VRChatを企業に説明する際、サービスをどう言語化するかも重要になると北庄司氏は説明します。これまでのVRChatは「ソーシャルVR」や「メタバース」といったカテゴリー名で語られることが多く、実際にSteamのVRChat紹介文でも「future of social VR」という表現が使われています。
一方で、ビジネス層に向けては「ソーシャルVRプラットフォーム」という表現だけでは伝わりにくい局面がある。そこで北庄司氏は、没入して体験できるメディア/プラットフォームとして説明する意図を示しました。
VRによる仮想空間やUGCという仕組みを先に置くのではなく、「そこで何が起き、何が体験として残るのか」を先に置くことで理解を進めるという発想です。
この言い換えは、VRChatのマルチプラットフォーム化とも結び付きます。公式サイトが「VR not required」と明記し、Android/iOSを含む複数プラットフォームを入口として提示していること自体が、VR専用の体験ではなくデバイスを選ばずに長時間滞在する場としての普遍化を志向しているサインとも読めます。
また、北庄司氏からは、iOS版のリリースが日本での利用拡大に寄与している旨も語られました。実際のダウンロード数などの数値は公開できないそうですが、手応えはあるとのことです。スマホ経由でサードプレースに流入する母数が増えれば、コミュニティーと経済活動の厚みが増す。ここに、ビジネスとしての成長ストーリーを重ねようとしていると感じました。
ジェレミー氏は、ビジネスデベロップメント(事業開発)の未来を「イベント、マーケットプレース、そして広告」と整理しました。ポイントはこれらが別々の施策ではなく、VRChatというサードプレースを企業が扱える構造にするための装置になることです。
VRChatが本質的にソーシャルな場所である以上、ビジネスパートナーが関われる機会はコンテンツ制作だけではありません。ブランドの周囲にグループを作り、そのグループとしてイベントを開催することで、人々が共通の話題で盛り上がるためにアクセスする理由を作ることができる。特にコンサートやウォッチパーティー、ミート&グリートが効果的だと話します。
質疑では「チケット購入者だけがイベントへアクセスできる仕組み(イベントチケッティング)」が日本のパートナーから強く求められている点にも言及がありました。ジェレミー氏は「約束はできない」と前置きしつつ、将来的により具体的なアップデートを出せるようになれば、というスタンスで可能性に触れました。
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