リユースという観点では、2つのポイントがある。
1つは、廃棄をせずにリユースすることで、環境負荷を減らすことに貢献できるという点だ。
日本HPの岡戸社長は「環境の観点からPCのライフサイクル全体を見ると、最もCO2を排出しているのは製造フェーズとなる。使用済みのPCを全て廃棄するのではなく、使えるものは再利用することで、CO2排出量の削減につながり、環境にも貢献できる」と語る。
岡戸社長が指摘するように、PCのライフサイクル全体を見ると部品調達/生産/輸送までの段階で、PC1台あたりのCO2排出量は全体の50%以上を占め、中には90%を占める場合もあるという。つまり、長年に渡るPCの使用や、最後の廃棄という部分でのCO2排出量は、最低で10%程度にとどまるという構造なのだ。
使用済みのPCを廃棄せずに価値があるものとして再利用することで、PCを新たに生産するのに比べて、環境への影響を大幅に減らすことができるというわけだ。
PCリユースプログラムでは、回収したPCがHP製の場合に限定して、CO2削減量を記載した証明書を送付できる。CO2削減量を可視化することによって、企業のESG経営をサポートすることが可能になるのだ。
もう1つのポイントが、回収したPCは日本国内でデータ消去を行い、海外工場で再生作業を行った後にリユースPCとしてアフリカに輸出され、販売されるという点である。
日本HPの岡戸社長は「PCの普及率が低い新興国において、この仕組みを活用することで、世界とのデジタル格差を埋める手段の1つになる」と位置付ける。
世界的なデジタル格差の問題が指摘される中で、日本HPのリユースPCの仕組みが課題解決の一助になるというわけだ。
PCリユースプログラムにおいて、協力会社として各種業務を行っているのがTT Globalだ。ITリユースの専門会社で世界40カ国以上に展開しており、2024年8月には創業から25周年を迎えた。
創業当初から、先進国市場と新興国市場の間の技術的ギャップを埋めるというビジョンを掲げ、リユースPCを新興国のオフィスや学校などに販売してきた実績がある。HPを始めとして世界各国のPCメーカーと連携しながら、新興国市場におけるオフィスや学校などにリユースPCを再販している。
既に同社では、日本HPからデモ用PCや返品されたPCなどを回収し、新興国向けにリユースPCとして販売していた経緯があるという。今回のPCリユースプログラムでも、アフリカのいくつかの国に限定してリユースPCとして再販を行い、現地で再利用されることになる。
アフリカにおけるPCの普及率は低く、インターネットに接続し、触れることができる人口比率はスマホを含めても約40%とも言われており、その解決の手段となる。再販の対象となるのは、PCが必要ではあるが新製品を購入するために十分な予算を確保できない中小企業や学校、病院などだという。
日本では、GIGAスクール構想第二期においてサポートすることを発表した。2019年からの同第1期で導入されたPCを回収し、新興国市場に再販する取り組みを開始している。
同社では、「教育分野に使用されていたPCをリユースPCとして再販できることで、新興国の家族や学生のデジタル化を促進できる。新興国に対して、手の届く価格帯でリユースPCを再販することは、デジタル格差を縮小する上でも有効である。TT Globalは、新興国と先進国の間にあるデジタル格差の縮小に貢献していく」と述べている。
日本HPでは、PCリユースプログラムについて「より安全に、より簡単に、サステナブルな調達が可能になると共に企業のESG経営を支え、脱炭素社会作りに貢献できる」とする。
日本HPは国内PC市場において、ブランド別シェアでは13四半期連続で首位を維持し続けている。PCリユースプログラムによって法人ユーザーや新興国市場にもたらすメリットは大きいが、それにも増して、トップシェアメーカーである日本HPが率先してPCの再生利用に積極的に取り組む姿勢は、高く評価できるだろう。
日本HPがキーボード交換やバッテリー着脱に対応する製品を予告 2025年春のAI PC新モデルやワークステーション出そろう
日本HPが個人/法人向けAI PCのラインアップを拡充 メインストリームモデルもAI機能を強化
いよいよPCやプリンタに浸透する“AI活用” HPが年次イベントで80種類以上の新製品を一挙に発表
社会課題への適応も求められる中で日本HPが重視すること
AI体験とビジネストレンド機能を網羅した日本HPの「HP EliteBook X G1i 14 AI PC」を試すCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.