第6世代となる新しい「iPad mini」がiPhone 13とともに登場した。iPad miniとしては初めてiPad Pro系のホームボタンがない新しいデザインを採用し、さらに最新のiPhone 13シリーズと同じSoC(System on a Chip)のA15 Bionicを搭載したコンパクトなタブレットだ。
本稿はその製品レビューを行うわけだが、実は捉えかたはとてもシンプル。「(第4世代)iPad Airのプロセッサを強化し、サイズを小さくしたもの」と言えば、おおむね間違いではないからだ。
もちろん、細部には多くの違いがある。また十分なキーボードサイズが確保できないからだろうが、キーボード兼カバーのSmart Keyboard Folioも用意されない。だが、紛れもなくこれは小さなiPad Airだ。従って、小さな気付きにくい使い勝手や、この製品のユースケースなどを実機での感想を交えながら書き進めていきたい。
このミニタブレットというジャンルはデジタルメディアの再生を目的としたものが多く、道具としての品質感や性能よりも、移動時にコンテンツを楽しむデジタルプレーヤー的に低コストな製品を求める人が多い。
それはiPad mini以外に高性能なミニタブレットが存在しないことからも分かるだろう。以前は確かにあった。しかしSoCの性能が上がり、十分にメディア端末としての性能に不満がなくなってきたところで価格競争になったのだ。
そしてもう一つ、サイズの小さい商品に対して多くのお金を払いたくない人が多いということもある。高性能なSoCを搭載し、メモリやストレージも多く、基幹部品やシャシーの素材が高級なのであれば、小さくても高価になるので、価格競争になるとそうした製品は見られなくなる。
もちろん、「私は違う」という人もいるだろう。ものを捉えるときの価値観は人それぞれだ。小さいことの価値を感じ、「小さいけれどiPad Air以上、iPad Proに近いパフォーマンスなんて素晴らしい」と思う人向けのiPadが今回のiPad miniだ。
iPad Airより高性能で「小さいのはサイズだけ」というと何かのキャッチコピーのようだが、実際にはiPad Airとは異なる部分も幾つかある。
まず、画面のアスペクト比がiPadシリーズとして初めて4:3(1.33:1)以外になった。新しいiPad miniの8.3型ディスプレイは解像度が2266×1488ピクセル、そのアスペクト比は1.52:1となる。旧世代のiPad Miniと比べて、本体の形状はほとんど同じで、ホームボタンがなくなり、上下のベゼルが小さくなったのだから当然だが、16:10(1.6:1)でも3:2(1.5:1)でもない中途半端なサイズにAppleのこだわりを感じる。
なぜ中途半端なのかといえば、「ピッタリにする」ことにこだわったからだろう。新しいiPad miniのサイズは従来機とほとんど同じ。このサイズにぴったりと細いベゼルでディスプレイをはめたと考えなければ、あまり説明ができない特殊サイズだ。当然、専用部品だからなせる設計である。
なお、アスペクト比が4:3にしか対応していないアプリもあるが、その場合は少しだけ上下を余らせた表示になる。ただ、実際にはほとんど気にならない程度だ。ベゼルが太く感じるという人もいるだろうが、実物はコンパクトなこともあって表示エリアは十分に広く感じる。
そして300gを切る軽さ(Wi-Fiモデルで約293g、Wi-Fi + Cellularモデルで約297g)はiPad miniとしては歴代最軽量だ。毎日持ち歩きたいiPadであり、そして寝転がって使っても、ソファの上で落ち着いてWebを眺めていても負担に感じない重さでもある。
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