9月16日に発表されながらも出荷がまだだった第4世代の「iPad Air」が、いよいよ10月23日に発売される。同じくリリース時期がずれた「iPhone 12」の発売に重なった形だ。
今回はiPad Airの市場投入に先立って実機を試用する機会を得た。そこで驚かされたのはiPhone 12シリーズも搭載する新SoC(System on a Chip)である「A14 Bionic」の高性能ぶりだ。
実は評価用の製品はiPhone 12・12 Proよりも早いタイミングで入手していたのだが、iPad AirとiPhone 12 Proのベンチマークテスト結果を比較すると、なおさらにプロセッサとしての可能性を感じざるを得ない。
詳細は後述するが、iPad Airに搭載されるA14 Bionicは、CPUが高性能コア2つと高効率コア4つ、GPUが4コアの構成でありながら、よりコア数が多くメモリ帯域を拡張する改良も施された「A12Z Bionic」(現行のiPad Proが搭載)のCPU、GPUとほぼ同等といえる性能を有していた。
さらに言及するなら、A12Z Bionicに搭載されているNeural Engineは旧世代のものでA14 Bionicでは性能が2倍以上となっている。MLアクセラレータに至ってはA13世代以降で導入されたはずで、圧倒的に高性能だ。
無論、それらを活用するアプリと一緒でなければ、専用プロセッサの実力は引き出せないが、システムトータルの実力は極めて高いことが確認できた。
まずは外観からチェックしていく。第4世代のiPad AirはiPad Proと同様にフラットなデザインを採用しており、Touch IDを兼ねたパワーボタンがやや大きいことやカラーリングが豊富なことを除けば、11型のiPad Proと区別がつかないほど似ている。
iPad Airがデザインを変更していると知らない人が見れば、iPad Proのカラーバリエーションが増えただけだと思うかもしれない。ディスプレイは11型から10.9型へと小さくなっているが、ほとんど変わらない(iPad Airは最大輝度が100nits低い500nitsになり、ProMotionに対応しないが)。
本体サイズは全く同じで、周辺デバイスも共用できるため、ベゼルはわずかに太くなっているものの、それも予備知識がなければ気付かないだろう。
カメラ部に目を移せば、iPad Proにはある超広角カメラと「LiDAR」スキャナが搭載されず、広角だけのシングル構成は1世代前のiPad Proをほうふつとさせる。広角カメラはiPad Proと同じものだが、搭載するSoCがA14 Bionicであるため、写真の雰囲気はiPhone 12シリーズに近い風合い(暖かみのある色温度や滑らかな階調)を踏襲する。とはいえ、品質面ではさほど大きな違いは感じない。
また、搭載するメインメモリ容量もiPad Proより少なく4GBだ。iPad Proのメインメモリ容量は6GBだが、この違いを意識することは恐らくほとんどない。
一方で、第2世代の「Apple Pencil」に「Magic Keyboard」、そして「Smart Keyboard Folio」といったiPad Proで好評の周辺機器はそのまま利用できる。もちろん、iPad OSは同じとなれば、11型のiPad Proではなく10.9型のiPad Airで十分ではないか、という疑問が出てくるだろう。
ここで複雑に絡み合うのが、iPad Proが搭載する顔認証のFace IDと、iPad Airが搭載する指紋認証のTouch IDによる違いだ。
自宅などで使う際にはFace IDの方が圧倒的に便利だが、公共の場で使う際にはTouch IDの方が便利だ。どちらがよいと思うかは利用する場面によって違うが、今後外出の機会が以前と同じように増えていくならば、iPad Airの方が便利かもしれない(併用できると最高なのだが)。
いずれにしろ、使い勝手の面ではiPadのAirとProに大きな違いはなくなった。では性能はどうかというと、これもまた大きな差がないのだ。
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