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2020年4〜12月通期で法人向けPC市場でトップシェア――レノボ・ジャパン躍進の原動力とは? 2021年はどう戦う?

» 2021年03月11日 06時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 レノボ・ジャパンは3月10日、報道関係者向けの事業戦略説明会を開催した。その中で日本の法人向けPC市場において「レノボ(Lenovo)」ブランドが2020年4〜12月通期のメーカー別シェアでトップになったことが明らかとなった(IDC Japan調べ)。その原動力は何だったのだろうか。

テレワークとGIGAスクールが原動力

 ご存じの人も多いと思うが、レノボ・ジャパンは中国Lenovo(連想集団)の日本法人である。Lenovoは、NECのPC事業をルーツに持つNECパーソナルコンピュータ(NECPC)と、富士通のPC事業をルーツに持つ富士通クライアントコンピューティング(FCCL)も傘下に持つ。とりわけ、レノボ・ジャパンとNECPCはLenovoとNECの共同出資会社を親会社とする「兄弟会社」として関係も深い。そのような経緯もあり、国内のPC市場に関する調査では、レノボ・ジャパン、NECPCとFCCLをまとめて「レノボ」としてシェアを合算するケースも見受けられる。

 ブランド(メーカー)別にPCメーカーのシェアを算出する場合、従来はNECPCやFCCLの方が高いシェアを記録していた。しかし、今回レノボがソースとして示したIDC Japanの調査では、レノボ単独で法人向けPCのシェアのトップに立ったという。同社のデビット・ベネット社長によると、このことは2005年の同社設立以来初めてのことだという。

シェアNo.1 IDC Japanの「Personal Computing Quarterly Model Analysis」における法人向けPC市場調査において、レノボブランドのPCが2020年4〜12月のシェアがトップに立った

 ベネット社長は、日本の法人PC市場におけるレノボの好調さは「テレワーク」と「GIGAスクール」の2つによって支えられていると語る。

 レノボは、新型コロナウイルスの感染が広がる前からテレワーク制度を導入している(参考記事)。そのノウハウをまとめた小冊子をPDFファイルとして配信するなど、早い時期からテレワークシフトが加速することを見越した取り組みを進めていた。そのことが奏功して、法人市場において広く受け入れられたようだ。

 一方、教育市場では、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」によって教育用PC市場のニーズが高まった。その動きを見越してレノボは2020年3月、NTTコミュニケーションズと共同で「GIGAスクールパック」の提供を開始した。

 GIGAスクール構想が掲げる小学校と中学校における「1人1台」環境の整備は、新型コロナウイルスの感染拡大により前倒しされている。そのこともあり、教育用PCの売れ行きも良好だったようだ。

シェア向上の下支え 法人PC市場におけるレノボブランドのシェア向上は、テレワーク需要とGIGAスクール需要に支えられたようだ
テレワークの取り組み 自社で取り組んできたテレワークのノウハウを詰め込んだ小冊子を無料で配信した他、テレワーク用のノートPCを無料レンタルする取り組みも行った

2021年度は「サービス」に注力

 短期的な視点に立つと、新型コロナウイルスの猛威は続くものと考えられる。それを踏まえて、Lenovoは4月から「3S」をキーワードとする組織改編を行う。新たな事業グループとして“サービス”を手がける「Solutions & Services Group(SSG)」を設けることが大きな目玉だ。

 働き方の変化や働く場所の多様化に伴い、PCを含む情報機器を扱う人や企業を取り巻く環境は大きく変化し、それに伴う課題も発生している。SSGでは、PCやサーバの保守を始めとする従来からあるサポートサービスを強化しつつ、企業が抱える課題解決を支援するソリューションも拡充していくという。

組織改編 2021年4月に行われる組織改編で、Lenovoはソリューションやサービスを手がけるビジネスグループを新設する
組織改編 組織改編は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人や企業を取り巻く環境が大きく変わったことが背景にある
直近決算 Lenovoの2020年度第3四半期決算では、新設されるSSGが所管するサービスやソリューションに関する売り上げが大きく伸び、会社全体の収入において一定の割合を占めるようになった

 グローバルの方針に基づき、日本法人であるレノボでも2021年度はサービス事業に注力するという。それに先立つ取り組みも少しずつ始まっている。

 例えば、マイクロソフトの「モダンワークプレイス」を活用するためのコンサルティングやマネージドサービスの提供を行っている。

 マネージドサービス関連では、レノボは独自に「スマートフリートサービス」も提供している。エンドポイント(クライアント)デバイスのセキュリティ確保には特に力を入れているといい、企業の環境に合わせてサードパーティー製ソフトウェアを使ったり、レノボ以外のメーカー製のWindows PCもまとめて管理できる環境を構築したりした事例もあるとのことだ。

ソリューション レノボでは、マイクロソフトのモダンワークプレイスの利活用を考えている企業に対するコンサルティングやサービスを提供している
スマートフリート レノボ独自のスマートフリートサービスは、他社製を含むWindows PCやソフトウェア資産をまとめて管理できる

 最近は、企業などからPCのデプロイメント(配備/展開)について相談を受けることも多いという。そこで、レノボではWindowsの「Autopilot」などを活用してPC配備にまつわるダウンタイムを極小化するサービスも提供しているという。

 非接触式デプロイメントの事例として紹介されたUCCホールディングスの場合、Autopilotそのものに加えて、事前にプロビジョニングされたデータを展開できる「Autopilot White Glove」やレノボ独自のプロビジョニングツール「Ready to Provision Plus(RTP+)」を併用することで、Windows 7からWindows 10への移行とOffice 365の導入拡大を8カ月で行えたという。

デプロイメント PCのデプロイメントに関するサービスも提供しているという
デプロイメント UCCホールディングスの事例

 ただ、全ての企業がUCCホールディングスのような非接触式デプロイメントを実行できる訳ではない。そこでレノボは2月から、NECPC群馬事業所内にキッティング拠点「カスタマー・フルフィルメント・サービス(CFS)」を開設した。

 CFSでは、OSの設定やソフトウェアのインストール、タグの貼り付けといったキッティング作業を企業に代わって実施する。非接触式デプロイメントとキッティングサービスを並行して提供することで、より多くの企業のニーズに応える体制を構築する。

CFS NECPC群馬事業所内に開設されたCFSは、全世界に11箇所開設されるCFS拠点の1つ。キッティング作業を委託したい企業のニーズに応える

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