「Apple Vision Pro」を真っ先に体験した林信行氏が改めて考える「空間コンピュータ」の現在地(2/5 ページ)

» 2024年08月22日 12時30分 公開
[林信行ITmedia]

Apple Vision Proの“本番”は2025年から

Apple Vision Pro用アプリとして個人的に一番のお勧めは「DJay」だ。リアルな大きさのターンテーブルを使ってDJ体験を楽しめる。世界的DJとしての顔を持つ真部大度氏も「プロ用ではない」と言いながらも愛用している
PGAのゴルフトーナメントの結果を3D CGで確認できる無料アプリ「PGA Tour Vision」は、試すならぜひ松山英樹の優勝時の記録がまだ残っている今のうちに体験してほしいアプリとして取り上げた

 Apple Vision Proの話題は、なぜ長続きしないのだろうか。

 1番の原因はまだアプリも少なく、継続して利用する動機が少ないからだと思う。現在のApple Vision Pro用アプリの多くは、確かにこれまでにない品質の没入体験ができるが、2〜3回も楽しめば十分で、そのまま起動しなくなってしまうという類のものが多い(もっとも、これは他のVR/ARゴーグルも同様だろう)。

 そのような中で、筆者が個人的に気に入っているのはDJアプリの「DJay」だ。iPhone/iPad版もよくできていたが、Apple Vision Pro版の楽しさはレベル違いの面白さで、バーチャル空間の中でリアルな大きさのDJコントローラー(ターンテーブル)を操作してスクラッチなどを含めたDJプレイが可能で、選択シーンによってはDJプレイに合わせて踊ってくれるバーチャルなロボットダンサーまで楽しむことができる。

 PGA Tour Visionも、優勝した松山英樹のショットの軌道を目の前に表示される縮小サイズのゴルフ場を3Dで確認できて胸が熱くなる。

 とはいえ、これらも含め日常生活や日常業務に定着しないアプリばかりだ。

 Microsoft Word/Excel/PowerPointなど、ジャンル的に日常使いとして定着しそうなOfficeアプリもある。しかし、そのほとんどはMacやiPadから工夫なくそのまま移植しただけだ。これなら、Mac上で利用した方が他アプリとの連携もしやすく実用的で、使うメリットを感じられない。

 それでは意味がないと分かっているからか、AppleはワープロのPagesも表計算のNumbers共にApple Vision Pro用をリリースしていない。唯一、リリースしているKeynoteには「さすが」と思わせる機能がある。

Apple Vision ProのKeynoteにはリハーサルというモードがあり、Apple Storeの法人向けの打ち合わせスペースやSteve Jobs Theaterと思われる部屋に没入してプレゼンテーションの練習ができる。講演で一番困るのは、講演中のアクシデントに気を奪われることだ。将来、Vision Proのプロセッシングパワーが上がったら、バーチャル観客も再現して講演の途中で退席する人や講演中に電話がかかってくる様子、あるいは突然プロジェクターのトラブルで画面が消えてしまう様子、真剣に講演者を見て相づちを打ってくれる人や相づちのテンポがちょっとズレている人も再現してほしい

 実際にステージの上に立ってプレゼンテーションをしている気分が味わえるリハーサルモードがあり、Apple製品の発表会でおなじみのSteve Jobs Theaterらしきステージなどいくつかサイズの異なる講演会場に立って講演を練習できる機能が加えられているのだ。

 こういった「Apple Vision Proならでは」の体験をちゃんと追求したアプリなら意味がある。しかし、開発者が実機を手に入れたのもわずか半年前ということもあり、現時点で出ているアプリのほとんどは、まだApple Vision Proの実機での動作確認が難しい発売前に作られたアプリがほとんどだ。

 もっとも、この状態が永遠に続くわけではない。

 2月以降は開発者も実機を手に入れている。おそらく秋のvisionOS 2のリリース後に照準を合わせて良質なアプリをリリースしてくる開発者は多いはずだ。

 そう考えると、Apple Vision Proの本番は2025年以降ではないかと思っている。

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