「Bing」の大幅アップグレードでGoogleを追撃!? Microsoftが「OpenAI」に最大100億ドルの投資をするワケ本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)

» 2023年02月08日 06時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
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Microsoftの“真の狙い”はインターネットの「革新」か

 しかし、長期的視点に立つと、より大きな可能性が見えるのがMicrosoftの検索サービス「Bing(ビング)」の大幅な改良によるゲームチェンジである。

 現在のインターネットエコノミーでは、Googleの支配力が極めて強い。同社の検索エンジンのシェアは85%前後と圧倒的である。YouTubeやGmailなどのサービス、スマホ向けOSでiOSとシェアを二分するAndroid OSの存在、そしてWebブラウザ「Google Chrome」の存在も相まって、Googleのサービスやアプリのお世話にならずにインターネットを利用することは困難な状況だ。

 しかし、OpenAIが提供するような強力なAI言語モデルを“武器”にすれば、MicrosoftがインターネットにおけるGoogleの独占的な地位を脅かす可能性は十分にあると思われる。

Edge MicrosoftのWebブラウザ「Microsoft Edge」も、Googleが主導して開発するWebブラウザエンジン「Chromium」をベースとしている

 古い話で恐縮だが、インターネットの黎明(れいめい)期は、インターネットといえば論文の検索/共有のために使われていた「Gopher(ゴーファー)」というプロトコルが主流だった。現在のWeb(厳密には「HTTP」というプロトコル)が主流となったのは、インターネットが一般ユーザーに普及し始めた1990年代後半以降の話である。

 Webでは膨大な情報が複雑にリンクされ、多様な情報が混在する世界――ある意味で混沌とした雑多な情報の塊――に成長していった。そのため、目的の情報を探しにくいという問題が発生した。言い方を少し変えれば、目的地(≒URL)をハッキリと知らないと情報にたどり着けないという状況だった。

 この問題に対処しようとしたのが、米国のベンチャー企業だったYahooだった(現在は日本の「ヤフー」との資本/業務上の関係はない)。そして、技術的アプローチでYahooを追い抜いていったのがGoogleである。

 その後の紆余曲折な道のりは説明するまでもないが、インターネットの世界において必要な情報へとたどり着くための手段は、インターネットにおけるビジネス基盤そのものになっている。程度の差こそあれ、インターネットを利用するサービスを立ち上げるには、Google(の検索エンジン)と“良いお付き合い”ができなければ困難である。

Google Googleは技術的アプローチでWeb検索における圧倒的優位を構築し、それが現在に至る事業の多角化の原動力となった

 しかし、OpenAIが研究/開発しているAIモデルと関連サービスは、膨大なインターネット上の「情報」「サービス」「メディア」と「ユーザー」の関係性を根本的に変える可能性がある

 「ChatGPTを活用してBingを改良する」と表現すると、単に検索エンジンの改良を行うだけと捉えられるかもしれない。しかし、「自然言語で情報が探せるようになる」と表現してみると、目的の情報にたどり着くための手法や手順の変革、果ては検索結果に連携するサービスのあり方やアドテク(広告関連テクノロジー)へのイノベーションをもたらす予感がする。

 将来のプラットフォーマーとしての地位を確保/維持するためにAI技術が重要であることは、当のGoogleも認めている。同社は1月20日、グローバルで1万2000人の従業員を削減することを発表したが、そこで削減したコストをAI技術を中心とする重点領域に戦略的に集中させる考えを示している。

 折しもGoogleは2月6日(米国太平洋時間)、ChatGPTと類似するコンセプトを持つ“実験的な”対話型AIサービス「Google Bard」を発表した。これは同社が研究/開発を進めているAI言語モデル「LaMDA(Language Model for Dialogue Applications)」を下敷きにしており、将来的にはGoogle検索に統合する予定だという。

 GPT-3やChatGPTに対抗するような取り組みを“切り出して”発表したことは、GoogleもMicrosoftとOpenAIの動きを“強く”警戒していることの現れでもある。これに対抗するかのように、Microsoftも2月7日(米国太平洋時間)に「OpenAIとの取り組みに関するプレスイベント」を開催することになった。

 多くの予想通り、BingへのChatGPT(GPT-3)の統合が発表されるのだろうか……? 楽しみに待とう。

急に発表 Googleが発表した対話型AIサービス「Google Bard」は、今後Google検索に統合される予定だという
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