REALFORCEは業務用キーボードとして生まれた、質実剛健、正確で高品質、高耐久性を体現したかのような製品だ。
現在販売中のシリーズとしては、今回のR4の他、70%レイアウトのRC1、前々モデルR2のバージョンアップモデルであるR3S、ゲーミングキーボードのGX1の計4シリーズとなる。
ゲーミングキーボードであるGX1を除いても、R4/R3S/RC1が並行して販売されているという点はいささか興味深い。
このうち、もっとも販売期間の長いR3Sはスタンダードキーボードという位置付けになっており、インタフェースをUSB有線接続のみに絞って廉価な価格を維持しつつ、キーマップ変更や4段階APCに対応したシリーズだ。
なお、R3SのSはおそらくスタンダードのSであり、静音のSilentではない(R3Sには非静音モデルも存在する)。R3SはR2のボディーにR3が入った製品と評されることもあり、外観は前々モデルとなるR2を踏襲している。
つまり、今回のR4の発売により、R3の外観を持つモデルだけが市場から姿を消すことになった。着せ替えパネルに対応したR3はR2と比較すると丸みを帯びた外観だったので、R4のシャープなイメージはそこから大きく振り戻した印象もある。よほどR3のデザインが不評だったのかもしれない。
RC1は70%レイアウト採用により、R3/R3S/R4といったメインストリームとは別に並行展開されるシリーズとなっているが、レイアウト以外の機能にも注目すべき点がいくつかある。
それが4段階から0.1mm刻みに詳細化されたAPC設定と、2パターンから4パターンに増えたAPCプロファイルだ。これらはR3からの上位互換仕様なので、R4に先行してRC1で実装された、という見方もできるだろう。
先に新機能を投入することで市場の反応を見つつ、「これが新シリーズで実装されればなあ」という既存ユーザーの期待をあおる、そういう戦略もあるかもしれない。
実際のところ、R3からR4へのアップデートはそれほど大きくない。だが、この“わずかな差”にこそブランド継続の意味がある。40年以上前に既に完成の域に達していた静電容量無接点方式スイッチではあるが、今までの大きな変化としては静音化とAPCのカスタマイズ性向上、そしてフルキーリマップなどが挙げられる。
その他にはPS/2からUSB Standard-A、そしてUSB Type-C、Bluetoothといったインタフェースの変化、かな無し中央印字やコンパクト化など、時流に応じたデザインの改修があるだろう。
そこに感じるのは完成域にあるハードウェア製品の難しい生存戦略だ。以前はソフトウェア製品でもハードウェア製品同様、買い切りが普通だった。だが、製品サポートのためのコスト負担や売上のためには、毎年のように新機能を搭載した新バージョンを発表し、買い換え需要を喚起しなければならない。
それでも、製品の完成度が高まってくると新機能の余地は次第に少なくなってくる。その結果、今では多くのソフトウェアが利用料、ライセンス料として継続的な売上を確保するサブスクモデルに転換している。
では、ハードウェア製品の場合はどうだろうか。エンタープライズ向けのネットワークやサーバ製品など、保守サポートを別途必要とし、サポート期限が切れると利用そのものができなくなるような製品もあるが、一般消費者向けには受け入れがたい仕組みだろう。
そうすると、故障や経年劣化による買い換え需要と、新規購入者の拡大が命綱ということになる。特にREALFORCEの場合は元より高い耐久性が特徴/差別化の1つでもある。買い換え需要は非常に厳しく、価格も最高額に近い。
機能を絞って廉価版として展開するR3S、ターゲットを絞って付加価値を付けた上でいち早く新機能を搭載したRC1、そして次世代標準を担うR4、という3シリーズは競合することなく共存できるギリギリのラインのようにも思える。
REALFORCE R4は劇的な変化を望む人にとっては物足りなく映るかもしれない。だが、静電容量無接点方式という完成された機構の上に、微細な改善と統合を重ね、ブランドとしての整合性も保ちつつ、次世代へのバトンを渡す――そういった意味で非常に戦略的なモデルでもある。
サブスク化が難しいハードウェア製品において「新製品を出し続けること」自体がブランド維持に必要な営みなのだとすれば、豊富なバリエーションを維持しつつ、着実に進化し続けるREALFORCE R4はその戦略も含めてもっとも完成度の高いキーボードだといえるだろう。
(製品協力:東プレ)
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