以上が視線操作の使い方だが、実際の操作感はどうだろうか。ざっと試した限り、キャリブレーションさえ正しく行えていれば、操作はすぐに慣れる。何秒か注視すると実行されるという操作方法は、業務用のアイトラッキングデバイスと同じで、本製品のそれはタブレットのカメラを用いた簡易的な仕組みでありながら、きちんと機能する。
とはいえ精度はあまり高くなく、画面中央のタイルを見ているはずが画面右下の三角形が反応するといった誤反応は日常茶飯事だ。各タイルが1つの画面上に2個ずつしか配置できないのは、あまり近接して配置しても、視線を読み取れないという事情によるものだろう。
操作のコツとしては、連続してページをめくるなど、同じ操作を繰り返す場合は、途中でいったん視線を外すことだ。また実際に見つめているのとは違う箇所が反応した場合は、いったん目を閉じた方が、操作がキャンセルされやすい。こうした特徴は、業務用のアイトラッキングデバイスに共通するものだ。
なお、注視する秒数はデフォルトで2秒なのだが、画面右下に表示される、1つ前の画面に戻るためのタイルだけは、6秒間見つめる必要がある。筆者はこの事実を当初知らず、ネットで検索して初めて知ったのだが、ざっと見る限りどこにもそれらしき仕様は書かれておらず、どうにもふに落ちない。本機能を使う上で、必ず知っておきたいポイントだ。
また、1つ前の画面に戻る機能を使った場合、直前に行った操作がキャンセルされる場合と、そうでない場合があるのがややこしい。例えば天気やニュースは、1つ前の画面に戻ると、読み上げも連動して停止する。しかしミュージックは停止せず、バックグラウンドで再生が継続される。再生を停止するには「停止」タイルを注視しなくてはならない。
これはどうやら「音楽はバックグラウンドで再生するもの」という考え方があるのではないかと思う。それは確かに納得できなくはないのだが、再生が止まる場合と止まらない場合が混在するのは初心者目線でよろしくない。最低限、タイルごとに動作を選べるようにしておくべきだろう。それならばデフォルトの挙動が違っていても納得がいく。
いずれにしても、初心者にとって誤操作は当たり前であり、それが簡単にリカバリーできることは重要だと筆者は思うのだが、本製品はそれらにあまり寛容ではない。これを「慣れれば大丈夫」で片付けてしまうのは、少々乱暴なように思う。今後この機能が使われていくにあたっては、それらの改善が1つの分岐点になるように思う。
もう1つ、視線操作機能をいったんオフにした後、次にオンにするための切り替えが、かなり面倒なことも指摘しておきたい。Alexaのように、画面最上部から下にスワイプしてクイック設定から有効にするだけですぐに利用可能になるかと思いきや、実はそうではなく、非常に煩雑なプロセスを必要とする。
具体的には、ホームに表示されている指マークをタップ(1回目)して、「タップでAlexa」の画面右上にある3点リーダーをタップ(2回目)する。続いて「Alexaを視線で操作」をタップし(3回目)、「視線で操作を有効にする」というメニューを一度タップし(4回目)、さらに「Alexaを視線で操作」の画面で「有効にする」をタップして(5回目)、初めて操作が可能になる。
ホーム画面から数えて5回ものタップが必要だ。スマートさに欠けるのはいただけない。
このように、機能自体は実装されたものの、Fireタブレットの1機能としてはなじんでおらず、かなり浮いている印象は否めない。こちらの改善も(どちらかというと視線誘導機能そのものよりも)急務だろう。
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