「Apple Vision Pro」を真っ先に体験した林信行氏が改めて考える「空間コンピュータ」の現在地(3/5 ページ)

» 2024年08月22日 12時30分 公開
[林信行ITmedia]

標準機能だけでも十分に魅力的なApple Vision Pro

ノートPCしか使った経験がない人にはピンとこないかもしれないが、大きいディスプレイで正面を見て作業ができるのは実に快適だ。Apple Vision Proを使えば、この快適な大画面を出張時にも持ち運べる
FaceTime没入モードでは、相手の顔と手が実際の背丈で空間ペルソナとして目の前に現れる。ちゃんと声も本人のいる方向から聞こえてきて、相手が歩き回るとその姿も声も移動。座ればイスに座った高さになる。しばらく話していると相手が本当にそこにいるかのように錯覚する。最大4人までだが、3Dの建築やCADデータを共有して一緒に研修することもできれば、スライドプレゼンテーションをすることもできる。図は隈研吾事務所の松長 知宏設計室長と一緒に実験をしていた時の様子だ

 では、現状のアプリが少ない状態のApple Vision Proは、数日も経てば飽きてしまう製品かといえばそんなことはない。

 Macの仮想の大型ディスプレイとして使える仮想ディスプレイ機能はかなり実用性が高い。Apple SiliconのMacであれば4K(Intelであれば3K)の解像度まで対応しておりディスプレイサイズは20型どころか拡大すれば200型くらいの大画面にもリサイズできる。ノートPCの内蔵ディスプレイでは確認できないA4書類が、印刷したときにちゃんと文字が読みやすい大きさかも原寸大で確認できるし、iPhoneで撮影した4K動画をプロジェクターで映し出した時の印象もつかみやすい。写真のレタッチ時でも写真の問題点を見つけやすい。Apple Vision Proは、大画面の快適さを携帯できるようにしてしまった点で画期的製品と言える。

 もう1つ、実用的かつ画期的と言えるのが、FaceTimeでのビデオ通話だ。自分の顔をVision Proで3Dスキャンしておくと、ウィンドウの中にApple Vision Proを外した状態の顔、ペルソナが現れて通話できることは多くの人が知っているだろう。

 しかし、すごいのはβ版の没入モードでの通話である。何と、通話相手が自分のいる部屋にちゃんとその人の実際の背丈で表示される空間ペルソナという機能だ(ただし、顔と手だけだが)。相手が座ると、顔の位置が椅子に座った位置の高さになり、通話しながら歩き回ると、それに合わせてその半身像がちゃんと部屋の中を動き回り、聞こえてくる声の方向もそれに追随して動く。全身こそ見えないが、「通話」ではなく、まるで相手が本当に目の前にいて「対話」しているような超リアルな体験を最大4人まで共有できる。

 しかも、この状態でSharePlay機能を使えば、音楽や書類、プレゼンテーションといったコンテンツを共有できる。中でも一番可能性を感じたのが、建築設計事務所の友人に設計中の建造物を原寸大で見せてもらった時だ。物置小屋ほどの原寸大の3Dオブジェの周囲を歩き回りながら解説してもらった際、「これぞ空間コンピューティング」という感じがした(現状の問題点は、複数のモデルを同時に共有して見比べることができないことと、SharePlayをする度に相手の立ち位置が勝手に変わってしまう点だ)。

 仮想ディスプレイとFaceTime没入モードでの通話は、Apple Vision Proの実用面での伸び代を感じさせる機能である。

 一方、実用面以外ではやはり最強なのは動画コンテンツの再生だ。特にApple TV+に用意された3D映画を仮想のシアターに座って楽しむ体験は格別である。これまで他のVRゴーグルでもやってきたことだが、画質が高いし音までAirPods Proをつければ立体音響で楽しめるので、体験の質がかなり違う。

 YouTubeやNetflixなど対応アプリのない動画サービスも多いが、WebブラウザのSafariを使えば楽しむことができる。ただし、YouTubeにたくさんアップされている180度VRなどの3Dコンテンツが再生できないことには驚いた。一刻も早くYouTubeの公式アプリをリリースして見られるようにしてほしいところだ。

 現状のApple Vision Proは、本体重量(約650g)の割には快適だがそれでも重いものは重い。個人差は大きいと思うが、快適に使えるのは数十分から1時間程度だろう。ヘッドレストのあるイスなどで重量を分散しても不快に感じずにいられるのは、せいぜい映画1本分の時間(2時間くらい)だと思う。

 そういう意味では、製品の形状や重さが変わるまでApple Vision ProはMacやiPad、iPhoneと連携させて、必要な時だけ装着するといった使い方が主になると思う。

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