冒頭で紹介した家電メーカーの例は、確かにきっかけは先行メーカーのヒット製品にあるとはいえ、それらを自社で分析してヒットの要因を探り、一から設計した上で生産ラインを立ち上げるなど、相応の手間はかけている。
これに対してPC周辺機器やアクセサリーのメーカーでは、それすらも行われておらず、海外事業者がそっくり製品として売り込んできた製品を買い付けただけということも少なくない。くくりとしては同じ「そっくり製品」であっても、その実情はかなり異なっていることが分かる。
こうしたそっくり製品の企画は、メーカーの中でも経験の少ない若手が担当者として割り振られることが多い。新卒で入社し、実務経験がほとんどなくとも、上長が定期的にチェックさえしていれば、こうしたハンドリングはできてしまう。実際に試作サンプルが上がってきて、いよいよ量産という段階になってから、ノウハウを持ったスタッフに渡せば済むからだ。
こうしたやり方に幻滅して辞めていく若手社員も少なくないが、完全にオリジナルの製品を企画できるようになるまでの修行期間と説明されれば従わざるを得ないし、何より未経験であっても外注先がしっかりしていればそれなりのモノは作れてしまうので、「メーカーでモノづくりに関わっている」という承認欲求は満たせてしまう。
とはいえ、やはり後ろめたい部分はあるのか、こうした製品は、SNSなどで「私が携わりました」と積極的にPRしているスタッフはあまりいないし、プレスリリースもどこか熱量が乏しいことが多い。Web上では全く発表されず、しかし売場にはしっかり並んでいることもあるほどだ。
もしユーザーとして、こうした後出し商法が気に食わず、オリジナルの製品を応援したいのであれば、その製品に開発者インタビューなど、一から立ち上げているが故に発表できるサイドストーリー的なコンテンツがあるかをチェックすればよい。裏返せば、そうしたコンテンツがあるメーカーほど、オリジナルに賭ける意欲のあるメーカーと見なしてよいだろう。
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