IEEE 802.11axでは電波の帯域幅を「20MHz」「40MHz」「80MHz」「160MHz」から選択可能で、それぞれの幅において「チャンネル」が定義されている。帯域幅と理論上の最高通信速度は比例しており、160MHz幅では20MHz幅の8倍の速度で通信できることになる。このことは既存の2.4GHz帯や5GHzはもちろん、6GHz帯でも同様だ。
電波の出力モードは、通信速度やエリアカバーを重視した「標準電力(SP)モード」、屋内限定運用を想定した「屋内低電力(LPI)モード」、送信電力を抑制した「超低電力(VLP)モード」の3つが定義されている。
6GHz帯をアンライセンスバンドとして供用する場合、大きく「どのくらいの帯域幅を確保しておくか」「どの出力方式に対応するか」の2点を検討する必要がある。確保される帯域幅は、設定できるチャンネル数に影響する。そして出力方式の選定は、通信を利用できる場所の制限(設定)に関わる。
さらに、既に6GHz帯の電波を使っている既存システムの扱いも検討する必要がある。Wi-Fi 6E(や将来のIEEE 802.11be)と既存システムが相互に干渉することで、通信やシステムの運用に悪影響を及ぼす可能性があるからだ。
日本の場合、6GHz帯は主に電気通信業務用システム、放送の伝送/中継システムや公共/業務無線システムに利用されている。これらの既存システムについて、単純に別の周波数帯へと移動させることができれば6GHz帯のIEEE 802.11axのポテンシャルをフルに引き出せるだろう。しかし、周波数帯の移動は「移動先」の確保と機器の取り換えに莫大(ばくだい)なコストが掛かるため現実的ではない。
そこで情報通信審議会は、IEEE 802.11beの規格策定状況を視野に入れつつ、6GHz帯のIEEE 802.11axを既存システムと共存させる方向でシミュレーションや実証実験を通して検討を行った。その結果、以下のような結果を得られたという。
検討結果を踏まえて、同審議会は6GHz帯におけるIEEE 802.11axの技術的条件案を取りまとめ、金子総務大臣に対して答申を行った。条件案の概要は以下の通りだが、ヨーロッパの規定に準じる形で制度化されることになる(一部、分かりやすくするために表記を変更している)。
6GHz帯のIEEE 802.11axを“合法化”するために、総務省は今後、電波法や総務省令の改訂/新設を進めることになる。
一方で、現行の方針のままでは、今後策定されるIEEE 802.11be規格においてフルスペック(320MHz幅)で通信できるのは1チャンネルだけという状況となってしまう。そのこともあり、情報通信審議会は以下の事項について継続して検討する。
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