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» 2021年12月23日 12時00分 公開

iPad液タブ化の理想型がここに? 「Luna Display for Windows」レビュー(1/3 ページ)

Astropadの「Luna Display for Windows」が正式にリリースされた。マルチプラットフォームプロダクトへの転換を実現した同製品を、プロイラストレーターのrefeia氏が試した。

[refeia,ITmedia]

 こんにちは! refeiaです。

 今回はiPadの液タブ化の夢を見ていこうと思います(自費購入で)。「iPadの液タブ化? それはもうSidecarで結論が出たはずでは?」ですか?

 いいえ。今回はWindowsの話です。

Luna Display for Windows iPadにWindowsの画面を映すと、何だかイケナイことをしている気分になって風情があります

 iPadはApple Pencilの登場以来、ダイレクト感のある描き味、イラストアプリの充実などで、イラスト機材としての立場を確立してきました。一方で、PCは柔軟さやスペックの高さ、豊富なアプリといった利点があり、まだiPadだけでいいとも言いづらいのは確かです。

 どうせPCもiPadも両方持つ……それなら、iPadが液タブの代わりになったらいいな、と考えるのも人情でしょう。そこにさっそうと現れるのが、2021年10月に正式リリースとなった「Luna Display for Windows」です。

Luna Display for Windows Luna Display for WindowsのHDMI版とUSB Type-C版。価格は、いずれも129.99ドルです

 このドングルを使うと、iPadがサブディスプレイとして動作して、タッチ操作とApple Pencilも使えます。つまりこれ、液タブじゃないですか。

 しかし、この手のツールにちょっとアンテナを伸ばしたことがある方なら、表示品質とレスポンスは心配になるでしょう。実際に自分も、作画用途で実用になるものは長らく見つけられずにいました。

 ならば、Luna Display for Windowsは果たしてどれくらいの実力なのか……。ネタバレですが、環境が良ければ表示品質とレスポンスは全く問題にならないぐらい良いです。この記事ではその点と、実際に使った感触について見ていこうと思います。

 それではよろしくお願いします!

Luna DisplayとAstropad

 Luna Displayを見ていく前に、初見ではちょっと混乱しやすい製品ラインアップを説明しておきますね。

 まず第一に、

  • メイン画面のミラーリングが「Astropad」
  • サブディスプレイ化が「Luna Display」

 です。AstropadはPCとiPadには同じ画面が映ります。そこから細分化して、

  • Astropadに制作者向けの便利機能を加えたのが「Astropad Studio」
  • Astropad StudioのWindows版が「Project Blue」

 ですね。Windows版が別名になっているのはβ版だからで、正式リリース時にはAstropadブランドと統合されると思います。

Luna Display for Windows Project Blueは現状でもかなり使えますが、β版なので今回は詳しく触れません

 この中でハードウエアが提供されるのはLuna Displayだけです。どれもが画面キャプチャとiPadへの配信という基本動作ですが、GPU支援などのパフォーマンスや互換性を担保するには、OSは実ディスプレイが接続されているものとして動作する必要があります。

 メイン画面のミラーリングなら、もともと実ディスプレイなので問題ないですが、サブディスプレイ化の場合は外付けディスプレイがつながっているとOSに思い込ませるハードウエアが必要、ということですね。

Sidecarで死にかけたAstropad

 ちょっと話はそれますが、みなさん、シャーロッキングという言葉をご存じですか? サードパーティー開発者がMacなどに提供して人気があった機能を、AppleがコピーしてOSに盛り込んだり無料で提供したりして、元の開発者の製品が無用にされてしまうことを言います(「知っていてコピーしたかどうか」は裁判でもなければ明らかになりませんが、シャーロッキングと言う人は、そういう意図で使います)。

 20年近く前、Karelia SoftwareがMacの検索機能「Sherlock」の拡張として提供していた「Watson」の機能を、AppleがSherlockのアップデートで丸々盛り込みました。それ以降、Appleがちょくちょくやることとして「シャーロッキング」が使われるようになりました。

 似たことが彼らに起こったわけですね。Astropadはそれまではこの分野でリーダー的な存在でしたが、2019年のSidecar登場後は売上が数分の一にまで減っていました。新機能で一時的に持ち直したとしても、Macに頼っていては厳しい状況です。

Luna Display for Windows Astropad公式ブログより

 公式ブログには、Apple独自の開発環境に入れ込んでいたためにマルチプラットフォームの選択肢を持てなかったことや、そのせいで窮地に陥ったこと、諦めて撤退することも考えたこと、Windows対応と並行して、小さな会社の強みに集中してアプリの機能を見直し、今は力がみなぎっていることなどが書かれています。

 選択肢を持つことの大切さや、諦めない強さに触れて力をもらえると思います。自動翻訳でも良いので記事を何本かチェックしてみると良いでしょう。

 また、震え上がるような体験も読んでみたい人は、AstropadのCEOの一連のツイートもチェックすると良いでしょう。Apple本社に招かれて役員に製品をプレゼンし、どんなAPIがあればより良くできるかなどの議論もした……その上で結局Sidecarを出されてしまう、という恐ろしいストーリーです。こちらも全体としてはブログと同様に勇気をもらえる読み物になっています。

 その彼らの活路がMac/Windows両対応のLuna Displayであり、Astropad for Windowsというわけです。

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