プロナビ

殿、無理でござる。「いや、なせばなる」――「LAVIE Pro Mobile」誕生秘話デビット社長や企画チームに技術陣が倍返し!? (1/3 ページ)

» 2019年11月26日 12時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

 NECパーソナルコンピュータのモバイルPC「LAVIE Pro Mobile」は、山形県にある同社の米沢事業場で生産されている。以前は、世界最軽量のモデルをうたっていたLAVIE Pro Mobileだが、今では開発方針を大きく変え、PC-8001の生誕40周年記念モデル「LAVIE Pro Mobile PM750/NAA」を発売するなど、独自の展開を続けている。

 そこに至るまでの過程に何があったのか。同社の開発陣とデビット・ベネット代表取締役執行役員社長が語り合った。

今回のトークセッションを行ったNECパーソナルコンピュータのメンバー。左から龍崎正憲氏、デビット・ベネット氏、植田信平氏、松井博之氏

従来の軽量モバイルPCから発想の大転換があった

 LAVIE Pro Mobileの前身に当たる「LaVie Z」は、2012年に登場して以降、日本のPC市場に「1kg以下の超軽量モバイルPC」というジャンルを打ち立て、それをリードするモデルとして継続してきた。

 しかし、2019年の新モデルを検討するに当たり、製品の企画チームから提出された要望に、開発プロジェクトをまとめるマネージャーの松井博之氏は目を疑ったという。

開発チームにいきなりモックアップが届けられたという

松井氏 「約769gと世界最軽量をうたっていたモデルの後継機を作るに当たり、従来と同じような傾向で要望が来るかと思っていたが、全く逆だった。企画チームからのオーダーは、お客さまの心に響く、美しいID(インダストリアル・デザイン)を保ちつつ、ユーザビリティーの塊のようなPCを作って欲しいというものだった」

 ものすごい戸惑いを感じつつ、せっかく獲得した世界最軽量という称号を失うかもしれないと考えながら、さまざまな部分でバランスが取れるようにプロジェクトを進めてきたと松井氏は続ける。

松井氏 「開発チームに相談なく、企画チームからモックアップ(製品模型)が届き、いきなりこれに従って開発してくれというオーダーが来た。フォームファクターのキーは液晶やバッテリーなどいろいろあるが、最初からこういう形をキープしつつ、開発してくれといわれるのはなかなか難しい。しかも、IDがプリオリティーのトップということもあり、エンジニアは苦労したはず」

いきなりの方針転換で、企画チームから出てきたオーダーの一部

植田氏 「要望がいつも通りだったら軽さがメインだったが、今回はそれが一切通じなかった。ただ、企画チームの夢をかなえることが開発の努めだと考えた。これは、いわばエンジニアスピリットでやっていて、普段からそういうマインドでやっている」

期待には100%以上に応えるのがNEC技術陣のスピリット

 これまでのLAVIE Pro Mobileは、天板に鍛造マグネシウムリチウム(Mg-Li)合金を採用することで、軽量化に効果がある反面、強度の確保が難しかった。そこで、新モデルでは、東レが開発した新構成のカーボン素材を天板に用いることにより、従来のMg-Li合金と比較しておよそ半分(体積あたりの重量)を実現した。それを生かして天板部分の厚さを2倍にすることで、点加圧耐性とねじり耐性は従来比で約2倍に向上させながら、面耐圧150kgf(重量キログラム)を確保し、高さ76cmからの落下試験にも耐えるなど、従来モデルの仕様をキープしている。

植田氏 「例えば、ボディーの左右両側面にあるインタフェースだと、コネクターの優位性を考えて左右にレイアウトしているが、その分、マザーボードは左右に細長くする必要があり、その結果として面積が増え、重量も増えてしまう。フラットなキーボードをという要望も、へこんでいる部分は抑えが利いて頑丈になるが、フラットで頑丈さを維持するのは苦労したし、底面の絞り込みについても、横から見た姿(うすくなる)や弁当箱のように絞り込むと内部の部品が限られてくるので非常に大変だった」

新モデルで苦労したという頑丈さの確保
ボディーの境界を極力見せないデザインになっている。文字やアイコンも目立ちすぎないようにする配慮したという

松井氏 「普通のノートPCのヒンジは、目に見えるところにあるが、今回はユーザーから見えないようにするというIDのこだわりがあり、そこから考えた。ヒンジを目立たないように小さくすると、首上(液晶部分)のケーブルをどうするかという問題にぶち当たる」

龍崎氏 「排熱用のダクトは通常左右にあって、こちらも目に見える位置にありがちだが、今回は見えないように配置した。すると、排熱の暖かい空気が直接液晶ディスプレイに当たってしまい、今度は液晶ディスプレイの温度規定に引っかかってしまうのでバランスに苦慮した。さらに液晶ディスプレイを3辺とも狭額縁にしたため、下部にWebカメラを配置したかったが、ユーザーの顔を見上げる形になってしまうので、上部に置くべきと言う企画の意見もあってアンテナの内蔵に苦労した」

排熱用のダクトは赤い矢印部分にある。普段使っている位置からは見えにくいところにある
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月11日 更新
  1. 初のカラー対応「Kindle Scribe Colorsoft」の実力は? 通常モデルとの価格差1万7000円の価値を検証 (2026年06月10日)
  2. 「Geminiの技術は使うが、Geminiではない」 WWDC26で見えたApple流AIとプライバシー戦略の核心 (2026年06月10日)
  3. ミニPCに強みの「MINISFORUM」 ミニワークステーションの新モデルから「謎の拡張カード」まで多彩な製品を披露 (2026年06月10日)
  4. 「macOS 27 Golden Gate」が2026年秋に登場 初のApple Silicon専用バージョンに (2026年06月09日)
  5. 「次世代Apple Intelligence」をフル活用するにはどのような条件がある? 「Siri AI」は日本で使える? 知っておくべき対応モデルのハードル (2026年06月09日)
  6. コンパクトボディーにスパコン並みのAI性能! 「NVIDIA RTX Spark」搭載ミニデスクトップPCを見てきた (2026年06月04日)
  7. 実売1万円切りでパススルー給電にも対応! KTCの15.6型モバイルディスプレイ「H15F9」は“買い”か (2026年06月09日)
  8. LGが4K有機EL TVの2026年モデルを発表 映像プロセッサを刷新し120Hz以上の高速表示にも対応 (2026年06月09日)
  9. 夜間もフルカラーで鮮明に記録できる「SwitchBot 屋外パンチルトカメラ 5MP」が15%オフの7674円に (2026年06月10日)
  10. 高騰中のSSD、品薄のHDD──けれど“最終処分”のニーズは変わらず (2026年06月06日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー