―― FCCLの社長に就任してみて、FCCLに対する印象は変わりましたか。
大隈社長 先ほど話した事情から、事前の引き継ぎをほとんどせずに就任したので、印象を積み上げられるだけの予備情報がなかったのが正直な所です。ある意味で「白紙」な状態で入ってきた感じです。
「入社前後で変わったこと」という話は難しいので、入社後の印象を話します。私が携わってきた組織と比べると、エンジニアリングが非常に強い会社であると感じます。技術力があることはもちろんですが、組織においてエンジニアリングがリスペクトされているとも思います。
世界最軽量のノートPCに見られるようなマーケットにない価値訴求を積極的に仕掛けていくには、エンジニアリングの力は欠かせません。技術者の皆さんが技術トレンドを踏まえた上で、付加価値を作ってきた積み重ねが表れた製品といえます。
今まで、私自身はセールスやマーケティングを担当してきましたが、エンジニアリングの深い所には触れてきませんでした。だからこそ、組織としてエンジニアリングが重視され、リスペクトされていると強く感じるのかもしれません。
―― 川崎(本社)の開発部隊(エンジニア)の皆さんとはお話しはされたのですか。
大隈社長 このご時世なので全員とは行きませんでしたが、川崎に出向いた際に話をしました。
設備や普段の業務自体は、今まで私が見てきた(レノボ・ジャパンの)大和研究所と大きな差はないと思います。しっかりと技術的な検証を行って、(開発途上の)テストや検査なども1カ所で完結できるのは素晴らしいことですし、素晴らしい部隊がそろっています。
その上でレノボとの違いを挙げるとすると、エンジニアとお客さま、あるいはエンジニアとセールスチームの距離が近いことです。FCCLは(フィードバックのプロセスが)日本国内で閉じていて、みんなが日本語でやりとりできるので、物理的にも心理的にも距離が近くなります。
「お客さまに寄り添って製品開発を行う」という意識が(開発の)現場にも溶け込んでいます。これは、FCCLの強みです。
―― 一方で、FCCLの「弱み」はあるのでしょうか。
大隈社長 これは独自性があるという「強み」の裏返しでもあると思うのですが、Lenovoとの合弁体制になって3年経過したにも関わらず、Lenovoとコラボレーションしている領域が非常に限られていることです。
部材の共同購買/調達によってコストダウン効果によって、会社として利益を出す体制は整っています。しかし、人的な交流や、製品や設備を相互活用する話がもっと進んでいるのかなと思いきや、それほどでもありませんでした。ここは改善の余地があると思います。
Lenovoのビジネスや(会社としての)システムは、グローバルで鍛えられています。人事面や製品開発のプロセス、PC以外の製品など、FCCLとして取り入れられる部分は活用して、日本のお客さまに提供する価値を高めていきたいと考えています。
ここは、(Lenovoから来た)自分が貢献できる面でもあると思っています。9年間で培ってきたネットワークや関係性を活用して、FCCLとLenovoの部隊の間を取り持って、実務的な情報交換を積極的に進めています。
―― 最近のLIFEBOOK(ノートPC)では、LenovoとACアダプターを共通化をしましたよね。部材の共通化をより進めるということでしょうか。
大隈社長 Lenovoと共同調達をしても構わない部分、例えばACアダプターを始めとする周辺機器については(共同調達化の)話を進めています。
「LIFEBOOK UH」のようなフラグシップモデルについても、(Lenovoが持つ)要素技術を取り入れること自体は可能です。しかし、私たちの“本筋”である付加価値、コアバリューまでLenovoに依存してしまっては、(独立した)ブランドを維持するそもそもの意味が問われてしまいます。
私たちが守りたい、守るべき価値をしっかりと堅持した上で、Lenovoから取り込めるものは取り込むという“いいとこ取り”をうまく進めていくことに注力したいです。
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