飯田氏からバトンを引き継いだNECPCの塩入史貴氏(生産事業部 事業部長)は、米沢事業場の全体概要と、PCの生産ラインに関する説明を行った。
米沢事業場はJR奥羽線(※1)の米沢駅から自動車で数分という位置にあり、敷地面積は6000m2、建物(4階建て)の床面積は9000m2となっている。従業員は、協力会社の工員も含めて約1000人だ。塩入氏によると、フル稼働したときには1日で約6000台のPCを製造できる能力を備えているという。
(※1)この駅を含む奥羽線の福島〜山形〜新庄間は「山形新幹線」「山形線」と通称される
米沢事業場におけるPC組み立ての工程は、大きく3つに分かれるという。1つ目は部品の納品から必要な部品のピックアップまでの「部品工程」、2つ目が「組み立て工程」、最後にPCを箱に詰めて出荷する「箱詰/出荷工程」だ。
部品工程では、近隣のサプライヤーの倉庫や工場などから部品が納品されてくる……のだが、部品は原則としてストックしていない。当日に製造するのに必要な部品が、「JIT(Just In Time)」で納品される仕組みだ。
米沢事業場(より正確に言うと当時のNEC傘下企業の国内工場)では、2000年から「TPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)」を採用した。部品納品がJIT方式なのも、TPSに基づく取り組みとなる。
完成品(製品)はもちろんのこと、部品でも“無駄な在庫”が積み上がらないようにすることで、効率の良い生産を実現している。
納品された部品だが、以前は人間が段ボールを手動で開けて、中の部品をトレイに移していたそうだ。しかし、今は効率を重視する観点から、自動で段ボールを開封する機械を作って、それが開けるようにしたという。
「段ボールを開けるだけ」という生産性にはあまり関係のない作業を人間がやらないで済むようになり、全体の効率が上がったそうだ。
部品は10ユニット単位で集めた後、「AGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)」に載せられて対象のラインに送られる。
米沢事業場の工場は2つのフロアに分かれていて、1階には先ほど紹介した部品工程と、最後の出荷工程、そしてデスクトップPCとレノボ・ジャパンの一部製品の生産工程があり、2階にはNECブランドのノートPCの生産工程と、箱詰工程がある。
ノートPCの生産工程では複数のラインが稼働しており、それぞれのラインで異なるモデルを生産していた。とはいえ、各ラインは特定のモデルに特化しているわけではなく、需要や受注状況に応じて生産するモデルは変動する。
そのため、工場の関係者でも「どのラインでどのモデルが生産しているか」は実際のデータを見ないと分からないほどに効率を重視している。
異なるモデルの生産に対応するため、製品はコンベア方式で流れていく。また、工員が担当する作業場そのものを移動できるようにしてあり、柔軟に作業を進められる。
工員への指示は、全て「eSOP(電子作業指示書)」と呼ばれるシステムで行われる。
以前は紙ベースの作業指示書を使っていたそうだが、これをeSOPに切り替えたことで、工員が目の前で作業している機種に合った指示をディスプレイを通して表示できるようになった。必要な部品、行うべき作業がタイムリーに表示されるので、工員がミスをするリスクを軽減できる。
米沢事業場では生産ラインの標準化も進めており、セルラインは現在5〜7人で作業するようになっている。これは通常のセルラインに割り当てる人数としては多めなのだが、これは1人1人が担当する工程数を削減することで、新しい工員が入った時に覚えてラインに入るまでのリードタイムを減らすことつながった。結果として、全体の生産性も向上したという。
この事業場がある米沢市でも、人手不足は深刻な問題となりつつある。特に熟練工の引退が発生した時に、それを埋めるまでに時間を要するのが課題だった。そこで「熟練工という特別な職能に頼る」のではなく、「作業を可能な限り標準化して、誰でも短時間で慣れることができること」を重視してラインの設計を行っているとのことだ。
米沢事業場では作業の機械化にも努めており、「Project Ableze」(Ablezeは「燃えさかる」の意)という工場のスマート化(≒自動化)プロジェクトを進めている。
Lenovoからの提案もあり、Lenovoの全世界にある工場の中でも「スマート工場のパイロット」としての役割も与えられ、機械による自動化をより進めているという。既にパイロットラインは稼働済みで、今回の見学会ではノートPCの各種シール(型番/シリアルステッカーやWindowsのライセンスシールなど)を貼る作業が完全に機械に置きかえられていた。工員がノートPCを所定の位置に置くと、ロボットが寸分たがわない位置に貼っていく様子を確認できた。
現在、Project Ablezeは“第2期”のラインを構築中で、今後1年程度かけて稼働を開始し、より大規模な自動化を目指すという。塩入氏によると、現状45%程度のロボット化比率を60%に引き上げるのが目標だ。
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