Appleのティム・クックCEOが「VivaTech 2021」で語った注目する技術と未来の方向性iPhone 30は? Apple Carは?(1/3 ページ)

» 2021年06月18日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]

 6月16日に開幕したフランスのテクノロジーイベント「VivaTech 2021」初日のステージに、Appleのティム・クックCEOがオンラインでリモート登場した。フランス発のグローバルメディア「BRUT」のギョーム・ラクロワCEOによる公開インタビューに近い形で、COVID-19対応や納税方針、さらには未来のiPhoneの方向性やApple Carなどについても話した。

「BRUT」のギョーム・ラクロワCEO(右)のインタビューに答えるティム・クック氏(左)

Appleのティム・クックCEOがコロナ禍への対応を振り返る

 VivaTech初登壇となるティム・クック氏。冒頭、主催者への謝辞や直前まで登壇していたエマニュエル・マクロン仏首相や、そのファーストレディーへのメッセージを伝えた後、ラクロワ氏から最初に向けられた質問はコロナ禍でのAppleについてだった。

 「世界中の多くの人々にとって、本当に厳しく、悲劇的な時期でした。パンデミックから抜け出した私たちは、まだパンデミックのまっただ中にいる人たちを助ける義務があると思います」とクック氏は切り出した。

 一方で「パンデミックにおけるAppleの対応とチームを、私はこれ以上ないほど誇りに思っています」とも語った。

 「パンデミックが発生した直後から、私たちは『どうすれば支援できるか』という問いを自分たちに投げかけてきました」とクック氏は述べる。

 その結果、まずはサプライチェーンチームがマスクを調達して寄付することを決定、ミニサイズを含む3000万個のマスクをフランスに寄付したという(イベントの開催国や聴衆の多くがフランス人であることを受けてフランスについてだけ言及したが、他の国に対しても寄付をしている)。

 エンジニアリングチームは、フェイスシールドを設計/製造し、何千万個ものフェイスシールドを世界中に出荷した。その後も自問自答を繰り返した結果、ソフトウェアエンジニアリングチームは、Googleと共同で接触確認アプリの基礎技術を開発した。

 パンデミックが拡大するインドには、メドトロニックや他の企業と協力して人工呼吸器を寄贈し、現在は(PRODUCT)REDと協力して、ワクチンを必要としているアフリカにワクチンを寄付しているという。

 このようにAppleは、パンデミックの状況が変わるごとに、毎回「どうすれば支援できるか」と自問し、できることを続けてきたという。

 クック氏はこうしたコロナ対応は何もAppleだけがしてきたわけではなく、世界中の人々が行ってきたことだとも付け加え、最近、会話をする機会があったというフランスのCOVID Trackerというアプリの開発者を例に挙げた。

 「パンデミックは多くの人々の能力を引き出し、人類の回復力を示したと思います。また、テクノロジーと人文科学(humanities)の交わりが、いかに正しく行われたかの証左でもあると思います。そして、テクノロジーと人文科学の交わりが、世界を改善するために信じられないようなものを生み出すことを示しました」と答え、そういったCOVID-19が与えた結果に対しては楽観している部分もあると付け加えた。

プライバシーは基本的人権であり人間の基本的な権利

 クック氏の答えを受け、ラクロワ氏は「人間性とテクノロジーの交差点」でも重要なプライバシーの問題に切り込む。

 「プライバシーは基本的人権、人間の基本的な権利」とクック氏はそう強調し、Appleがこれを守るために10年以上取り組んできたと語った。

 生前、創業者のスティーブ・ジョブズ氏は「プライバシーで重要なのは、分かりやすい言葉で表現すること」と語っていたという。人々が何にサインアップし、何を許可するのかをきちんと理解し、許可は繰り返し求めるべきだという考えも示していた。

 クック氏は「監視経済が進み、プライバシーが重要でなくなった世界」の想像を促すと「誰もが誰かに監視されている心配をし、表現の自由が狭まるような世界には住みたくはありません」と自ら答え、Appleにとって「プライバシーは重要な価値観の核心をなす」と答えた。

 ラクロワ氏は、ここでAppleも「GAFA」の一員と見られていると口にすると「それは私が好きな略語ではありません。なぜなら、全ての企業が均質であるかのようなイメージを抱かせるからです。しかし、これらの企業は全て非常に異なっており、異なるビジネスモデル、異なる価値観を持っています」と断った。

 Appleの特徴はというと、まずは物作りの会社であること。さらに「ハード、ソフト、サービスといった全てを作り、それらが美しく調和するように心がけていること」と語り、「私たちは、最も多く作るのではなく、最も良いものを作ることに集中しています」とも付け加えた。

Apple

 フランスでiPhoneの市場シェアが約23%とトップシェアになったのはそうした姿勢だとクック氏。

 Appleを特徴づける他の重要な価値観として気候変動への対応を挙げ「プライバシーと同様に、今世紀で最も重要な問題の1つだと信じているから私が好きな略語ではありません。なぜなら、全ての企業が一枚岩であるかのような図式を描きがちだからです。しかし、これらの企業はそれぞれ非常に異なっており、異なるビジネスモデル、異なる価値観を持っています。

 Appleを見て、私たちが何をしているのかを考えてみると、私たちは物を作っています。私たちはハードウェア、ソフトウェア、サービスを作っていますが、それらが交差する部分では、全てが美しく調和し、シームレスに機能するようにしています。私たちは、最も多く作るのではなく、最も良いものを作ることに集中しています。

 その結果、フランスではiPhoneの市場シェアが約23%となり、トップシェアを獲得することができたのだと思います。このようなことは、企業ごとに根本的に異なっていますが、私たちの基本的な価値観、つまり今おっしゃったようなプライバシーについても同様です。もちろん、私たちは気候変動に多大なエネルギーを注いでいます。それは、プライバシーと同様に、今世紀で最も重要な問題の1つ」だとした。

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