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デルの法人向けPCがシェア拡大できた理由とは? 成果が出た2つの取り組みを執行役員に聞く(2/4 ページ)

» 2023年07月07日 12時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

周辺デバイスの充実や使いやすいユーティリティーで差別化を図る

 一方、デルのPCに標準搭載されている「Dell Optimizer」も、ハイブリッドワークの進展とともに評価が高まっているという。

 Dell Optimizerは、ユーザーの働き方や使い方をAIが学習し、最適化する組み込み型ソフトウェアで、画面の明るさやCPUパフォーマンス、オーディオなどを調整し、消費電力やパフォーマンスを最適化したり、プライバシー設定でデジタル資産や機密データを保護したりして、不正な閲覧ができないようにする。

 またオンイラン会議中にはクリアな音声での通話を実現したり、マルチネットワーク接続で圧倒的な接続性とデータや映像の高速ダウンロードを実現したりといった機能も備えている。

ユーティリティーの「Dell Optimizer」の設定では、双方向のノイズキャンセリング設定も行える ユーティリティーの「Dell Optimizer」の設定では、双方向のノイズキャンセリング設定も行える

 デル・テクノロジーズ 執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネス開発事業統括 製品本部長の三井唯史氏は、「ハイブリッドワークが広がったことで、オンライン会議の際のパフォーマンスに不満を感じるユーザーが増加しているが、Dell Optimizerによってそれらの課題を解決できる。コロナ禍においては、Dell Optimizerのメリットを実感したユーザーが増えており、高い評価を得ている。性能を数字で説明するよりも、使ってみてその効果をより良く実感できる機能であり、ノートPCの用途の広がりとともに、Dell Optimizerが活躍できる場面も増えている。

 もともとはワークステーション用のツールとして開発されたものだが、法人向けノートPCに加えて、新たにデスクトップPCにも標準搭載した。時代に合ったツールであり、デル製品にとっても大きな差別化になる。ぜひ多くの人に体験にしてもらいたい」としている。

デル・テクノロジーズ 執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネス開発事業統括 製品本部長の三井唯史氏

 ハイブリッドワークの広がりにおいて、デルのPCが評価されたもう1つの要因に、アクセサリーや周辺機器のラインアップ強化がある。デルでは、これらのアクセサリーや周辺機器を「エコシステム」と表現する。

 山田氏は「約2年前からラインアップ強化に力を入れ始めており、デルブランドのエコシステムの数は、過去最大といえるほどに製品数がそろってきた」とする。

 マウスやディスプレイ、キーボード、ウェブカメラ、ヘッドセットに加え、ドッキングステーションやモニターアーム、ACアダプターに至るまで、多彩なエコシステム製品を用意する。ハイブリッドワークが広がる中で、これらのアクセサリーを組み合わせることで、多様な使い方に対応できる点も、デルのPCの販売台数の増加につながっているという。

 「PC本体はIT部門が調達するが、アクセサリーは総務部門が担当するといった背景があり、これまでは提案が難しい部分もあった。だが、快適な環境でハイブリッドワークを実現するには、PC本体とともにアクセサリーを使ってもらうことが有益であると考え、そのメリットを積極的に提案し始めた。ハイブリッドワークが広がったことで、これまでは必要ないと思っていたデバイスが必要になり、PC本体と一緒に購入することで効率的に調達したり、本体と一緒にサポートを受けられたりというメリットも認識され始めた。

 例えば、PCとともにワイヤレスマウスも同じ3年保証で利用でき、マウスの電池も標準で3年間持つ。アクセサリーまでを含めて安心して利用できるといった声があり、アクセサリーとセットで購入したお客さまは、追加購入時にもセット購入を継続している。本体とエコシステムのセット購入は確実に増加している」(山田氏)という。

 その勢いは現時点でも見られており、同社の主要20カ国における2023年5月のエコシステムの売上高および販売台数は、いずれもPC本体に比べて対前年成長率が約2割増になっているという。

デスクトップPCの魅力を再構築 選びやすくする工夫

 また、売れ筋となっているノートPCおよびデスクトップPCの一部製品に、新たに即納モデルを用意し、すぐに納品できる体制を構築した。短期納入を前提とする商談にも参加できるようにした点も、シェア拡大に貢献している。即納モデルは、徐々に種類を増やしており、ワークステーションにも範囲を拡大することで、新規顧客の獲得にもつながっている。

 加えて、コロナ禍ではノートPCの購入が促進されたが、オフィスへの出社が戻ったこともあり、ここにきてデスクトップPCへの需要の揺り戻しが見られている。それにあわせて、デルが得意とするデスクトップPCの出荷が増加している点も見逃せない。

デスクトップPCのカテゴライズを変更し、フォームファクター別に再構築した

 デスクトップPCの「OptiPlex」は、2023年に発売30周年の節目を迎えた人気製品で、国内でも長期間に渡って利用しているユーザーが多い。2023年3月からは、これまでの3000/5000/7000シリーズとしていたノートPCと同様のカテゴリー分けを廃止し、フォームファクターを選択し、OptiPlexとOptiPlex Plusの2つのカテゴリーから、構成を選択できるようにした。

 三井氏は「継続的に購入していただいているお客さまにとっては、慣れたカテゴリー分けではなくなってしまったことで、最初は戸惑う場面があるかもしれない。だが、新規に購入するお客さまにとっては、より分かりやすく、ニーズにあったソリューションを選択しやすくなっている。既存のお客さまもすぐに慣れていただけると思う。

 用途をベースにした提案が可能になるため、商談スピードが速くでき、増加しているオンライン購入の際にもユーザー自身が選びやすくなる。また、フォームファクター間で、共通で単一のBIOSとイメージを利用でき、メンテナンスが容易になる。IT部門にとってのメリットも大きい」などとした。

 新たな仕組みの採用によって、デスクトップPCのシェア拡大にも弾みをつける考えだ。

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