デジタルと自然の融合の一助になっているものとして3Dプリンタを落合氏は挙げた。より精密になり、さまざまな素材を扱えるようになってきていることから、新しい素材や構造を生み出せるようになった。AIが自然物に関与し、融合するようになる。「自然は計算機によって拡張され、拡張された自然は計算機に戻って来る。そのループの高速化が、今世紀は進むだろう」と落合氏は語る。
このようなデジタルネイチャー系を定式化すると、「3つぐらいしかやることがない」と落合氏は言う。「1つはループを高速化すること、2つ目はループの適応範囲を広げること、最後は自動最適化の範囲を広げること」だ。
これを、先ほどのマダガスカルゴキブリの場合で説明した。
「虫の状態を計測して動かし、行動モデルを更新する、その速度を上げること。次いで数匹だけでなくそこにいる1万匹全てにそのモデルが更新されるようにすること。量に加え動きにくかったものや、計測しにくかったものをどのように動かすか適用するか、範囲を広げること。勝手に進化したり、勝手に動いたりするようにAIとつながり自動的に更新されていく。2050年には、砂に話しかけても答えてくれるようになっているかもしれない」(落合氏)
例えば新しい吸音材の開発でも、シミュレーションをAIに任せれば短時間で構造を作り出す。そのような微小構造の量産化といった頭を使う部分も、将来的にはAIで担えるようになり、新素材の開発が高速化していくというAIへのインプット量は増え続け、今では人間が生涯中に得られるものを超えた量を学習投入されていると落合氏は解説する。
2010年代にはデザインスケッチ程度のクオリティーだった画像生成AIが、17年頃には実用レベルに成長した。その一例が、謎の囲碁棋士“Master”の正体である「AlphaGo」というGoogle DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラムだ。Masterは、並み居る棋士たちを次々と破って話題になった。
学習投入量を表すFLOPSは、17年にはミツバチ程度の10の17乗だったが、22年にはカラス以上の知能を獲得する10の24乗になり、ChatGPT(GPT-3.5)が登場した。2023年3月に登場したGPT-4では計算投入量が10の25乗となり、IQは70程度になった。今ではIQが120程度に向上したOpenAI o1が利用されている。
「推論性能が10の22乗の頃まではあまり伸びがなかったが、23乗になった頃から学習量が急伸しこのまま上がるのではないかと考えられている。OpenAIのサム・アルトマン氏も28乗まではストレートフォワードで行くのではないかと先日(Redditで)回答している。10の25乗という学習量は人間が生涯に得る知識量と同じで、1.5年で学習投入量が4倍になっているし、IQも比例して高くなっていることを考えると、超知能の世界がまもなく来るという予想の裏付けになっている」(落合氏)
では、ホワイトカラーの仕事はAIに奪われるのだろうか。その点について落合氏は、ラボ生がAIを使ってボードゲームを作るという試みを行ったことを例に解説した。確かにさまざまなシナリオを自動的に作り上げていったが、面白いかどうかまでの判断をAIに任せられなかったという。人間がプレイしないと面白い/面白くないとのジャッジができなかったのだ。
「3分の動画や音楽をAIが作るのに、今では30秒から60程度しかかからない。実時間より短い時間で作成できる。しかし、それをキュレーションするのは人間じゃないとできない。作り出すのはAIに任せ、人間はキュレーションするという役割を担っていくようになるのではないか」(落合氏)
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