ここで、AppleとEpic Gamesの裁判の主な争点について改めて総括をしてみたい。
Epic Gamesの要求の1つは、iOSに別のアプリ市場を搭載するサイドローディングを認めてもらうことだった。しかし、Appleが、これはマルウェアなどの技術的な攻撃の危険を増やす可能性があるという理由で反論すると、裁判所はそれを認めてEpic Gamesの要求を退けた(判決文108ページ)。
Epic Gamesの2つ目の要求は、AppleのApp Store内に「Apple Arcade」のようにして独自運営の他社製の別ストアを設置するというものだったが、Apple Arcadeで提供されているゲームはApp Reviewのガイドラインに沿ったものであることなどを理由に、この案も棄却された(103ページ)。
さらにEpic Gamesは、アプリ内課金に代わる他社による課金システムを認める要求をしたが、これも認められなかった。
Epic Gamesは、Appleによる手数料が法外であると異を唱えた。しかし、30%の手数料は他のアプリストアでも徴収されている標準的な手数料であり、これも認められなかった(なお現在、Appleは98%の中小規模開発者に対しては業界でももっとも安い15%の手数料でサービスを提供している)。
一方、裁判においてEpic Gamesが開発者契約に違反したとしてAppleが反訴すると裁判所はこの訴えを認め、Epic Gamesに350万ドルの違約金を支払うように命じた。
他方、Appleに関しては既に述べた通り、App Reviewに記されたAnti-Steeringが指摘された条文2つを取り除くことになっている。
Epic Gamesはこの判決を不服として、9月12日(現地時間)に控訴を申し立てた。
昨今、App Storeによる管理されたアプリ提供について、いくつかの方面から不満の声が上がっている。
開発者の98%を占める中小の開発者に関しては、Appleが手数料の見直しなどいくつかの条件で譲歩し7つの合意事項を提示した。
残る2%の大手開発者に該当するのがこの裁判で、裁判所からセキュリティーやプライバシーに配慮した安全なアプリストアの運用のために、手数料を取ることなどの合法性が正式に認められた今回の判決は画期的なものだ。
一方、米国外に目を向けると2021年5月に欧州委員会(EU)でも、Appleが「App Storeで支配的な立場を乱用している」という見解が予備的見解を示す異議申立が行われており、今回の米国内での裁判結果がどのような影響を及ぼすのかが気になるところだ。
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