第9世代iPadに感じた妥協しない価値 iPad miniとクイックメモに感じた新しい展望(3/4 ページ)

» 2021年09月22日 22時00分 公開
[林信行ITmedia]

半分のサイズにiPadの最新トレンドを凝縮した「iPad mini」

iPad mini iPad miniは2012年の初代製品発表時から(手の大きな男性ならギリギリ)、片手で持てるサイズをターゲットにしている。iPhoneに近い使い勝手ながら、iPadにしかできない機能も使える仕様設計が実に絶妙な製品で、今回の新モデルでiPadの中でもかなり特殊なポジションを築けたと思う

 最後に今回の目玉製品となる、iPad miniをレビューしよう。

 第9世代iPadの後にiPad miniに触ると、その圧倒的な魅力に度肝を抜かれる。iPadの半分ほどのサイズの製品なのに、表示している画面の画素密度はiPadの264ppiに対しiPad miniは326ppiと高く、それだけにホーム画面を見ただけで表示が引き締まっているように感じる。写真撮影時の背面カメラの映像も、かなり緻密だ(これはiPadのカメラが800万画素なのに対して、iPad miniの方が1200万画素の良いカメラを搭載していることもあるのだろう)。さらにiPad miniのカメラは、明暗差が激しい写真を美しく撮れるスマートHDR 3にも対応している。

 でも、小さい画面だから映像の迫力は落ちるのではないか? と思ったが、映画を見てみると、全くそのようなことはないことに驚いた。iPadのスピーカーはホームボタン側にのみ内蔵されており、水平に構えて映画を見るときには片側からしか音が聞こえてこない。それに対してiPad miniは4つスピーカーを備え、構えた向きに合わせて常に立体的に音を再生しようとする。

 画面のはるか外側から走ってくる自動車の音を含んだ動画をiPad miniで聞くと、iPadでは味わえない迫力を感じた。

 搭載しているプロセッサは、iPhone 13/13 Proシリーズと同じ最新かつ最高性能のA15 Bionicだ。これまでのiPad miniとは、機械学習の処理などで最大2倍近い性能差と圧倒的に速く、Photoshopなどのプロ用アプリも楽々使える(何せプロセッサ的にはiPad Airよりも1世代進んでいるのだ)。

iPad mini 新型iPad miniの主な特徴

 通信機能も5G(Wi-Fi+Cellularモデルの場合)やWi-Fi 6に対応して高速だし、ポートもより高速で幅広い周辺機器が選べる業界標準のUSB Type-C端子を新たに搭載した。これによりデジタルカメラはもちろん、その他、幅広い機器が接続できるようになっている。

 これまで、同程度のサイズのタブレットは他のメーカーからも出ていた。しかし、そのほとんどは機能を落として価格で勝負する廉価な製品だった。iPad miniのアプローチはそれとは正反対で、小さい本体サイズを秀でた製品の特徴と捕らえ、このサイズに詰め込める最高の機能を凝縮している。

 だから最低価格も5万9800円からと、倍ほどのサイズの第9世代iPadに比べて2万円以上高い。でも、よく考えたらそれは当たり前だ。それだけ優れたミニチュアリゼーションの技術を施しているのだから。よく日本人は、近い性能の商品ならよりコンパクトな機器を好むと言われるが、本当にそうだとしたら、このiPad miniは、そんな日本人のために作られたiPadだとすら思えてくる。

iPad mini Butterfly Networkの超音波センサー「Butterfly」は、iPad miniとの組み合わせで高い機動性を発揮する。価格は2399ドルほどだが、これは通常の医療用超音波センサーの10分の1程度の値段だ。とはいえ、日本で認可を取得できて発売されたとしたら、この値段では売れないかもしれない

 さて、iPad miniと第9世代iPadを隔てる大きな違いの1つがUSB Type-C端子の採用だ。人によっては、これだけでこの製品を選ぶ大きな理由になり得る。例えば医療用の超音波センサーを使って訪問医療を提供したい医師や、バッグに小型のシンセサイザーとiPad miniを常に忍ばせて、どこでも音楽パフォーマンスを披露したいミュージシャンなどだ。iPad miniの優れた携帯性とUSB Type-Cの接続性で新しいワークスタイル/ライフスタイルが誕生しそうな予感すら覚える。

 このUSB Type-C端子の採用で変わったことが他にもある。Lightning端子に挿して充電する第1世代のApple Pencilではなく、本体側面にマグネットでくっつけて充電する第2世代Apple Pencil(1万5950円)に対応したのだ。当然、iPad miniの側面はこれに伴ってフラットエッジ(平らな側面)になった。

 片面に第2世代Apple Pencil、反対の側面にカバーをくっつけることを前提とした新iPad miniには、もう1つデザイン上の変化が必要だった。これまで側面にあった音量ボタンを電源ボタンと同じ側に移動する必要があったのだ(その反対側にはUSB Type-C端子がある)。

 これまでとは90度違う向きとなり、電源ボタンと一列に並んだ音量ボタンで操作に迷わないのか最初は不安に思った。Appleはこの問題をどう解決したのだろうか。

iPad mini 新型iPad miniではボタンの配置が変更され、Touch IDセンサーを内蔵した電源ボタンと音量調節ボタンが同じ面に並ぶ形になった。加速度センサーやジャイロセンサーで製品の向きを認識し、常に左右の音の向きも音量ボタンの向きも自動調整する辺りは、ハードとソフトが混然一体となったiPadらしい仕様だ

 まず第1のステップとして、ホームボタンをなくした上下/左右の方向がないオールスクリーンデザインが採用された。オールスクリーンサイズのiPad Proは、スピーカーを4基採用して、構えた向きに合わせてスピーカーの左右チャンネルが自動的に切り替わる。実はこれと同様の仕組みで、iPad miniの音量ボタンも構えた向きで、自動的に役割が切り替わるのだ。

 本体を水平に構えたときには、常に上のボタンが音量アップ、下が音量ダウンだ。

 では、垂直方向に構えた場合は左右どちらが音量アップになるか、みなさんはお分かりだろうか?

 最初は、ここで混乱するのではないかと心配した。しかし1度ボタンを押すと、取り越し苦労だったと分かった。音量を調整すると画面に横長バーのボリューム表示が現れるが、このバーは音量を上げると右側に伸びていく。この表示に合わせて、音量ボタンが左右に並んだときには、常に右側が音量アップという納得のいく仕様になっていた。

 iPad miniでは、この他にもフロントカメラが、センターフレーム対応の超広角レンズになったり、マスクが当たり前の日常にうれしい指紋認証(Touch ID)が電源ボタンに組み込まれていたりと、2021年度のiPadの新しいトレンドも積極的に取り入れた、非常に魅力の大きな製品に仕上がっている。

 AppleはよくiPadを魔法のような機器とうたっていたが、この小さいiPadに最新の魔法が全て凝縮されているのだ。

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