―― LenovoからFCCL社長に就任することになった経緯を改めて聞かせてください。
大隈社長 先ほども話した通り、Lenovoのアジア全体における法人事業を統括する仕事を5年以上続けてきました。その間、Lenovoのマーケットシェアは約2倍に伸びて、業界1位になることもできました。自分なりにはうまく行ったと思っていますし、社内でも評価していただけたと考えています。
ただ、そうすると「もっと違うことをやりたい」「もっと大きなことをやりたい」と考えるようになりました。そこで、当時の上司で、NECレノボ・ジャパングループの会長も務めていたケン・ウォンさん(現Lenovo シニアバイスプレジデント兼レノボ・ソリューション&サービス・グループ担当プレジデント)や、人事担当者に「Lenovoグループにもっと大きな貢献をしたい」と相談をしました。ここ2年、ずっと言い続けてきたことです。
しかし、当時の役職を考えると、もっと大きなことをするにはポジション(役職)が空かないと話は進みません。個人が「これをやりたい!」と言っても、簡単に進められるものでもないのです。
そんな中、2020年後半にウォンさんから「日本に帰るつもりはあるか?」と聞かれました。もう少し話を詳しく聞いてみると「(日本に帰っても)大丈夫なら、FCCLの社長をやってみないか?」とオファーを受けたのです。
FCCLは、Lenovoグループの中では特殊な立ち位置にあります。NECレノボ・ジャパングループは、“レノボ”という名前を冠していることもあり、合弁事業そのものがLenovoグループ全体のポートフォリオに含まれています。前職では、レノボ・ジャパンの法人向け事業はアジアの一部として斜め上から見る立場にありました。
一方で、FCCLは(個人向け事業も含めて)エンドツーエンドで“閉じている”状態、言い換えるとLenovoグループのポートフォリオから独立する形で合弁事業が進められています。Lenovoグループ内にいるのは確かで、齋藤さん(前社長で現会長の齋藤邦彰氏)の顔も名前も知っているけれど、どんなビジネスをしていて、どんな状況にあるのか全く知りませんでした。
もっと違うことを、もっと大きいことをやりたいと訴えてきた手前、「ちょっと待って」と言うわけにも行きませんし、このチャンスを逃すと他の人に話が行く可能性もあったので、ある程度リスクを取ってでも飛び込んでみようということで、ほぼ即答で「ぜひやらせてください」と返事をしました。
その後、(FCCLの大株主である)Lenovoと富士通の双方から承認を得る形で社長就任が決まった、という流れです。
―― 齋藤会長との初対面はいつでしょうか。
大隈社長 Lenovoが富士通と(FCCLの)合弁化について交渉していた頃に、兼務で(M&Aの)戦略を担当する時期が一時的にありました。その際にお会いしたので、最初のコンタクトは2016年頃ということになりますね。(FCCLが)合弁会社になる前に1〜2回は会っています。
―― 齋藤会長からの引き継ぎはどんな感じで行ったのですか。
大隈社長 私は3月末まで、Lenovoにおいてアジアの法人事業を統括する立場にありました。要するに、富士通の法人事業と直接“競合”する会社の責任者だったわけです。
普通であれば、事前に時間をかけて引き継ぎをします。しかし、業務の引き継ぎに当たって、会社のセンシティブな情報、社外秘の情報も入ってくる可能性もあります。3月末まで(社長就任前)に何度か話をする機会はありましたが、(競合会社に在籍していることもあり)ビジネスや数字の話は一切しませんでした。
4月1日に社長に就任した後に、本格的な引き継ぎを開始したというのが正直な所です。
―― そうなると、ある意味で「ぶっつけ本番」な社長就任ともいえると思うのですが、大丈夫だったのでしょうか。
大隈社長 PCビジネスのマネジメントという観点では、私もLenovoで経験を積み重ねてきました。未経験でいきなり「PC会社の社長をやれ」と言われたら無理だったかもしれませんが、PCビジネスで押さえるべき根幹は(会社を問わず)共通点が多いので、現時点で困ったことはありません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.