ディスプレイとしての性能もチェックしておきましょう。本機はAdobe RGBカバー率99%(CIE 1931)を訴求している広色域ディスプレイです。測色機で測定しても、Adobe RGBの色をほぼカバーしていることを確認できます。
また、設定アプリからAdobe RGBやsRGBなどのプリセットを選ぶことができ、印刷向けや標準的な発色など、測色機を持っていなくても用途に応じた表示で使用ことができます。
気になったのが、斜めから見た時の発色の変化です。液タブは近くから見ることが多いため画面の端の方は通常のディスプレイより深い角度で見ることになります。また、描きやすさのために寝かせめにして見上げるような設置にすることもあり、斜めから見たときに違和感が出づらいパネルが必要になります。本機は、自然な作業姿勢を取ると上の方が青く見えるのが少し気になりました。
ワコムのモデルはどうかと思って、お出かけのついでにCintiq Pro 24と27の展示機をチェックさせてもらったのですが、斜めから見ると明るさの変化は結構あるものの露骨に色が変わるということはなく、この点は本機の方が気になりやすいと思います。
一方で、アンチグレア処理と液晶の画素が干渉して起こるレインボーエフェクトは本機の方が小さい気がしました。サイドバイサイドでの比較ではないので「そんな気がする」以上のことは言えませんが、今までチリチリ感が気になってこのクラスの製品の購入に踏み切れなかった人は、もしかしたら大丈夫になるかもしれませんね。
ファンレスについても触れておきましょう。本機は通風口もないファンレスで放熱を済ませています。消費電力も最大輝度で40W、自分の作業部屋では十分に明るい150ニトぐらいに調整すると、20W弱ぐらいです。このボディーサイズで20Wなら心配なさそうとも思えますし、実際に高輝度に設定して放置しても、ホットスポットができないようによく熱を拡散させています。
実感としては、「室温29度で最大輝度」のようなエクストリームな使い方で快適に作業したいならば手袋や軽く風を当てるなどの対策が必要ですが、普通の部屋で普通の明るさで使うならば素手で触っても不快感はほとんどなく、付属の手袋をしていればなおさら快適でした。
顔の近くで使う機材なだけに、無音なのはとても良いですね。Cintiq Pro 24は静かな自室で使うには満足できるファンノイズではなかったので、人によっては決め手になるメリットだと思います。
それでは実用していきましょう。レベルが高いのはここまで見てきて分かったので、少し時間をかけて趣味の落書きをしながら、何か気になる点があれば発見する、という目的でテストします。
まずはラフからですが、遅延が大きめで懸念していたもっさり感は無くて、普通にさくさく作業できました。普段使っている遅めのモデルで育んだ感覚なので頼りないですが、問題あるとまでは言わなくていい遅延感だと思います。筆圧曲線は少し調節しましたが、弱いところから強いところまで、線の重要さに応じて濃淡をつけるのも自然にできました。
線画も快適でした。筆圧を高めても頭打ちになりにくいと分かっているので、線を安定させたいときには常に使っては疲れてしまうような強めの筆圧も安心して使うことができます。また、最近当たり前になってきてコメントし忘れそうになる4K(3840×2160ピクセル)ですが、線画をちまちま描きたいときにはディテールや線質を確認しやすくて良いですね。
次に彩色です。自分は筆圧でグラデーションを作る塗り方を多用するので、ここでは軽い筆圧の自然さをチェックできます。とはいえ、テストで出ていた3gのオン荷重という素晴らしい結果に応じた描き味になるかというと、その領域で強弱を制御するのは難しくてよく分からない、という結論になります。これは、同じぐらいの軽い筆圧に反応するCintiq Pro 27のときも思ったことです。
ともあれ、軽い力で塗りたいときの反応の素直さもあって、初めて使うモデルですが思った通りに、濃くも薄くも塗れていました。
懸念点だった斜めから見た時の色の変化も、大画面液タブだと腕の位置をひんぱんに変更したくないので、小さなウィンドウ画面で作業したため気になりませんでした。最大化で表示したときにも、上の方にはアプリのUIが被っていますし、実際にペンを動かす領域としては中央のやや下ぐらいという人も多いでしょう。実用上問題ないか、少し立てめで設置すれば気にせずいられる可能性は高いと思います。
といったところで完成です。弱点だと思っていた点も実用上の問題はあまりなく、作業中に引っかかる使用感などもなく、ドライバも安定して動作していて、上位機の感覚で最後まで作業することができました。
最後に、改めてポイントを振り返ってみましょう。
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