HP Parts Manufacturing Labsは、Jet Fusion/Metal Fusionシリーズを始めとする3DプリンタのR&D拠点で、HPのバルセロナキャンパス内に所在する。
バルセロナといえば、モバイルを中心とする通信業界関係者向けイベント「MWC Barcelona(旧称:Mobile World Congress)」の舞台としても知られているが、このキャンパスはバルセロナの空の玄関口「エル・プラット国際空港」から自動車で30分ほど走った、サン・クガ・ダル・バリェス(Sant Cugat del Valles)という場所にある。
サン・クガ・ダル・バリェス周辺は「バルセロナの工業地域」という位置付けで、日本企業ではファナックやセイコーエプソンも進出し、オフィスや工場を構えている。
HPも、そんなサン・クガ・ダル・バリェスに進出した企業の1つだ。同社のフランシス・ミネック氏(HP 3Dポリマープリンタ責任者)の話によると、HP Parts Manufacturing Labsは、米国外としては最大のR&D拠点であると同時に、3Dプリンタ事業の本社(ヘッドオフィス)も備えている。ゆえに、同ラボを含むバルセロナキャンパスの従業員数は、2500人超と大規模だ。
ミネック氏によれば従来の産業用3Dプリンタは、「製品化前のプロトタイプ作成」が主な応用事例だったそうだ。しかし、最近はそれが段々と変わってきており、3Dプリンタで最終製品まで作ってしまうケースも増えているという。
ミネック氏 実際の製造の現場では、既に3Dプリンタの活用が進んでいる。3Dプリンタを利用するメリットは在庫を持つ必要がないことにあり、少量生産などにも適している。
メガネフレームはその代表例で、今までなら「顧客の注文を受けてからレンズをフレームに合わせて調整する」というような生産方法だったと思うが、今は「顧客の注文を受けてから3Dプリンタでフレームを製造する」とすることで、顧客により最適化されたフレームを生産できるし、在庫を持つ必要もなくなるというメリットがある。
義歯(入れ歯)のシリコン部分でも同様で、顧客の口の形をスキャンしたら、それに合わせて3Dプリンタでシリコン部分を成形(製造)するといったことも可能だ。
現在、3Dプリンタが一番活発に使われているのは、ミネック氏の話にも出てきた義歯産業だ。次いで、自動車産業での利用が多いという。
義歯と同じく個人への最適化が求められる義肢(義手/義足)の製造にも、最近は3Dプリンタが活躍する場面が増えている。ロボットアームや、果ては指輪を始めとするアクセサリー(装飾品)の製造にも3Dプリンタが使われてているそうだ。
ちなみに、ミネック氏の結婚指輪は「当社(HP)の3Dプリンタで“製造”されたもの」とのことだ。
自動車産業での3Dプリンタの利活用は、部品などの「プロトタイプ」を作る際のニーズはもちろんだが、最近では「製品」の製造にも使われている。同社のWebサイトでは、有名な事例として、ドイツのVolkswagen(フォルクスワーゲン)が金属3Dプリンタを使ってパーツを製造する事例が紹介されている。
このように、3Dプリンタの利用領域は従来のプロトタイプ作成から、実際の製品の生産にまで広がっている。
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