既報の通り、VAIOは2月18日、新しい「VAIO Z」を発売した。立体成型フルカーボンボディーによって本体の丈夫さを確保しつつ、最軽量構成では約958gを実現している。
新しいVAIO Zはどのような特徴を持っているのか。この記事では、外観や機構面を中心に紹介していく。
VAIO Zは、天板、液晶回りのベゼル、パームレスト、底面の4面において東レ製の複層カーボンファイバー素材を採用している。ノートPCの主要部位を覆うために、各面において立体成型も取り入れた。
立体成型の複層カーボンファイバー素材を作る場合、一般的には「オートクレーブ」と呼ばれる窯を使う工法が使われる。しかし、オートクレーブ工法では1つ1つの部材を窯で温めて圧力を掛けて作るため、量産効果は“皆無”に近い。そのため、ノートPCのような量産が求められる工業製品に使うことは難しいとされてきた。
しかし、東レを中心とする検討チームが多くの工夫を加えた結果、立体成型の複層カーボンファイバーボディーを実現できたという。その成果は、天板の側面、ヒンジの断面、パームレストの側面や底面の後方面角部などで確認できる。
多くの部位でカーボン素材を用いることで、VAIO ZはTDP(熱設計電力)の高い第11世代Core H35プロセッサ(開発コード名:Tiger Lake-H)を搭載するノートPCとしては非常に軽量なボディーを手に入れた。カタログ上の重量は、フルHD液晶モデルで約958〜1013g、4K液晶モデルで約1002〜1065gとなっている。
搭載されているCPUのことを頭に置いて本体を手にすると「え、こんなに軽くて本当にHプロセッサを搭載しているの!?」と驚くことは間違いない。ただ、いわゆる「スカスカ」ではない。本体のどこの面を持っても同じような重量感を覚える。バランス良く“中身”が詰まっているという印象だ。
VAIOでは従来から独自の指標で本体の耐久性テストを実施してきた。一方で、最近のPCやスマートフォンでは米国防総省の物資調達基準「MIL-STD-810H(MIL規格)」を耐久性を示す指標として用いることが多い。
MIL規格は、米軍が用いる物資が満たすべき耐環境性能や耐衝撃性能を定義したものだ。規格上定められた試験をクリアできれば、一定水準以上の“頑丈さ”が客観的に担保されている、という意味を持つ。
VAIO Zでは、VAIO独自の耐久性テストに加えて、MIL-STD-810Hに基づく6項目の耐衝撃/耐環境テストを実施し、クリアしている。単に軽いだけではなく、丈夫さもしっかりと確保しているのは心強い。
先述の通り、VAIO ZのCPUは第11世代Core H35プロセッサだ。モバイル向けではあるが、オペレーティングレンジ(TDPの範囲)は28〜34Wと通常のTiger Lakeよりも本体を“よく冷える”ように設計しなければならない。
本体の発熱を減らすなら、「オペレーティングレンジを低めに設定する」という手もある。しかし、それではCPUの性能を引き出し切れなくなってしまう。かといって、オペレーティングレンジをやみくもに上げてしまうと、本体の排熱が追いつかなくなり、サーマルスロットリング(発熱を抑制するための性能低下)を引き起こす恐れがある。パームレストや底面を通して熱が伝わることで、ユーザーが不快感を覚えるかもしれない。
そこでVAIO Zでは、本体内部を冷却するためのファンを左右に1基ずつ搭載するデュアルファン構成を採用した。CPUが発する熱を伝導する「ヒートパイプ」も太めのものを備える。より発熱するであろうCore i7モデルのヒートパイプは、Core i5モデルよりもさらに太い。5G対応構成では、5Gモデムを冷却するためのヒートパイプも別途用意している。
VAIO Zは、全モデルが「VAIO True Performance(VTP)」に対応している。VTPはCPUのピーク性能をより長時間維持するためのVAIO独自のチューニング技術だ。先述の冷却機構と併せて、Core H35プロセッサのピーク性能をより長く引き出せるという。
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