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絵文字のルーツはシャープの電子手帳? AIoTクラウドが日本の製造業を支援する理由IT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)

» 2024年05月15日 16時30分 公開
[大河原克行ITmedia]

全世界に広がっている絵文字はシャープの電子手帳にルーツがある?

―― AIoTクラウドの事業戦略の基本姿勢を教えてください。

松本 かつては、自分たちで市場を作っていくという発想であり、プロダクトアウトの手法でしたが、今の基本姿勢はマーケットドリブンであり、それを進化させることでビジネスを伸ばしていきます。既に一定規模の市場があり、その市場がさらに成長することが見込め、そこに自分たちの立ち位置を定めるというやり方です。

 戦っていける市場規模がそこにあるのか、IoTやAI、クラウドといったテクノロジーを生かすことができる市場なのか、環境変化によってさらに成長できる市場であるか、そこで収益を出せるかが、当社にとっての成長市場の条件です。

 今は運輸業界や製造業が対象になっていますが、もし流通/小売分野で、該当するような市場があれば、そこへの参入を検討する可能性もあります。ただ、今は横に展開していくよりも、2つの市場にフォーカスし、軸を持って事業を推進した方がいいと思っています。

 まずは、自分たちでオーガニックに成長することにフォーカスし、その成長過程で必要であればM&Aを行っていくことになるかもしれません。当面は日本市場にフォーカスしたビジネスを進めますが、私たちのサービスを利用した日本の製造業がグローバルで成功し、日本の製造業を支える会社として認知されることも目指したいですね。

―― 経営トップとして、どのようなことにこだわっていますか。

松本 3点あります。1つは会社の方向づけを明確にすることです。2つめはそれを実現するために経営資源を適切に配分すること。人材投資や技術投資をどうするのかを明確にします。3つめは、これらをしっかりと実行することになります。当社はSaaSで伸ばし、AI/IoT/クラウドを強みとし、課題解決を前提としてビジネスを進めます。

 シャープのような規模がある会社は需要を生み出すという仕掛けができますが、当社のようなスタートアップ企業は自ら市場を創造するよりも、需要のあるところに立ち位置を定めて経営をしていくことが適しています。ただし、その市場には必ず競合がいますから、その競合に勝てる技術や製品を持つことが大切です。

AIoTクラウド シャープ 子会社 AI IoT クラウド スリーゼロ ウィジオ WIZoT 遠隔監視サービス 2010年9月に発表された、シャープのクラウドメディア事業「GALAPAGOS」(ガラパゴス)の発表会の様子

―― 松本社長はシャープにおいて、PDAの「ザウルス」や、電子書籍のGALAPAGOSの事業化に関わってきました。主にコンテンツやサービスの部分をリードしてきたわけですが、この経験は、AIoTクラウドの経営にどう生きていますか。

松本 ザウルスやGALAPAGOS以外にも、0から1を生み出すという仕事には数多く携わってきました。そこで多くの仲間を作って、一緒に市場を創り上げていくということにも取り組みました。これまで私が携わってきたのは、商品やサービスという観点から新たなものを生み出す仕事でした。今、AIoTクラウドの社長としてやっていることは、新しい会社を作るという仕事です。

 これまでの仕事になぞらえるならば、新しい「製品」作りから、新しい「会社」作りに変わったといえます。そのように捉えたときに、必要となるスキルやマインドは同じだと思える部分が多いですね。

 例えば、会社をどう成長させるのかといったときに、方向性を明確にするというのは、モノ作りと一緒です。また、製品を訴求する際には、3つの特徴を示しますが、これと同様、どこに会社の特徴があるかということを明確に打ち出すことが大切です。私自身、SaaSビジネスをかなり研究し、T2D3の実現に向けた手法や、The Modelのやり方を取り入れながら、当社を成長させたいと思っています。

AIoTクラウド シャープ 子会社 AI IoT クラウド スリーゼロ ウィジオ WIZoT 遠隔監視サービス GALAPAGOSの会見で配信サービスについて説明する松本氏

 私が携わってきたザウルスやGALAPAGOS、ヘルシオデリなどは、ハードウェアがあって、その上にコンテンツやサービスを提供するという仕組みでした。まずは、ハードウェアというプラットフォームを売るということが前提になりますが、同じシャープの社内ではあっても、ハードウェアの販売と、コンテンツのビジネスは、分業化されていました。

 それに対して、AIoTクラウドでは、プラットフォーム作りのところから自分たちで責任を持ち、その上で、SaaSビジネスを展開する仕組みです。そして、自分たちで売る力や稼ぐ力を持たなくてはなりません。そこは大きな違いだと思っています。

―― ちなみに、今だから明かせる当時のエピソードはありますか。

松本 GALAPAGOSは、「緊プロ」(緊急開発プロジェクトチーム)によって生まれたデバイスなのですが、緊プロでの最初のテーマは、XMDFフォーマットの開発であり、液晶画面で縦書きの書籍を読みやすくすることを目指したものでした。

 その中に、ハードウェア端末の開発も、一応盛り込んでいたのですが、これを見た経営トップから、画面サイズが異なる2種類のタブレットを開発するように指示があり、これを短期間で開発して、同時発表しました。

 そのときに、電子ブックストア「TSUTAYA GALAPAGOS」を一緒に展開したCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)をはじめ、日本を代表するコンテンツホルダー各社のトップとお会いする機会がありました。シャープの経営トップと一緒に訪問する機会も多かったのですが、新市場の創造にかけるシャープ経営トップの強い意思や、グローバル視点での考え方を目の当たりにできたのは、今でも大きな財産になっています。

 また今は、1993年10月にザウルスが発売されてから、ちょうど30周年の節目を迎えています。ザウルスは、その後の写メールの前身となる写真をメールに貼って送信するという仕組みを提案したことで知られていますが、実はザウルスの前に発売していた電子手帳では、スケジュールに絵文字を貼るという仕組みを既に提案していたんです。今、全世界に広がっている絵文字は、シャープの電子手帳にルーツがあるのではないかと思っています。

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