NECパーソナルコンピュータのモバイルPC「LAVIE Pro Mobile」は、山形県にある同社の米沢事業場で生産されている。以前は、世界最軽量のモデルをうたっていたLAVIE Pro Mobileだが、今では開発方針を大きく変え、PC-8001の生誕40周年記念モデル「LAVIE Pro Mobile PM750/NAA」を発売するなど、独自の展開を続けている。
そこに至るまでの過程に何があったのか。同社の開発陣とデビット・ベネット代表取締役執行役員社長が語り合った。
LAVIE Pro Mobileの前身に当たる「LaVie Z」は、2012年に登場して以降、日本のPC市場に「1kg以下の超軽量モバイルPC」というジャンルを打ち立て、それをリードするモデルとして継続してきた。
しかし、2019年の新モデルを検討するに当たり、製品の企画チームから提出された要望に、開発プロジェクトをまとめるマネージャーの松井博之氏は目を疑ったという。
松井氏 「約769gと世界最軽量をうたっていたモデルの後継機を作るに当たり、従来と同じような傾向で要望が来るかと思っていたが、全く逆だった。企画チームからのオーダーは、お客さまの心に響く、美しいID(インダストリアル・デザイン)を保ちつつ、ユーザビリティーの塊のようなPCを作って欲しいというものだった」
ものすごい戸惑いを感じつつ、せっかく獲得した世界最軽量という称号を失うかもしれないと考えながら、さまざまな部分でバランスが取れるようにプロジェクトを進めてきたと松井氏は続ける。
松井氏 「開発チームに相談なく、企画チームからモックアップ(製品模型)が届き、いきなりこれに従って開発してくれというオーダーが来た。フォームファクターのキーは液晶やバッテリーなどいろいろあるが、最初からこういう形をキープしつつ、開発してくれといわれるのはなかなか難しい。しかも、IDがプリオリティーのトップということもあり、エンジニアは苦労したはず」
植田氏 「要望がいつも通りだったら軽さがメインだったが、今回はそれが一切通じなかった。ただ、企画チームの夢をかなえることが開発の努めだと考えた。これは、いわばエンジニアスピリットでやっていて、普段からそういうマインドでやっている」
これまでのLAVIE Pro Mobileは、天板に鍛造マグネシウムリチウム(Mg-Li)合金を採用することで、軽量化に効果がある反面、強度の確保が難しかった。そこで、新モデルでは、東レが開発した新構成のカーボン素材を天板に用いることにより、従来のMg-Li合金と比較しておよそ半分(体積あたりの重量)を実現した。それを生かして天板部分の厚さを2倍にすることで、点加圧耐性とねじり耐性は従来比で約2倍に向上させながら、面耐圧150kgf(重量キログラム)を確保し、高さ76cmからの落下試験にも耐えるなど、従来モデルの仕様をキープしている。
植田氏 「例えば、ボディーの左右両側面にあるインタフェースだと、コネクターの優位性を考えて左右にレイアウトしているが、その分、マザーボードは左右に細長くする必要があり、その結果として面積が増え、重量も増えてしまう。フラットなキーボードをという要望も、へこんでいる部分は抑えが利いて頑丈になるが、フラットで頑丈さを維持するのは苦労したし、底面の絞り込みについても、横から見た姿(うすくなる)や弁当箱のように絞り込むと内部の部品が限られてくるので非常に大変だった」
松井氏 「普通のノートPCのヒンジは、目に見えるところにあるが、今回はユーザーから見えないようにするというIDのこだわりがあり、そこから考えた。ヒンジを目立たないように小さくすると、首上(液晶部分)のケーブルをどうするかという問題にぶち当たる」
龍崎氏 「排熱用のダクトは通常左右にあって、こちらも目に見える位置にありがちだが、今回は見えないように配置した。すると、排熱の暖かい空気が直接液晶ディスプレイに当たってしまい、今度は液晶ディスプレイの温度規定に引っかかってしまうのでバランスに苦慮した。さらに液晶ディスプレイを3辺とも狭額縁にしたため、下部にWebカメラを配置したかったが、ユーザーの顔を見上げる形になってしまうので、上部に置くべきと言う企画の意見もあってアンテナの内蔵に苦労した」
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