だが、冒頭でも書いた通り、Apple Watch Ultraで一番すごい部分は、これだけの性能を備えたタフな時計が、文字盤をスワップしてミッキーマウスやバズ・ライトイヤーの文字盤に切り替えてパーティーで人気取りをすることもできれば、太陽の動きや月の満ち欠けを表示して宇宙の神秘と繋がれる時計にもなれば、株価情報や世界時計を表示して世界経済の動きを読み取れるビジネスウォッチへとなることだ。
さらには、バンドも取り替えてエレガントなエルメスから、NikeやApple製のスポーツバンドに切り替えて、ファッション性とスポーティーさのいいとこ取りをしたり、さりげないおしゃれを演出してみたりと、幅広い使い勝手を楽しめることだろう。
このApple Watch Ultraを数日間、東京の街中でつけていて一番驚いたのは、実はバッテリーの持ちの良さだ。今回のレビューには間に合わなかったが、新しい皮膚温センサーを試すべく、しばらく寝ている間もずっとつけっぱなしにしていたが、ウェイポイントを置きながらの街中散策といったこともしていたが、バッテリーは余裕で丸2日間使った時点でも20%ほどの残量があった。
これまでのApple Watchでは、充電の失敗などで使えなくなってしまうことが数カ月に1度は発生していたが、まる2日間、バッテリー残量を全く気にする必要がないUltraのバッテリー容量はかなり魅力的だ。
その後、バッテリーが残り3%くらいまで減るのを待って充電のテストをしてみたところ、約1時間の充電で50%まで回復できた。この50%充電の状態からの利用開始でも、これまでのApple Watchと同じくらいの時間使えた印象がある。
もちろん、長時間のバッテリー動作は本体が分厚く重くなったからこそ実現したものだ。Apple Watch Ultraのケースの重量は約61.3g、Apple Watch SEの44mmケース(大きい方)の約33gの約2倍で、Series 8の45mmケースの約51.5gと比べても10gほど重い。筆者はこれまでSeries 7のウォッチなどでも、疲れてくると外してしまうくらいに腕時計が苦手だが、Ultraを丸2日間つけていられたのは、1つに試用していたアルパインバンドが非常に軽かったことがあるのかもしれない(これまでのApple Watchではレザーバンドを利用していた)。
Apple Watchは、全く運動をしないながらも日々の生活の中での身体の動きを意識したい人、日常生活に呼吸を意識して行うマインドフルネス瞑想(めいそう)を取り入れたい人、カジュアルなランナー、アクティブにワークアウトをする人(watchOS 9でワークアウト関連の機能がかなり強化され、心拍数の範囲を決めてワークアウト強度を測ることもできるようになった)、水泳をする人、サイクリスト、さらにはトライアスロンなどの激しい運動をするアスリートなどに対応してきた。
今回、さらに一段飛躍して体力の限界に挑戦しながら、海や地を冒険する人々というある意味、究極(まさにウルトラ)な人々のニーズにも対応し、同じ機械を身につけている他の人々にも「よりアクティブに」なるようにモチベートする機械へと進化した。
その上で、ほとんどの人が一生使うことのない機能ながら、転倒や交通事故、遭難といった緊急事態に遭遇しても、救命してくれる安心感も提供している。
これは、すごいことだと思う。
収束を迎えつつあるコロナ禍、世界中の人々の健康意識が高まり「ウェルネス」という言葉がそこかしこで聞かれるようになったが、世界中で多くの人が身につけているコンピュータが、その上の足かせではなく、むしろ行動のドライバーとなる製品へと進化したことは何か時代の象徴のようにも思える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.