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デルの法人向けPCがシェア拡大できた理由とは? 成果が出た2つの取り組みを執行役員に聞く(3/4 ページ)

» 2023年07月07日 12時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

大手企業への商談を強化 本社内に展示スペースを用意

 法人向けPC市場において、シェア拡大の要因として、もう1つ挙げられるのが、「大手企業への商談を強化した成果が出ている」(山田氏)という点だ。

 「これまでのデルは、中堅中小企業や公共分野に強みがあったが、最も遅れていたのが大手企業だ。そこで、クライアント・ソリューションズ統括本部においては、大手企業向け営業を支援するための人員を強化。建築業界や自動車業界などの特定業界の知識を持った技術営業を通じた提案を加速している。さらに、パートナーとの連携によって、大手企業へのアプローチも推進しており、デルがグローバルで蓄積している海外大手企業の先進的導入事例も、積極的に紹介している」とした。金融や製造、流通など、幅広い分野での事例を提示することができるという。

 また、大手企業の経営層やグループ企業幹部などを対象に、東京都千代田区大手町のデル本社内に設置したEBC(エグゼクティブ・ブリーフィング・センター)を活用した説明会を行い、製品の説明だけに留まらず、デルの企業姿勢を説明したり、サステナビリティーへの取り組みを紹介したりといったことも行っている。こういった経営層を巻き込んだ提案活動も加速しているところだ。

本社内に設置したEBC(エグゼクティブ・ブリーフィング・センター)の一角にある展示スペース 本社内に設置したEBC(エグゼクティブ・ブリーフィング・センター)の一角にある展示スペース。サーバやフラッシュストレージから法人向けのクライアントPC、さらにはゲーミングブランドの「Alianware」シリーズまで実際に触って試すことができるようになっている

 また、大手企業のIT部門向けに評価のための機器を用意した。2023年度は、そのための予算を拡大して評価機を増やしている。これは中堅企業向けにも同様の施策を取っている。

 さらに、サーバやストレージなどを含めた提案活動も加速中だ。「1つのメーカーでそろえることで、メンテナンスが行いやすくなり、管理もしやすくなるメリットを提案できる」(三井氏)とし、幅広い製品群を持つ強みを、大手企業や中堅企業への提案にも生かす考えだ。

 その他にも、コロナ禍においては、デルのサプライチェーンの強みが発揮されたことで、これまで取引がなかった大手企業や中堅企業が、調達しやすいデルのPCを初めて導入するといったケースが増加しているという。実際に利用したり、検証したりした結果、品質や使い勝手を評価し、その後に本格導入につながるケースもあったそうだ。

 先に触れたように、デルの2022年度の国内シェアは18%だが、大手企業に限定すると10%前後のシェアに留まっている。これが徐々に拡大し、全体シェアの引き上げにつながっているという。

 山田氏は「大手企業においても、まずは中堅企業や公共分野と同等規模のシェア獲得を目指したい」と語る。

ペルソナベースの利用提案を加速

 デルでは、2022年からペルソナをベースにした利用提案を行っている。

 ペルソナはビジネスを開発し、成長させ、戦略的ビジョンを構築して実行する役割を担う「Builder(ビルダー)」、チームをつなぎ、コラボレーションやデータを適切に管理する「Connector(コネクター)」、固有の分野やクリエイティブ分野、複雑な分野で専門性を発揮する「Specialist(スペシャリスト)」、理想の結果に向けて効率を追求し、生産性を重視しながら目的を達成する「Producer(プロデューサー)」の4つに分類している。

各企業のワークスタイルをペルソナ化して利用提案を行っている 各企業のワークスタイルをペルソナ化して利用提案を行っている

 山田氏は「ペルソナを設定したことで、モノ作りそのものが変化したわけではないが、お客さまとの対話がより具体的にできるようになるという大きな変化が生まれている」と前置きし、「かつては『どこで使うか』が重要な要素であったが、コロナ禍を経たことで、どこでも使う環境に移行し、『どんな仕事をしているか』や『何に使うか』が重要になってきた。その変化を捉えて、4つのペルソナをベースに対話している。また、エコシステムとのセット提案においても、ペルソナをベースにすることで理解してもらいやすくなった」とする。

 Specialistを例にあげれば、デルがナンバーワンシェアを持つワークステーションと、ハイエンドモニターを始めとしたエコシステム製品の組み合わせにより、クリエイターの細かい要望に応えられることを強調する。「直販から事業をスタートしたデルは直接、お客さまと対話ができることが強みだ。お客さまの声をもとに提案を進化させることができる。14型の軽量ノート型ワークステーションや、他社にはないラック型ワークステーションなども、Specialistに向けた最適な提案につながる」(山田氏)と語った。

 デルでは、ハイブリッドワークが新たなフェーズに入っていると捉え、それに最適な提案を、PC本体とエコシステムによって実現していく考えを示す。また、サーバやストレージ、as a Serviceによる提案、AIへの新たな取り組みを含めて、デルならではのポートフォリオの広さを生かした提案も進める考えだ。

 それを具現化した取り組みの1つが、顧客のオフィスに訪問し、デルの最新製品を一堂に展示する「Dell Festa」である。コロナ禍では中止していたが、この活動を先ごろ再開した。ここでは、PC本体だけでなく、幅広いアクセサリーや周辺機器も展示し、これらを組み合わせて、より生産性が高い利用シーンの提案などを行っている。

デルの担当者が実機を持って各社を訪問する「Dell Festa」。新型コロナウイルスの5類移行に伴い復活した デルの担当者が実機を持って各社を訪問する「Dell Festa」。新型コロナウイルスの5類移行に伴い復活した

 三井氏は、「企業のIT部門では、社員の使い方をある程度固定している場合が多いが、本体とエコシステムの組み合わせによって、新たな使い方や、より最適な使い方が提案でき、気づきを得てもらうことができる。また説明を行うデルの担当者も、PCを利用しているユーザーから直接、声を聞くことができるため、それを社内にフィードバックできるというメリットもある」とする。今後もDell Festaは積極的に開催していくという。

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