Epic裁判の判決で認められたApp Store/アプリ内課金の合法性(1/2 ページ)

» 2021年09月13日 16時30分 公開
[林信行ITmedia]

 成功している大企業は嫌われやすい。16日間におよぶ審議を経て、先週末に判決が出たApple対Epic Gamesの裁判(ゲームタイトル「Fortnite」(フォートナイト)のApp Storeからの削除を巡る裁判)報道でも、10の争点中9つでAppleの訴えが認められ、賠償金を支払うように命じられたのはEpic Gamesであるにも関わらず、ただ1点のAppleへの改善要求が大きく報道されるケースが目立った。

合法性が認められたApp Storeとアプリ内課金は今後も従来通り運用

 しかし、実際にはEpic Gamesが早々に不服を申し立てたことからも分かるように、イボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ(Yvonne Gonzalez Rogers)判事の判決はAppleの考えを後押しするものだった。

 一連の報道を受け、Appleのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルカウンセルのキャサリン・アダムズ氏は、誤解が広がらないように改めてAppleが今回の裁決を歓迎していることを次のようなコメントで表した。

「裁判所の判決を大変うれしく思っている。これはAppleにとって大きな勝利だと考えている」

 実際、裁判長によって「Appleは連邦法および州法が定めるアンチトラスト法の観点から見て独占的な企業ではない」ことが正式に認められ、180ページにおよぶ判決文(PDF)にも「(Appleの)成功は違法ではない」、「AppleとEpic Gamesのようなサードパーティーの開発者との両方が、iOSのエコシステムの絶え間ない革新と共生的な成長から利益を得ている」といった言葉が書かれた(判決文3ページ)。

Apple Epic 判決文(PDF)の表紙

 裁判を通して、AppleによるApp Storeのビジネスやアプリ内課金(In-App Purchase:IAP)は決してAppleだけを利する独占的なものではなく、開発者と消費者の双方にも大きな利益をもたらすサービスと認められた。また、セキュリティーやプライバシーを提供すべく、Appleが開発者と契約を結んで手数料を徴収することに関しても「合法」と認められている。

 一部で、判決を受けてAppleはApp Storeの運営が大きく変わることを示唆する報道もあった。しかし、そうした事実はなく、Appleのアプリ内課金はほぼ従来通りに行われることをAppleの関係者も認めている。

 裁判所は、現行のアプリ内課金に違法性はなく、変更が不要であることを認めている。

 一部の報道に反して、Appleが他社による代替アプリ内決済を受け付けなければならないという事実もない。実際にEpic Gamesが裁判所に代替決済手段の採用を認めるように訴えたが、裁判所はこれを棄却している。

 今回の裁判を通して、Appleに課せられた唯一の変更はApp Storeで提供するアプリのガイドライン「App Review」から2つの文を削除することだけだった。1つは、開発者による外部決済手段をアプリ内で通達することを規制したもの。もう1つはアプリ外での通達に関する規制だ。

Apple Epic 「Apple Review」のページ

 裁判所は、こうした外部への誘導の規制(anti-steering)は「開発者が他のWebサイトで、例えばより手頃な価格での製品提供など、どのような提案があるかを消費者から隠していることになる」とした。そしてそれがAppleのビジネスを利することになるとして、この2つの条文の削除を求めた(118ページ)。

 Appleは、既に開発者がユーザーの承認を得てメールアドレスを提供することを認めていたが、裁判所はそれでは不十分とした。また「Appleは開発者に対して、厳しいルールを課しているが、平均的な消費者はそうした事実を知らない」として、こうしたルールを少し弱めることで、競争が活性化すると補足した。

 「App Review」の該当箇所について、現在、Appleは代わりとなる新しい条文を用意している。

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