―― コロナ禍で、TOKIUMのビジネスはどう変化しましたか。
黒崎 コロナ禍の当初は出社することができないという企業が多かったこともあり、それまで大きく成長してきた新規契約件数が、一転して全く伸びないという事態に陥りました。また、企業が取り扱う領収書の数が減りますから、既存のお客さまに対するビジネスも減少していきました。当社にとっては、大きなピンチです。
そうは言っても営業部門はやることがありませんから(笑)、まずは、お客さまに連絡をしてみました。すると、コロナ禍にも関わらず、経理部門の方々は出社をしていて、すぐに電話がつながりました。出社の理由を聞くと、契約書のデジタル化は少しずつ進んでいたものの、請求書は物理的にオフィスに届いてしまうため、経理部門の方々が、その処理のために出社しなくいはならない状況があちこちで発生していたのです。
そこで私たちが、何かかお手伝いできることはないかと考えました。手っ取り早いのは、私たちがお客さまの代わりに請求書を受け取って、それをデジタル化して、お客さまは、そのデータを見れば出社しなくて済むということです。ここにビジネスチャンスがあると感じました。
そこで、お客さまの取引先に1社ずつ電話をして、「来月から、請求書をTOKIUMに送ってください」という送付先変更のお願いをしました。そこで届いた請求書をスキャンして、アップロードし、お客さまはどこからでも見られる状況を構築しました。これがDr.経費精算 インボイスプランであり、現在の「TOKIUMインボイス」です。
さらに、スキャンしたデータを会計データとして扱えるようにしたり、社内のワークフローに適用したりといった機能を付加することで、2021年には、サービスの利用者数が600社を突破しました。
―― しかし、お客さまの取引先に対して、「来月から請求書を、TOKIUMに送ってください」と、いきなり電話をしても、相手は「はい、そうですか」というわけにはいかないのでは?
黒崎 そうなんです(笑)。「TOKIUMに請求書を送ってくれれば、代わりに支払いの手続きを行います」といっても、TOKIUMとはいったい何なのか、本当に大丈夫なのかという話になるわけです。
取引先のオフィスに請求書を送るのではなく、当社に請求書を送るという、私たちが提案するこれまでにない仕組みが、社会インフラとして認知される必要があり、そのための活動が必要でした。私たちの仕事は、請求書や領収書など、お客さまにとって重要な情報を扱います。そのためには企業としての信頼度や知名度が大切です。それは、直接のお客さまだけでなく、お客さまの取引先にとっても、同様に信頼度と知名度が無くてはいけません。
そこで、TOKIUMインボイスを中心とした事業拡大のために、2022年にTOKIUMに社名を変更し、TV CMを開始しました。
BearTailというそれまでの社名も、私自身も強い思い入れがありますし、簡単には変えたくないという気持ちがあったのですが、TV CMの効果を最大化にするためにはどうするか、それには自分のエゴは捨てて、最大限のことをやろうと考えました。
TOKIUMという社名は先にも触れましたが、「未来へつながる時を生む」という私たちの志を元にしています。そして、従来のBearTailという社名も、同様に「未来へつながる時を生む」という思いを込めたものですが、それを理解してもらうには、時間をかけて説明をする必要があります。
この志を1秒で伝える社名は何か。そう考えたときに、社名はTOKIUM(トキウム)しかありませんでした。時を生む会社だからトキウムというのは、すぐに理解してもらえます。
―― TV CMは、ウルトラ警備隊をほうふつとさせる「トキウム防衛隊」が登場し、俳優の永山瑛太さんが、経費精算や請求書の課題であるTOKIUM経費精算やTOKIUMインボイスの特徴を紹介していますね。8月からは新CMもスタートしています。
黒崎 TV CMの狙いは、TOKIUMという社名を知っていただくことが重要でしたから、インパクトを重視しました。ですから、一般的なオフィスを登場させるよりも、宇宙を登場させるといったように、全く異なるシチュエーションとし、インパクトの強さを狙いました。
ブランドカラーを緑にしたのも、多くのIT企業が採用している青を避けたいという狙いがありますし、TV CMでもそれを効果的に使うことにしました。当社の印象を少しでも多く残したいと思って社内でアイデアを出して、細かいところまで工夫をしたのが、トキウム防衛隊のTV CMとなっています。
TOKIUMのTV CMで登場する「トキウム防衛隊」。俳優の永山瑛太さん(左)とAMEFURASSHIのメンバーでもある愛来(あいら)さんが出演している。テイストは、円谷プロのウルトラマンシリーズ(特に1970年代)を想起させるものだ―― TV CMの効果はどうですか。
黒崎 お客さまからは、社内で稟議(りんぎ)を上げたときに、TOKIUMの社名が知られるようになり、説明しやすくなったという声をいただいています。社内で経費精算や請求書の仕組みを変える場合には、全ての社員の協力を得なくてはなりません。経理部門の担当者にとっては、大きなハードルです。TOKIUMの知名度が上がることで、ハードルを少し下げることができたのではないでしょうか。
→【インタビュー後編】テクノロジーだけに頼らず人の力を使う! TOKIUMの導入企業数がうなぎ登りなワケ
テクノロジーだけに頼らず人の力を使う! TOKIUMの導入企業数がうなぎ登りなワケ
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