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デルの法人向けPCがシェア拡大できた理由とは? 成果が出た2つの取り組みを執行役員に聞く(1/4 ページ)

» 2023年07月07日 12時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 デル・テクノロジーズ(デル)の法人向けPCが着実にシェアを拡大している。2022年の国内法人向けPC市場におけるシェアは18%となり、ブランド別シェアでは2019年以降、4年連続で2位を維持し、毎年右肩あがりでシェアを伸ばしている。

 デルの法人向けPCの成長の要因は何か。同社 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏と、執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネス開発事業統括 製品本部長の三井唯史氏に話を聞いた。

お話を伺ったデル・テクノロジーズ 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏(左)と、同社 執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネス開発事業統括 製品本部長の三井唯史氏(右) お話を伺ったデル・テクノロジーズ 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏(左)と、同社 執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネス開発事業統括 製品本部長の三井唯史氏(右)
2019年に出荷台数の大幅増を記録して以降、順調にシェアを伸ばしている

コロナ禍による社会情勢の変化が追い風に

 デルが国内500人の経営者や従業員を対象に実施した調査によると、ハイブリッドワークが浸透したコロナ禍以降、勤務先のPCの選定基準に変化があったとする回答は24%、PCのセキュリティ要件に変化があったとの回答は32%となり、セキュリティを強化するために、クラウドサービスの導入やWindows 11への更新、通信の安全性の強化を進める企業が多いという。

 同社 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部の山田千代子統括本部長は、「コロナ禍においてPCを活用するシーンが広がり、セキュリティに対する関心が高まっている。調査では今後、法人向けPCを購入する際に、セキュリティ面では何を重視するのかといった質問も行っており、クラウドサービスの導入や、Windows 11の採用が上位を占め、さらにvProやTPM(Trusted Platform Module)の採用といった点にも関心が高まっていることが分かった。ハイブリッドワークを安全に快適に実現するには、セキュリティやパフォーマンスの観点からも、Windows 11と第13世代インテルCoreプロセッサとの組み合わせが最適であるという認識も広がっている」と語り、「ハイブリッドワークへの移行が、中堅中小企業におけるWindows 11の採用を後押ししている」と分析する。

デルが行った調査結果。出社回数は増加傾向にあるが、ハイブリッドワークへの対応は継続して求められている デルが行った調査結果。出社回数は増加傾向にあるが、ハイブリッドワークへの対応は継続して求められている

 また、法人PCの利用を開始する際の設定では、リモート設定だけでなくトラブルが発生した際の対応でも、リモートを活用するケースが最も多いことが明らかになったという。

 「ハイブリッドワークが進展したことで、PCの選定要件が変化したり、リモートの活用が増えたりといったことが起きている。さまざまな場所で利用されているデバイスをリモートで一括管理し、会社から支給されるPCも、従業員の自宅に直接配送するということが増えている」と指摘する。

 さらに、「サステナビリティーに対する関心が急速に高まっているのも、昨今の大きな変化だ」という。「商談の際には、PCへのリサイクル素材の使用率の他、調達や生産、再生といったサプライチェーン全体における当社の取り組みについても聞かれることが増えている。お客さま自らのサステナビリティー活動のヒントにしたいという場合もあり、多くのお客さまがサステナビリティーに着目していることが分かる」とした。

 なお、デル・テクノロジーズでは、2050年までに、Scope 1、2、3における温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロを目指しており、2030年までに電力調達の75%を再生可能エネルギーとし、2040年までに100%再生可能エネルギーを実現する計画を打ち出している。

 そして製品については、2030年までに、購入された全ての製品と、同等規模の製品を再利用またはリサイクルするのに加えて、梱包(こんぽう)材を100%リサイクル素材または再生可能な素材から作成し、製品内容の半分以上をリサイクルまたは再利用可能な材料から作る野心的な目標を打ち出している。

デルでは、2030年、2050年それぞれで目標の高いゴールを設定している デルでは2030年、2050年それぞれで目標の高いゴールを設定している
パッケージングも徐々に進化し、リサイクル可能または再生可能素材の利用を推進している パッケージングも徐々に進化し、リサイクル可能または再生可能素材の利用を推進している

法人向けボートPCで初の1kg切りモデルは日本市場の要望を反映

 コロナ禍によって生まれた市場動向の変化は、むしろデルの法人向けPC事業の成長につながっているという。それは、この間、シェアが上昇していることからも明らかだ。

 「調査では、週3回以上オフィスに出社しているという回答が55%を占め、最も多い。オフィスへの出社回帰が見られるが、ハイブリッドワークを行うために、PCのセキュリティやパフォーマンスに求められる要件は依然として高い。そうした要望にデルのPCが適している」とする。

 その1つが、2022年4月から発売した「Latitude 7330 Ultralight」である。同社初の1kgを切った13.3型ノートPCとして投入された。2023年3月には、後継機種となる「Latitude 7340 Ultralight」を発表している。

13.3型で1kg切りのモバイルPC「Latitude 7340 Ultralight」 13.3型で1kg切りのモバイルPC「Latitude 7340 Ultralight」

 山田氏は「1kg以下のノートPCが欲しいという日本市場からの要求を反映して2022年に製品化したのがLatitude 7330 Ultralightだ。まだ多くの台数が出ているという段階ではないが、お客さまの元では製品評価が始まっており、いい手応えを得ている。新モデルのLatitude 7340 Ultralightの登場によって、その動きが加速することになるだろう。デルにとって、ゲームチェンジャーになる製品といえる」と自信をみせる。

 ハイブリッドワークの広がりによって、ノートPCに求められる要素が高度化し、在宅勤務やオフィスでの勤務に加え、持ち運ぶ環境での利用に最適な仕様が求められる中で、1kgを切ったLatitude 7330 UltralightおよびLatitude 7340 Ultralightへの注目が高まっているというわけだ。実際、新製品のLatitude 7340 Ultralightの引き合いは、従来のLatitude 7330 Ultralightの発売時を大きく上回っているという。

デル・テクノロジーズ 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏 デル・テクノロジーズ 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏

 「Latitude 7330 Ultralightの購入が最も多いのが中堅企業だ。また、大手企業からの引き合いも多い。役員が利用するPCとして、あるいは出張が多いビジネスパーソンが利用するPCとして選ばれている。1kgを切る他社の軽量ノートPCと比較検討をしているお客さまからは、Latitude 7330 Ultralightに対しては、満員電車でも安心して持ち運べる頑丈さに対して高い評価を得ている。また、既にデルのPCを使っているお客さまでは、利用しているPCと新たに導入する軽量ノートPCを一緒にサポートしてもらえたり、管理が行いやすかったりという観点から検討しているケースもある」とする。

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