表した。発表直後から注文を受け付けており、翌週に販売を開始する。

Apple M1 AppleがMacのために設計した初めてのSoCである「M1」

 この発表はAppleにとって特別なものだ。なぜならパソコンメーカーとして始まったAppleが、初めて「全てのアーキテクチャを自社で設計するパソコン」を作ったからだ。

 これまではシステムの中心となる部品を他社に依存してきた。これはAppleだけでなく、全てのパソコンメーカーがそうだ。あのIBMでさえ、CPUは他社に依存していた。

 しかし、AppleはiPhoneやiPadを段階的に自社製SoC(System on a Chip)の「Apple Silicon」にしたのと同じように、Macでもアーキテクチャの全てを自社のコントロール下に置いた。このことは、恐らく来年の開発者向け会議であるWWDC(Worldwide Developers Conference)以降にさらに大きな意味を持つようになる。

Apple M1 Mac M1を搭載する最初の製品となる「MacBook Air」「13インチMacBook Pro」「Mac mini」

 AppleはMac専用に開発したApple SiliconのM1において、電力あたりパフォーマンスや、省電力性と最大パフォーマンスの両立などを訴求している。それはもちろん、その通りなのだが、これから2年をかけて全てのMacをApple Mシリーズチップに置き換える中で、どんなシナリオが考えられるのか。

 M1の注目点を紹介しながら、これからのMacに向けたシナリオについて考えてみたい。

Mac専用にAppleが持つ最新プロセッサを再編成した「M1」

 最初のMacに搭載されるSoCがiPhone 12シリーズ向けの「A14 Bionic」をベースとしたものであることは、誰もが予想していたところだろう。過去にもAppleはiPhone向けSoCに使われている回路設計を応用し、規模が大きなiPad専用チップを設計してきた。iPhone向けの「A12 Bionic」をもとに、iPad向けの「A12X Bionic」や「A12Z Bionic」を設計している。

 それらと同様に、M1はAppleが持つ最新の回路を再構成し、Mac用にまとめ直したものだ。A14 Bionicで開発したものと同じ部分も多い。CPUの高性能コアと高効率コア、GPUコア、16コアのNeural Engine(機械学習モデルの推論アルゴリズム専用プロセッサ)、ISP(Image Signal Processor)などはiPhoneに搭載されているものと同一の設計だ。

Apple M1 M1に含まれる主な機能

 異なるのはM1には高性能コアが4つ、GPUコアが8つ搭載されることで、それぞれA14 Bionicに対して2倍のコアを搭載している。またGPUコアの倍増に伴い、データ処理、参照量が増えることを見越してメモリ帯域は2倍に拡張されている。

M1 CPU GPU CPUは高性能コア4つと高効率コア4つの構成。GPUコアは8つだ。A14 Bionicに比べて、CPUの高性能コアとGPUコアの数は2倍となる
M1 CPU 最新ノートPCに比べて、10WでCPU性能は2倍、4分の1の消費電力で同じパフォーマンスを発揮できるとする
M1 GPU 最新ノートPCに比べて、10WでGPU性能は2倍、3分の1の消費電力で同じパフォーマンスを発揮できるとする

 この辺りはA12 BionicとA12Z Bionicの関係に似ているが、Mac向けならではの要素も盛り込まれている。

 そのうちの1つは仮想化で、M1では仮想コンピュータを動かすための機能が加えられている。LinuxをはじめとするARM64で動作するOSを仮想コンピュータ上で動かすことができる。ただし、x86プロセッサの仮想化ではないことに注意していただきたい。Windowsが動作するわけではない。

 また、M1に搭載されるGPUのアーキテクチャは同じだが、より多くのテクスチャフォーマットに対応しているという。具体的にどのように増えたのかは承知していないが、PC向けに設計されているゲームや3Dアプリケーションをサポートする上で重要になるだろう。

 同じようにA14 Bionicには搭載されていないのが、Thunderbolt 3・USB 4のインタフェースだ。Intelのシステムであれば、I/Oコントローラーに統合されるべきパソコン向けインタフェースをM1はチップそのものに内蔵した(ただし最大チャンネルは2つで、M1採用システムのThunderbolt 3ポートが2つなのはこれが理由だろう)。

 セキュリティまわりの回路やSSDコントローラーの統合なども、iPhone向けSoCで培われたものに違いない。

 つまり、極めて出荷ボリュームが多いiPhoneおよびiPad向けに開発された設計要素を最大限に活用し、そこにMacに必要とされる要素も同じチップの中に収めたのがM1といえる。

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