稼働中のPCやサーバ/NASを急な停電によるリスクから守るためのデバイス「UPS(無停電電源装置)」について、前回は電源供給方法によるメリットとデメリットを解説してきた。
前回までの2回で、UPSの仕組みに関する基本的な仕組みは理解できたと思う。そこで最終回となる今回は、実際にUPSを選ぶ上で忘れられがちな「供給電力」と「運転(稼働)時間」に関する考え方を整理した上で、SOHO(小規模オフィスや個人事業主)オフィスを想定して、実際にUPSを選んでみる。
今まで、UPSの役割や仕組みについて解説してきた。その中で「UPSにはそれぞれに最大出力電流が決まっている」という話をしたことを覚えているだろうか。UPSを選ぶ上で、これらの2要素は非常に重要なポイントとなる。
そう、UPSを選ぶ上で最大出力電流(電流)は重要である。必要な電流に対して容量が少ないと、停電してもいないのに電源が遮断されてしまうことがある。かといって、必要な容量に対して出力が多いとUPSは割高となってしまう。つなぐ機器に対して適切な容量のUPSを選ぶことが重要といえる。
とはいえ、「どうやって必要な容量を考えればいいの?」と疑問に思う人もいるだろう。そこで、UPSの容量を決める上で必要な知識をチェックしていこう。
また、この最大出力容量は一般的に高くなればなるほど本体価格も光学になるため、保護すべき機器を停電時でも適切に保護できるちょうど良い機器を選びたいところだ。
まず、UPSの最大出力容量は「VA(ボルトアンペア)」または「W(ワット)」で示される。以前はVAを使うことが多かったのだが、最近はより現実的な指標であるWを使うケースが増えている。それぞれの指標について、少しだけ詳しく解説しよう。
VAは「皮相電力」を示す。皮相電力とは簡単にいうと電源から送り出される“純粋な”電力を示す。皮相電力は、電源に対する負荷(電力を消費する機器類)が実際に使う「有効電力」と、負荷を通らずに電源に戻ってきてしまう「無効電力」の合算値となる。
理論的な話をすると、無効電力は交流電源でのみ発生し、直流電源では発生しない(ゼロになる)。無効電力は交流の電気回路において非常に重要な役割を持っている……のだが、UPSの解説という本旨から外れてしまうので詳細な説明は割愛する。
それに対して、Wは一般的な電力の単位で「(定格)消費電力」と呼ばれる。交流電気機器の場合、Wは皮相電力から無効電力を差し引いた値となるため「有効電力」と呼ばれることもある。
通常、最大出力容量をWで表しているUPSの場合、接続しようとしている機器の消費電力を足し合わせれば問題なく計算できる。具体的な計算例は、後段で説明する。
一方、(最近は少なくなったが)VAでのみ最大出力容量を表記している場合、以下の計算式でWに変換することができる。
W=VA×力率
「力率」は電力の利用効率を示す値で、実際は負荷によって変わる。UPSにつなぐ電子機器なら力率は0.6程度なので、UPS側の最大出力容量は「VA×0.6」で計算して求めよう。
特に購入予算が少ない場合、つなげる機器の合算消費電力ギリギリの最大出力容量のUPSを検討してしまいがちだ。
しかし、UPSのバッテリー劣化(≒能力の低下)や機器の入れ替えを考慮に入れると、最大出力容量は機器の合算消費電力の少なくとも1.1倍、できれば1.3倍以上とすることをお勧めする。例えば、つなぐ機器の合算消費電力が350Wの場合、少なくとも375W、できれば455W以上の出力が可能なUPSを選ぶようにしたい。
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