前置きが長い!!
というわけで気を取り直して、製品を見ていきましょう。Luna DisplayのドングルはUSB Type-C版と、HDMI版が提供されています。どちらも性能や機能に大きな差はありません。自分のPCの端子に合うものを買えば良いです。
PCとiPadの両方にアプリをインストールして、ドングルを刺してアプリを起動すればすぐに使えます。PCとiPadが同じローカルネットワーク(家のWi-Fiアクセスポイントなど)につながっている必要があります。
また、Wi-Fiの接続状態が良くない場合や、外出中などで同じローカルネットワークにつなぐわけにはいかない場合には、USBで接続することもできます。手元ではそのままではUSB接続できず、PCにiTunesをインストールした状態で接続できました。
デフォルトでは、Retina解像度は無効になっています。無効だと少し軽いですが、ハーフHD程度になってしまってはiPadの表示品質の恩恵がなくなってしまいます。そのため、この記事ではRetina解像度を有効にした状態で使用感を見ていきます。
パフォーマンスについては、もう最初にこの動画を見てください。左がデスクトップPCに接続したワコムの「Cintiq Pro 16」(2017年モデル)、右が「iPad Pro 12.9」(2020年モデル)でUSB接続です。
表示が遅れていないどころか、iPadの方が画面の変化が早い瞬間すらあります。Cintiq Pro 16の旧モデルは、速いディスプレイと比べるとわずかに表示遅延があるとはいえ、ちゃんとした実ディスプレイに対して全く遅れていないのには驚きました。画面全体の変化が大きい状況でも試しましたが、同様の結果でした。
また、Windows Paintに線を引いてブラシ遅延を測るいつものテストでも、Cintiq Pro 16の遅延が120分の8秒、iPadが120分の7秒と、液タブとしてのパフォーマンスも十分です。
ただし、この結果はPCによります。2020年に購入したデスクトップPCでは常に快適ですが、2019年購入の薄型ノートPCでは少し遅延があって、発熱とファンノイズが続くので完全に快適とは言えません。
そして、接続条件やPCを変えながらブラシ遅延のテストをした結果がこれです。自分の環境だとWi-Fiは大差ない結果になりましたが、引っかかりを感じる頻度といった実感上の差は少しだけあって、USB接続の方が安定していました。
薄型ノートPCでも絵が描けないほどではないとはいえ、体感できる遅れがあり、積極的に使いたくはないレベルです。ノートPCでも排熱の余裕とディスクリートGPUがあるモデルならば、より良い体験になるはずです。
基本的に画像を圧縮して転送する動作なので、表示品質に関しては実ディスプレイと同じ体験とまでは言えません。とはいえ、Wi-FiやUSBで転送すると聞いて自然に覚悟するレベルよりはるかに上です。
画面の中で動きのあった部分に一瞬、解像度の低下と圧縮ノイズが見られて、その後にキレイになります。その「一瞬」が実ディスプレイより劣る瞬間になりますが、キレイになった状態では、iPadをネイティブで使っているのと変わらないシャキシャキの表示です。
この「一瞬」の長さは接続品質や PCの性能で変わります。また、理由は分かりませんが、接続直後は微妙でも、しばらく使っていると短くなって気にならなくなることがよくありました。
イラスト用途ではスクロールを多用するものの、ブラシを動かしている重要な時間には画面全体としては静的なので、用途と性能の相性が良いです。
実用してみると、レスポンスと表示品質は素晴らしくてタッチ操作も使えるので、Surface ProなどのタブレットPCと同じ感覚で使えます。普段からタッチ操作を多用しながら一般用途にしているCintiq Pro 16と置き換えてみましたが、あまりに普通なためデスクに備え付けたまま1週間ぐらい使っていました。
ただし、実ディスプレイと同様に使えるわけではありません。ユーザーアカウント制御や動画サブスクリプションなど、セキュリティやコンテンツ保護で守られている部分はiPadに表示されないからです。
画面キャプチャを基本動作にしているので仕方ないですね。常用するとしても、あくまでサブディスプレイとしての運用にとどめる必要があります。
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