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殿、無理でござる。「いや、なせばなる」――「LAVIE Pro Mobile」誕生秘話デビット社長や企画チームに技術陣が倍返し!? (2/3 ページ)

» 2019年11月26日 12時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

求められる開発チームの存在理由

 普段、各社の開発陣に話を伺うと、職人魂とも言うべきこだわりの言葉が返ってくることが往々にしてある。NECパーソナルコンピュータの場合はどうなのか。

松井氏 「企画やマーケティングの各チームからは、重量やバッテリーライフ、見た目のデザインなど多彩なリクエストがくる。それに100%ドンピシャで返すだけでは面白くないので、向こうが言ってきたものを上回る数値をたたきつけるのが、技術陣の無上の喜びだ。夢を何倍にしても返してやるという心づもりで普段からやっている」

龍崎氏 「開発当初、重量が899gあったが、まずは作って強度を確認という作業を繰り返すことで最終的に837gにした。どこかの材料を変えて一気に減らしたわけではなく、細かいところを一つずつ見て試行錯誤しながら軽量化を実現した。ただ軽くするのは簡単だが、それでは頑丈ではない。厚くすれば頑丈になるが重くなってしまうので、兼ね合いを見ていく作業の繰り返しだった」

開発チームの要望に応えるだけではダメだ、さらに上を目指せ

松井氏 「当初の889gを、最終的に837gまで落とし込んだ。モバイルの世界ではg(グラム)が重要で、ロゴの印刷や中にテープが1つあるだけでも重くなってしまう。メカの担当者が一番大変な部分だと思うが、非常に高いところでバランスが取れたPCになったと自負している」

植田氏 「バッテリーの駆動時間については、企画チームから当初15時間という要望があったが、最終的には約20時間のバッテリーライフを実現した。バッテリーの持ち時間については、数値が一人歩きしてしまうため社内でも秘密で直属の上司にしか言わないほど。何せ、ハードウェアとは関係のないところで、0.1Wの差分が1時間以上の差になってしまうからだ。今回は低消費電力のディスプレイを採用したことで、消費電力を絞ることができた。低消費電力にすればするほど安定性に影響が出るので、バランスを取るのが大変だった。モバイルとしては一番シビアな部分でもある」

キーボードのコーティングで横やり? 一体誰が

 さまざまな試行錯誤を経て、さあ量産かという最後の最後の段階で複数の横やりが入ってきたという。その1つは、ある人の「使っていると気持ちが良くない」という一言だった。

デビット氏 「AMDからレノボに移ってきて、初めてThinkPad X1 Carbonを使ったところ、スピードも速くて、キーボードも気持ち良く入力できた。このLAVIE Pro Mobileもテストしたところ、慣れてきたらタッチが違うことに気が付いた。その旨を開発チームに伝えたら、数週間で対応してくれた。すごいことです」

松井氏 「開発の最後の最後で変更の依頼が入ってきた。1つは触って気持ちがいいキーボードにしてくれという要望だった。キーボードのコーティング1つをとっても、信頼性のテストなどで慎重に進めている。例え誰であろうとも、入ってきた要望を実現するのが開発チームのスタイル。コーティングが違うと五感の部分で違うし、信頼性のチェックもやり直しになる。ここでもバランスをとって最善を尽くした」

PC-8001の生誕40周年記念モデル裏話 こちらも誰かの一言が発端

 もう1つの横やりも、デビット社長の「せっかくの記念なんだから、何かやろうよ」のかけ声がきっかけでスタートしたという。前述のPC-8001 生誕40周年記念モデルだ。

独自のボディーカラーを採用したPC-8001の生誕40周年記念モデル「LAVIE Pro Mobile PM750/NAA」

松井氏 「40周年記念モデルは、ボディーカラーが変わるだけじゃんと思われているけれど、開発チームからすると単純な話ではなくなる。新モデルはボディーの各部分で部材のマテリアルが違い、それぞれのパーツ部分を別の会社が作っているため調整するのが大変だ。メタリックが入っている素材なので、アンテナのパフォーマンスにも影響が出てくる。そこでカラーリングで調整しているが、それらを短期間でキレイにパフォーマンスが出るPCを作るのは難しかったが、何とか実現できた」

 この記念モデルを見ると分かるが、実際のPC-8001とは色味がちょっと違う。元々は忠実に色再現をしたいと思っていたそうだが、なるべく色味を変えず、現代的に今の人たちにヒットするような形を目指し、調和の取れた色合いに落ち着いたとのことだ。

1979年に発売されたPC-8001

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