iPad液タブ化の理想型がここに? 「Luna Display for Windows」レビュー(3/3 ページ)

» 2021年12月23日 12時00分 公開
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イラスト用途の実用性は制作スタイルに依存

 もちろん、イラスト作業にも使ってみました。Apple Pencil自体の評価は概ね定まっているので詳しくは書きませんが、ちゃんとした性能があるPCと組み合わせれば、Apple Pencilのダイレクト感やiPadの美しい画面の恩恵を受けながらPCの液タブ感覚で描けます。

Luna Display for Windows 2019年の薄型ノートPCの組み合わせでは、レスポンスはあと一歩でした……

 フル機能のPhotoshopや、CLIP STUDIO PAINTをPCの余裕あるスペックで使えたり、Windows版しか存在しないSAI2も動作したりするのはなかなかの体験です。

 一方で、液タブと比べると気になる点もいくつかあります。

 1つが、Apple Pencilでは快適に右クリックをできないことです。長押しで右クリックメニューを出せはするのですが、右ドラッグは手元ではうまくできませんでした。右クリックが必要な場合はマウスを使えばいいのですが、スムーズな操作とは言えません。

 もう1つが、Apple Pencilではホバーカーソルが使えないことです。アプリのUIにカーソルをかざしてツールチップを見ることができないだけでなく、ペン先の下に見えるブラシプレビューを見ながら筆を下ろす描き方ができないため、大きなブラシを使った彩色が難しくなります。

Luna Display for Windows 筆圧は問題ないのでグラデーションを付けながら塗ることはできますが、太いブラシのエッジの位置合わせは難しくなります

 ただ、これらはApple Pencilでは当たり前のことなので、iPadでの作業に慣れている人なら気になることは少ないでしょう。

 全体的に、「iPadが液タブになる」というよりは、「iPadとApple Pencilの体験の中身がPCになる」と言うのが正確な気がしました。Cintiq Pro 16を使っていた自分が、イラスト用途でこれをメインにできるかというと、

  • サイズは12.9型のiPad ProならOK
  • 描き味もOK
  • 表示品質とレスポンスもOK
  • 操作性は、右ドラッグやホバーカーソルに頼った作画スタイルが染みついているので簡単ではない

 といったところです。個人的に、作画中の操作にはどうしてもこだわりを持ってしまうため、一般用途の方が気持ちよく入れ替えられると感じてしまいました。

まとめ

 ではまとめていきましょう。

気に入った点

  • 実ディスプレイと大差ないレスポンスと表示品質
  • 手軽な接続
  • 長時間安定して使える
  • iPadの画面とApple Pencilの恩恵を受けながらiPadOSの制約を迂回(うかい)できる
  • 液タブより安価

難点になり得る点

  • 軽快な動作にはPCスペックが必要
  • セキュリティやコンテンツ保護で守られた画面は表示できない
  • Apple Pencilではホバーカーソルがなく、右クリック/右ドラッグ操作がしづらい
  • 接続開始の待ち時間がやや長い
  • 接続開始時に、たまに不可解な動作が起こる
  • 日本語非対応

 Luna Display for Windowsは、iPadのサブディスプレイ化においてWindowsでは非常に貴重な、実ディスプレイと遜色ない表示品質とレスポンスを実現した製品です。

 タッチ操作やApple Pencilにも対応しており、Windowsが10年近く磨きをかけてきたタッチ対応との組み合わせでは、「iPadなのにタッチできない」と感じてしまうSidecarよりも優れた操作性をもたらしています。

 イラスト用途にも優れていて、iPadの美しい画面とApple Pencilの描き味と、PCの柔軟性と余裕あるスペックの恩恵を同時に受けながら制作することができます。

 一方で、Apple Pencilの仕様に由来する右クリック/右ドラッグの使いづらさや、ホバー機能の欠如から、液タブをそのまま置き換えることまではできません。「iPadが液タブになる」よりも、「iPadとApple Pencilの作画体験の中身がPCになる」と思って使い始めるのが納得感を得やすいでしょう。既にiPadとApple Pencilでの作画に慣れているならば、抵抗なく使える可能性が高いです。

Luna Display for Windows

 総じて、「Wi-FiやUSBでここまでできるのか」と思える製品です。液タブをまだ持っていない人や、現有の液タブに不満がある人は、試す価値は大いにあるでしょう。良い液タブを持っているものの予備機までは持っていない人も、費用も保管スペースも取らない、液タブ故障時のバックアップ策として検討する価値があります。

 現在はAstropad Studioのβ版のProject Blueが無料で提供されています。自分の制作スタイルや環境に合うかどうかだけではなく、AstropadにするかLuna Displayにするかも含めて十分検討できるので、興味がある人は一度試してみると良いでしょう。

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