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東芝、日本MSを渡り歩いてきたNECPC/レノボの檜山社長が語る 国内トップPCメーカーの強みを生かす経営術IT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)

» 2023年09月29日 06時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

日本のIT産業が直面する課題

―― 日本のIT産業が直面する課題はどこにありますか。

檜山 全世界が、デジタル化によってコロナ禍を乗り越えました。しかし、そこで浮き彫りになったのが、日本はデバイスの普及率が高いものの、DX(デジタルトランスフォーメーション)については遅れているという点です。これは日本のIT産業全体の反省点であるともいえます。ユーザーのために何ができるのか、という視点での取り組みができていなかったことが、こうした状況を生んだのではないでしょうか。

 また、この背景の一因として、日本のIT人材が不足しており、米国の4分の1の規模に留まっていることに加え、ITを活用する企業側にIT人材が少ないという日本固有の状況があると思っています。

 さらに、首都圏でのクラウド化の進展に比べて、地方都市でのクラウド活用が遅れている点も大きな課題です。IT人材が少ない中でDXをいかに推進するか、クラウド化されていないため、DXが進みにくいという地方の課題をどうするかといった点が、日本のIT産業が抱えている課題ではないでしょうか。

レノボ・ジャパン NECパーソナルコンピュータ 檜山太郎 企業のIT化では「都市部対地方」「大企業対中小企業」で二極化が進んでいる

―― 2023年5月に行った法人向け事業戦略では、成果を出すところまでエンドトゥエンドで伴走する「カスタマーサクセスへのコミット」を方針の1つに掲げていました。これも課題感を背景にしたものですか。

檜山 CIO(Chief Information Officer/最高情報責任者)の方々と話をして感じるのは、日本のデジタル化の遅れには、かなり強い危機感があるという点です。ユーザー自らがITやデジタルを活用し、自分たちの事業を伸ばすことに、もっと前向きに取り組まなくてはならないという声が多いですね。

 先にも触れたように、欧米ではユーザー企業側にIT人材が多いのに対して、日本ではIT企業側にIT人材が多く在籍する構造になっています。そのため日本の企業では外注指向が強く、CIOが強い権限を持ってデジタル化を推進しにくい状況にあります。しかも、ユーザー企業のIT部門の仕事の中身を見ると、3割以上の工数をデバイスやシステムの資産管理、ネットワークの接続管理、デバイスの保守などに割かれているのが実態です。

 レノボグループとして何ができるかというと、まずは、この3割以上を占める部分を代行できないかと考えました。レノボグループは国内にコールセンター機能を持っていますから、このインフラを活用し、ユーザー企業の社員がデバイスを使っていて困ったことがあれば、問い合わせてもらうといったことができます。また、デバイスは私たちが作ったものですから、壊れたらすぐに修理することが可能です。そして、さまざまなデバイスが利用される中で、どこでどんな使われ方をしているのかといったことを管理して、報告することもできます。

 管理などに費やしている3割以上の工数や時間を、DXのために使うことができるようになればIT部門には大きなメリットが生まれますし、日本の企業の競争力強化にも直結します。

レノボ・ジャパン NECパーソナルコンピュータ 檜山太郎

 具体的には、「レノボ デジタル・ワークプレイス・ソリューション」(DWS)として、2023年9月26日からサービス提供を開始しました。ワークプレイス領域の運用支援を、お客さまに代わってワンストップで提供するもので、最適なIT機器とソフトウェアを組み合わせたアーキテクチャのアセスメントを提供する「アドバイザリーサービス」、ペルソナ分析をもとに、ユーザーごとに必要なアプリケーションやサービスを構成して、これをIT機器に導入する「ペルソナベースコンフィグレーションサービス」があります。

 さらに、コラボレーションを加速させるさまざまなサービスの運用をパッケージ化して提供する「コラボレーションと生産性」、レノボブランド以外の製品も対象に、各種IT機器の運用段階で必要となるデバイスおよびソフトウェアの管理をマネージドサービスとして提供する「統合エンドポイント管理」、IT管理部門に代わって従業員からの問い合わせやトラブルに対応する「サービスデスク」、Security Operation Center(SOC)などをマネージドサービスとして提供することで、脅威に対する適切な対応を支援する「セキュリティオペレーション」を6つを柱として、パッケージ化して提供します。

 もともとは、いくつかの企業と話し合いを進めていた経緯があり、個別で対応をしていたものなのですが、パッケージ化することで地方都市や中小企業にも広く展開できると考えています。企業のDXを実現する上で、レノボグループが伴走できる提案の1つになります。

 これまでにもas-a-Serviceの「Lenovo TruScale」を通じて、ポータルからデバイス管理が行えるようにはしていましたが、DWSでは日本のお客さまにとって、どんなパッケージで提供したらいいのかという観点から品ぞろえをすることにしました。

 まずは、「Microsoft 365マイグレーション・サービス」「Microsoft 365マネージド・サポート」「Microsoft 365マネージド・バックアップ」の3つのサービスから提供を開始します。今後は、ユーザー企業とともにワークショップを行い、お客さまの課題と方向性を捉えた上でレノボグループとして何ができるかのを提案し、そこにおいてパッケージ率を高めていきます。

 もちろん、お客さまによってはセキュリティを最も重視したいという場合もありますし、IoTによる展開を強化したいというお客さまもいます。幅広い提案ができることもレノボグループの強みですから、お客さまの状況が異なることを理解しながら、幅広い提案を進めていきます。

―― 「カスタマーサクセスへのコミット」という点では、ソリューション提案の領域には踏み込まないのですか。グローバルでは、マネージドサービスやas-a-Serviceなどの事業を集約した「Solutions and Services Group」(SSG)による事業拡大に注力する姿勢を示しています。

檜山 もちろん、それは考えてはいます。しかし、IT部門が今抱えている課題を捉え、そこにメーカーの立場で、どんな貢献ができるかといったことを考えると、まずは資産管理やヘルプデスクといった領域だと思っています。これによって、IT部門が本来の仕事にリソースを集中できるようになり、創造的な仕事にも取り組むことができます。

 DWSは、IT部門が次のステップを踏み出すために、さまざまな種類のデバイスを持ち、それを提供できるレノボグループのリソースと強みを活用して貢献できる最適な方法だといえます。

レノボ・ジャパン NECパーソナルコンピュータ 檜山太郎 Lenovoグループの近況をまとめたスライドを見ると、売上に占める非PC事業の割合は4割を超えている

―― グローバルでは、ノンPC領域の売上比率が4割を超えています。日本でも同様の方向を目指すことになりますか。

檜山 ノンPCの領域を高めていくことはレノボグループ全体の方向性であり、それは日本も同じです。日本では、もともと手作りの受託開発が主流で、システムインテグレーションが活用されてきました。しかし、クラウド化の進展とともに、システムオーケストレーションの潮流が生まれています。

 日本でのIT人材不足が指摘される中で、既にあるソリューションやパッケージを活用していくという流れが、ますます大きくなります。そうなるとレノボグループにとっても、PC本体以外のビジネスが増えることにつながります。日本におけるノンPCの比率を、グローバルの水準にまで高めたいと思っています。

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