米国のAI研究機関の「OpenAI」が2022年にリリースした「ChatGPT」が大きな話題を呼んでいる。先日、それがどのような特徴を持ち、どのような課題を抱えているのかレビューを交えつつ紹介した。
昨今はChatGPTで大きな注目を集めるOpenAIだが、同機関は画像生成AIモデル「Dall・E2」の開発も手がけている。驚くほどに流ちょうな文章を生成するAIモデルや、呪文のように話し言葉を唱えるとその説明に近い絵画を生成するAIモデルなど、Open AIは一般のユーザーを含めてさまざまな驚きを提供し、これまでにない新しい価値を提供している。
詳しくは後述するが、OpenAIは元々非営利の学術研究プロジェクトとしてスタートしたが、高品位のAIモデルの開発/運営をするために2019年10月にMicrosoftから10億ドルの投資を受け入れた。さらにMicrosoftは2021年にも同組織を追加投資し、2023年1月には数年間に渡って数十億ドルの投資を実行することを表明した。この投資は最大で100億ドルに達する可能性があるとの報道もあるが、新しい驚きや新しい価値を提供しているからといって、Microsoftが日本円にして1兆円を超える投資を行うつもりというのは、よほどのことである。
以前は技術面からOpenAIを紹介したが、今回は「なぜMicrosoftがOpenAIに再び(しかも巨額の)投資をしたのか?」「Microsoftはどうやって投資を回収するのか?」といった側面に焦点を当てて、Microsoftの戦略をひもといていきたい。
ChatGPTやDALL・E2自体は、とても優秀なAIモデルだ。しかし、過去の歴史を振り返ってみると、どれだけ技術面で先行していようとも、時間の経過と共にOpenAIに追いつく企業は次々に登場することは間違いない。ただ、それでもMicrosoftはOpenAIの“自主性”を重んじ、そこから生まれた“果実”(研究成果)を戦略的に自社製品へと取り組んでいくつもりであるようだ。
2023年1月に発表された「数十億ドル規模の追加投資」は、過去2回の投資の延長線上にあると思われる。MicrosoftやOpenAIからは出資スキームの説明はないが、海外の各種報道を総合すると、投資のスキームは以下の通りとなる。
加えて、OpenAIの各種AIプラットフォームはMicrosoftのクラウド基盤「Azure」に移植され、学習プロセスでもAzureが使われるようになる。
しかし、筆者はMicrosoftの真の狙いはインターネットの「使い方」「使われ方」の革新ではないかと見ている。
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