新型「iPad Pro」がM3チップをスキップした理由 現地でM4チップ搭載モデルと「iPad Air」に触れて驚いたこと:本田雅一のクロスオーバーデジタル(6/6 ページ)

» 2024年05月09日 13時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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なぜMacに「M4チップ」を使わなかった?

 今までの「Apple Mシリーズ」は、Macで使われたものを中〜上位のiPadシリーズに投入するという流れを取ってきた。しかし、M4チップはMacを“スキップ”してiPad Proで採用された。このことに疑問を抱く人も少なくないはずだ。

 Macを購入したいユーザーには「とにかく最新のハードウェアを使いたい」というモチベーションを持っている人も多い。「何でMacじゃなくてiPad Proが先行するんだ……」と釈然としない思いを抱くのも不自然ではない。

 その理由の1つとして、優先順位の問題がある。新しいiPad Proで実現したいことをかなえるには、どうしても新しいSoC(M4チップ)が必要だったのだ。ハードウェアの設計的に“ゆとり”のあるMacなら、電力効率を改善する前のSoC(M3チップ)でも十分にファンレスを実現できる。

 また、タンデムスタック構造の有機ELパネルに対応するために、新しいディスプレイコントローラーを搭載するSoC(M4チップ)が必要だったということもある。今後、同構造の有機ELパネルはMacBookシリーズでも使われることになるのは既定路線だろうが、課題もある。

 Appleからの取材で得た情報でないことに注意が必要だが、タンデムスタック構造のは、歩留まりが十分でないと推察される。先ほど「13型パネルはLGDの独占供給」と触れたが、11型パネルをLGDと共同で供給するSDCでは、本構造のパネルの歩留まり向上に苦戦しているという。

 そうなると、13型(厳密には12.9型)パネルよりも大きいMacBookシリーズ向けにタンデムスタック構造の有機ELパネルを採用するのは、現時点では困難といえる。ゆえに、Macでは既存のSoC(M3チップ)でもまだ十分と考えることもできるのだ。

 現時点では「M4チップファミリーを搭載するMacBook Pro」は、そうすぐに登場することはないというのが、筆者の見立てだ。

M4チップ M4チップをMacではなくiPad Proから採用したのは、ハードウェア的な優先順位の問題からであると推察される

iPad AirとiPad Proの役割分担が明瞭に

 実際の製品レビューや細かな機能の実装などは、語り切れない部分もある。実機レビューを通してさらに深掘りしていきたいが、今回の発表を受けてiPadシリーズのラインアップ全体を見直すと、「iPad」「iPad Air」「iPad Pro」の役割分担がより明確になったといえる。

 円安の影響もあり、日本ではiPad Proが“大幅値上げ”となってしまっている。しかし、先代までのiPad Proと比べると、正常進化ではある一方で、全く違うクライテリア(評価基準)に入り込んだ製品になったようにも思える。単純比較は難しいかもしれない。

 ただし、新しいiPad Proが目指す世界が、全ての人に必要であるわけでもない。新しいiPad Proは、デジタルツールを用いたコンテンツ製作の間口を大幅に広げ、プロフェッショナルに対しては作業の効率を向上させ、より細かなディテールにこだわれる“優れたツール”となった。

 コンテンツ製作の世界に入るハードルが下がったことで、iPad Pro的なものを求めるニーズも高まっている一方で、そうした世界に興味がない(あるいは優先順位が高くない)といういう人には、バランス的な面で新しいiPad Airが良い製品となっている。

 今後、両機種共に実機レビューする予定なので、楽しみにしていてほしい。

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