M4チップファミリーの電力効率が先代よりも有意に改善されているという仮説は、新しいMacBook Proの公称バッテリー駆動時間である程度証明できる。
14インチモデルには定格72.4Whのリチウムポリマーバッテリーが搭載されているが、M4チップ搭載構成ではビデオストリーミングで最大24時間、ワイヤレスWebブラウジングで最大16時間の駆動時間を達成している。公称値で“24時間”というのは、MacのノートPCとしては史上初となる。
M4 Proチップ構成ではビデオストリーミングが最大22時間、ワイヤレスWebブラウジングが最大14時間と少し短くなる。パワフルなM4 Maxチップ構成ではビデオストリーミングが最大18時間、ワイヤレスWebブラウジングが最大13時間とより短くなってしまう。
一方、16インチモデルは定格で99.6Wh(仕様表記上は四捨五入して100Wh)のリチウムポリマーバッテリーを搭載している。M4 Proチップ搭載構成ではビデオストリーミングが最大24時間、ワイヤレスウェブブラウジングで最大17時間の使用が可能だ。そしてM4 Maxチップ搭載モデルではビデオストリーミングで最大21時間、ワイヤレスウェブブラウジングで最大14時間の持続時間となっている。バッテリー容量が大きくなった分、ゆとりが増えた格好だ。
ちなみに、M4 Proチップ搭載構成では「ハイパワーモード」というものが用意されている。名前からもある程度想像が付くかもしれないが、これを有効にすると高い負荷がかかる処理が長時間続く場合でも、高い性能をコンスタントに発揮してくれる。8Kカラーグレーディングやレンダリングなどで、パフォーマンスを最大化できる。
電源アダプターは、14インチモデルは70Wまたは96W(※1)、16インチモデルは140W出力のものが付属する。14インチモデルでは96Wアダプターで、16インチモデルでは140W出力のアダプターを使えばバッテリー残量0%の状態から30分で最大50%までの充電が可能だ。
(※1)M4チップ構成とM4 Proチップ(12コア)構成の場合は70W、それ以外の構成は96Wとなる(Apple Storeなどで購入できるカスタマイズモデルでは、より大きな容量の電源アダプターも選択可能)
Mac向けの最新OS「macOS Sequoia」には、Apple Intelligenceと呼ばれる新しいAI機能が搭載されている。現時点では米国英語でのみ利用が可能だが、2025年4月以降には日本語を含む複数の言語で順次利用可能となる旨が発表済みだ。
クラウド上のAIサービスを言語の壁を突破するために活用している人は多いだろうが、Apple Intelligenceも使いこなせば、言語の壁もかなり突破してくれるツールになりうる。日本人にもかなり大きな意味のある機能だ。
Apple Intelligenceが対応するデバイスには、パーソナルかつプライベートの情報が集まってくる。スマートフォンやPCで扱う情報を言語や画像を問わず識別/生成可能で、異なるアプリ間で扱う情報の連携を実現するなど、個人向けインテリジェンスシステムとして、極めてユニークな存在になることを目指している。
実際に、この機能がどこまでデバイスのSoCやメモリに対して負荷をかけるのかは想像する他ない。しかし、1つ分かったことがある。
それはApple Intelligenceの機能のほとんどが、オンデバイスで動作することだ。オンライン状態だと一部の処理がクラウドに投げられることもあるが、それでも処理の多くはオンデバイスで動作している。これは米国英語で使えるβ版でも確認できるが、Appleへの取材を通しても明らかとなっている。
先に触れた通り、Macの場合はApple SiliconでさえあればApple Intelligenceが利用できる。2020年から登場したば第1世代のM1チップファミリーも対象だ。
では、最新のM4ではどのような違いが得られるのだろうか。結果の品質に関しては変わりない一方で、応答性には大きな違いが出る。つまり、リクエストに対して速やかに結果を出してくれる価値こそが、Apple Intelligenceに最適化された最新モデルの価値ということになる。
また、Appleははっきりと明言しているわけではないが、このタイミングでモデルチェンジしないものを含めて、全てのMacのメモリを16GB以上に統一したのは、Apple Intelligenceを使いこなしていく上で、さまざまなシステムやアプリケーションにまたがった質の高い回答を実現するために、メモリの量がそれなり必要になってくるからではないかと想像している。トークンの最大数を増やすために、メモリを増やしたという見立てだ。
まだ全てではないものの、Apple Intelligenceは少しずつOSの中に統合されてきており、標準搭載のアプリでも活用されている。これについてはまた別途、取り上げていく機会を作りたいと思うが、幅広く製品ラインアップを一新したこの3日間は、Apple Intelligenceへの最適化を目指したものだろう。
ベースグレードのM4チップ搭載モデルでもThuderboltのポート数に違いがなくなったことで、新しいMacBook Proは極めて幅広いユーザー層に対して訴求するシリーズになったといえる。
またM3チップ世代では、ターゲットとする性能領域が1段下がったように感じられた「Proチップ」モデルは、M4チップ世代ではメディア処理など、重たい負荷に対する対応力をむしろ高めている。Proチップモデルが「Maxチップ」モデルに近づいたというわけではなく、両方のバリエーションモデルがより高い性能へとスライドしたように感じる。
今回はベースグレードのM4チップの性能も十分に高いことから、MacのエントリーモデルになっているMacBook AirがM2/M3チップに据え置かれていることも(不満を持つ読者もいるだろうが)ふに落ちる。
最後に、新しいMacBook Proの価格設定についてまとめておこう。詳細はAppleのWebサイトをチェックしてほしいが、Apple Storeにおける最小構成の価格は以下のようになっている。
M4 Maxチップモデルはメモリは最大128GB、ストレージは最大8TBまで搭載できる。16インチモデルの最上位構成の価格は63万4800円となる。
なお、実機のパフォーマンスについては追ってレポートをお届けする予定だ。
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