落合陽一氏が「AIフェスティバル 2024」で語ったデジタルと自然の融合 なぜ「そして神社を作る」なのか(3/4 ページ)

» 2024年11月12日 16時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

AIの発達による死生観の変化と宗教 「そして神社を作る」

 AIが「超知能」になり、1人の人間が獲得する知識を超えるデータを学習するようになれば、落合氏の考えるデジタルヒューマンが普及するようになる。

 「大阪万博で担当しているシグネチャーパビリオン『null2(ヌルヌル)』では、中へ進んでいってもらうと、デジタルヒューマンと対話でき、そのデジタルヒューマンを持って帰ってもらえる」と落合氏。「2025年がデジタルヒューマンを持ち帰れ、デジタルヒューマンと会話できるようになるという自分の考えが的中した」と語る。

デジタルヒューマン AIによるデジタルヒューマン。落合氏がそこにいなくても、落合氏のような受け答えをする
大阪万博 奇しくも大阪万博は2025年に開催される

 デジタルヒューマンが実現すると、「人間とは、生き死にとは何かということを考えるようになる」。そして「死生観にまでAIが影響を与える時代になる」と、落合氏は「胡蝶の夢」の故事から解説する。「そのうち、身近で亡くなった人をスマホに入れて会話できるようになるのではないか、お墓に行っても、戒名だけがあるような世界になるのではないか」と予測した。

胡蝶の夢 中国の思想家 荘子による「胡蝶の夢」の故事。うとうとしているときに自分がチョウになって花の間を舞っているが、目覚めたら人間であった。果たしてチョウの自分と人間の自分、どちらが現実なのかという説話を由来とする

 このようなAIの発達により、自然との融合、未知のものへの恐れ、死生観への影響が生まれ、必然的に「宗教や信仰も変化するのではないか」と落合氏は考えを述べた。AIや計算機技術に対する畏敬の念や、それらとの共存のための儀礼が必要になるというわけだ。

 「自然への恐れから、人は神に祈るようになった。五穀豊穣(ほうじょう)を祈願するようになった。それならAIやデジタルという未知のものへの恐れからの救い――例えば、パスワードが流出しませんようにとか、ハッキングされませんようになどと祈るのは至極当然の流れではないか」(落合氏)

 このようなデジタルネイチャー時代の宗教観の体現として、最近の落合氏は神社作りに専念している。そして、禰宜(ねぎ)として一定期間働いて神事を行う資格を得て、実際に神事を行ったというエピソードも披露された。

神事を行う落合氏 神事を執り行う落合氏

 最後に、落合氏は次のような言葉で基調講演を締めくくった。

 「カルチャーの中にAIをいかにフィットさせるかということに興味があり、AIアートを作ったり、デジタルヒューマンを作ったり、神社を作って禰宜をしたり、さまざまなことをしている。これからの時代、家でつまみを作るようにAIに音楽を作らせて友だちにシェアするようになるだろう。AIがコンテンツを作成したり、システム最適化のループを高速化したりするが、結局は人間がキュレーションしなければいけない。それが重要な点だ。AIが皆さんの人生を冒険的なものに変化させられるのを応援するような活動を、これからも行っていきたい」(落合氏)

生成AIとビジネスの“いい感じの関わり”とは?

 続いて、会場では「ビジネスとしての生成AI」と題したトークセッションが行われた。登壇したマヨラボ 共同代表/CEOの片岡翔太郎氏は、AIが発達し続けているおかげで、「これまで登記のことなど事務作業が面倒で、能力はあるのに起業しなかったような人でも、事務作業を請け負うAIエージェントにより、起業しやすくなるのでは?」と展望を述べつつ、「AIを活用したツールの作成や、世界に通用するIPの多さなどの分野で日本は強いので、どんどん起業してほしい」と来場者にエールを送った。

「ビジネスとしての生成AI」トークセッション 「ビジネスとしての生成AI」トークセッション。左からAINOW編集長 小澤健祐氏、IT批評家 尾原和啓氏、マヨラボ 共同代表/CEO 片岡翔太郎氏、AI CROSS 代表取締役CEO 原田典子氏

 ファシリテーターのAINOW編集長 小澤健祐氏は「取材前に、AIが対象者の好みなどを把握し、質問項目をある程度作ってくれるようになるのではないか」と期待する。

 AI CROSS 代表取締役CEO 原田典子氏は「自分の講演を全てテキスト化し、プールしておいて、質問を投げかけるだけで言いたかったことを言語化できるようになった。質問するだけで原稿が完成するようになるのかも?」と語る。

 最後にIT批評家 尾原和啓氏は、「論理的な壁打ちはAIに任せれば良い。それらがスピードアップして取り組み、人間側はそれを消化して直感を磨いていけば良い。最終判断を下すのは人間の仕事なのだ」と締めくくった。

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