プロナビ

丈夫なのはどうして? 設計上の工夫は? パナソニックに頑丈PC「タフブック」のあれこれを聞いてみた(3/4 ページ)

» 2023年08月07日 12時00分 公開
[長浜和也ITmedia]

シーリングロボットを導入し、より確実な防水/防じん性能を確保

 より確実な防水/防じん性能を確保するために、TOUGHBOOKではボディーの全周に溝を設けて、そこに耐水/耐熱/経年劣化への対策を施したシリコンを流し込む「シーリング」を施している。

 ただ、多種多様なインタフェースやオプションデバイスを収容するため、TOUGHBOOKのボディー形状は複雑だ。「溝にシリコンを流し込む」と言うのは簡単だが、実際には高度な工作技術が求められる。

 そこでパナソニック コネクトでは、自社工場にロボットを導入し、高い精度でシーリングを施せるようにした。ボディーのインタフェース類の防水性を確保するためのラバー製クッションについても、ケーブルの抜き差しで傷が付きにくい素材を用いているという。

シーリングロボット ロボットによる精度の高いシーリングを施すことで、「急こう配」「細かいカーブ」といった複雑な形状なボディーでも確実な防水を可能とした

 なお、TOUGHBOOKはコネクターにケーブルを差したまま使えることを特徴の1つとして訴求している。しかし、ケーブルを差したまま使うと、防水/防じん性能を保証できないともしている。

 実は以前、防水/防じん対応のコネクターを用意していた時期もあったが、今のラインアップでは搭載されていない。本件については、海外では個別対応で防水/防じん対応のケーブルを用意することで対応したケースもあるという。しかし、原則としてパナソニック コネクトとしては対応していないので、「どうしても」という場合はSIerなどに相談してほしいとのことだ。

モジュール類 耐衝撃や防水/防じんの見地からすると、モジュール構造を取る場合、ボディーに組み込む形で拡張するのが望ましい。TOUGHBOOKではそのような考えの下、多種多彩な内蔵モジュールを用意してきた。2023年7月からはmicroSDスロットモジュールが新登場した

バッテリーの発火に対する「ダメージコントロール」も実施

 TOUGHBOOKのユニークな取り組みとして、「バッテリーの発火」対するダメージを最小限に抑える工夫も施されている。

 TOUGHBOOKのバッテリーパックは、基本的にリチウムイオン電池を複数のセルに分けた構造になっている。その際に、セルとセルの間に耐熱性を持たせたガラス素材「マイカ(雲母)」を用いた“防火壁”を設けることで、万が一に1つのセルが発火しても、他のセルへの延焼を防ぎ、結果的に本体へのダメージを軽減できるようにしている。

 バッテリーの安全性向上策は、この他にも「バッテリーの電流/電圧/温度を監視して異常発生を予測する機能」や、「状況に応じてバッテリーの充放電を最適化する制御」が盛り込まれている。

バッテリーセルの延焼対策 バッテリーの発火事故の防止と、万が一発火してしまった際の安全対策として、バッテリーのセルとセルの間にマイカによる“防火壁”を設けている

 バッテリーが発火した際は、大量のガスが発生する。延焼を防ぐためには瞬時にガスを排出することが重要だ。しかし、防水性能を高めているTOUGHBOOKは、普通に考えると本体の密閉度が高いがゆえにガスの排出が困難、つまり延焼しやすい構造になってしまう。

 この問題を解決するために、TOUGHBOOKでは本体のバッテリー収納部の底板にスリットを設け、そこに熱で溶けるシートを被せている。通常時はこのシートが防水性能を担保しているが、バッテリーで火災が発生すると熱でシートが溶け、スリットからガスを排出できるようにしている。万が一への備えもしっかりされているのだ。

謎のシート 指で指示している黒いフィルムは、通常時は防水シートとして機能する。しかし、バッテリー発火時の高温で溶けると、スリットからガスが排出されるようになっている

 一通り説明を聞いた所で、筆者的に“気になっていること”を質問してみることにした。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月26日 更新
  1. 「買うならお早めに」が悲痛な叫びに変わった年末 猛暑の後に“価格高騰”の寒波が襲った2025年PCパーツ街 (2025年12月25日)
  2. 25Gbpsインターネット時代の“モンスターマシン” ミニワークステーション「Minisforum MS-02 Ultra」を試す (2025年12月25日)
  3. 高コスパNASから小型スマホの救世主まで! 2025年にグッと来た「デジタル仕事道具」ベスト5 (2025年12月24日)
  4. HHKB Studio専用の「木製」「アルミ製」キートップが登場 PFUダイレクトで1月5日発売 (2025年12月25日)
  5. 「テクノロジーが前面に出すぎていた」――アイロボットジャパン新社長が語る、ルンバ復権への“原点回帰” (2025年12月25日)
  6. Ryzen 7×GeForce RTX 5050 Laptop GPUの「ASUS TUF Gaming A16 FA608UH」がセールで16万9800円に (2025年12月25日)
  7. “家中どこでもコンセント”を実現 日常で使いたくなる実売1.5万円のポータブル電源「BLUETTI AORA 10」を試す (2025年12月24日)
  8. そのアプリ、本当に安全ですか? スマホ新法で解禁された「外部ストア」と「独自決済」に潜むリスク (2025年12月26日)
  9. “Air”の名はだてじゃない 軽量な8K/360度カメラとして大きな魅力を放つ「Insta360 X4 Air」 X5と撮り比べて分かった性能差 (2025年12月25日)
  10. 最大25Gbps! NTT東日本が国内最速インターネットサービス「フレッツ 光25G」を2026年春から提供 (2025年12月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー