過去最高の受注急増と苦渋の全モデル受注停止――マウスコンピューター 軣社長が挑む“脱・メーカーのエゴ”と激動の2026年IT産業のトレンドリーダーに聞く!(3/3 ページ)

» 2026年05月11日 12時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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創業初の「受注停止」という苦渋の決断 厳しい値上げも「進化のチャンス」

―― 2025年後半から部材の調達遅れや価格高騰が問題となり、PC本体の価格戦略にも大きな影響を及ぼしています。マウスコンピューターでは、2025年12月10日に公式Xへの投稿をきっかけに個人ユーザーからの注文が急増し、競合するPCメーカー各社の直販サイトや、量販店の店頭でもPCの販売が増加する“マウスエフェクト”と言われる現象が見られました。

 正直な話、あの投稿で、これだけの多くの需要が生まれるとは全く思っていませんでした。私は社内に向けて、SNSなどで発信をする際に、今起きている事実を、正しく伝えることを徹底しています。これは、日々の営業活動でも同じです。

 12月のXでの投稿も、今当社が置かれている状況を正しく発信し、1月になると価格が上昇することを背景に、PCを購入するならば今がいいということをお伝えしました。

―― しかし、その結果としてマウスコンピューターでは12月中に全てのモデルを一時的に受注を中止せざるを得ない状況になりました。

 Xへの投稿以降、12月の受注台数は過去にないほどの規模となり、1日の受注数でも過去最高台数をはるかに更新し、12月の生産台数は通常の2倍近い規模に達しました。結果として、途中で受注を中止したのですが、最大の理由は、納期を延ばしたくないということでした。

 私たちの基本的な考え方は、どんなにお待たせしても納期は1カ月だと思っています。また、コールセンターなどに対して、納期に対する問い合わせなどが増加し、通常のサポート業務にも影響が出始めていたという点も考慮しました。

 サポートを含めて、通常業務ができないということは最終的には品質にも影響しますし、お客さま満足度を維持することができなくなります。これは致命的な問題につながる可能性があると判断したわけです。

 私たちが努力をして対応できる範囲を超えてしまい、これ以上、受注/販売を続けると、かえってお客さまにご迷惑をおかけすることになると考え、受注を停止しました。

 振り返ると、2025年10月14日にWindows 10がサポート終了を迎え、それに伴う買い替え需要が一段落し、11月以降は販売台数が減少すると予測していましたから、もともとは生産台数を縮小する体制を考えていました。

 実際には納期を20日間ぐらいまで延ばしたことで、部材の手当てについては目途が立ったのですが、年末年始を挟むことで、一部の部品に1週間程度の遅れが発生したり、生産が追いつかずに納期がかかってしまったりということが想定されました。

 もう少し猶予があれば生産体制の確保もできたのですが、それが追いつきませんでした。12月と1月は土日も稼働し、工場が停止したのは1月1日だけで、従業員が一生懸命に対応してくれました。しかし結果として、このような事態を招いてしまったのは私の大きな反省点でもあります。当社が自らの都合によって販売を中止したのは創業以来、初めてのことでした。2026年1月下旬からは、納期や生産体制も正常に戻っています。

マウス コンピューター 軣 社長 代表取締役  エフェクト 値上げ PC ものづくり

―― 2026年1月の受注の再開と同時に価格の改定を実施しましたが、その後の反応はどうですか。

 12月10日のXへの投稿時点では、値上げの時期については明確にしていませんでしたが、正しい情報を、正しく発信するという観点から、受注の再開に合わせて価格を改定することを事前に発表しました。

 価格の改定幅は、モデルごとに異なります。メモリ価格の高騰が顕著であり、2枚50ドルで調達できていたメモリが、1枚で100ドルという水準にまで上がっていますし、それにつられるように、他の部材の価格も上昇しています。

 また、円安基調であることも部材の調達にはマイナス要素になりますから、値上げをしても、私たちにとっては厳しい状況が続いています。さらなる業務改善を進め、作業の1つ1つの無駄を省き、工場関連の外部倉庫の見直しなども行っています。

 とはいえ、品質を高める努力は継続しなくてはなりません。効率を高め、生産性を高め、品質を高めるための取り組みをこれまで以上に加速していくつもりです。ただ、フローを整理すれば品質は上がりますから、むしろ、これをチャンスと捉えて改善に取り組んでいます。

 12月の厳しい状況は、取引先の協力を得て乗り越えることができました。その後、部材の確保や調達価格の面で、取引先との関係を強化しており、安定した形でお客さまに製品を届けられる環境の確立に力を注いでいます。

―― 価格高騰の状況はいつまで続くと見ていますか。

 しばらくは、この状況が続くと予測しています。IT産業全体で、AIサーバへの投資が続き、部材不足が継続する中で、それがどのタイミングで一段落するのか、それによってメモリの価格がどう変化するのかという点がポイントになります。

 しかし、年間を通じて若干の上下はあるにしても、2026年の年末まではこの状況が続くのではないでしょうか。2027年以降に、部材の供給や価格の動向がどうなるのかということを注視していく必要があります。調達先となるパートナーとの連携がますます重要になる1年だと思っています。

※インタビュー後編→市場の逆風も「成長のチャンス」へ――トップ自らeスポーツの現場に立つマウスコンピューター、2026年の戦い方

コラム:ただのコラボモデルではない記念モデルも

 実はマウスコンピューターとPC USERがコラボしたモデルが一部発売中だ。1つは同社のビジネス向けブランド「MousePro」の中で、最もコンパクトなモデルとなる「MousePro C3シリーズ」で、主なスペックをPC USERの読者アンケート結果を踏まえているのがポイントとなっている。

 もう1つはゲーミングPCの「G TUNE P5」で、どちらも限定台数かつ通常よりもお得な価格になっている.既に完売したモデルが多いが、下記モデルは現時点でも購入が可能だ。気になる人はチェックしてほしい。

マウス コンピューター 軣 社長 代表取締役  エフェクト 値上げ PC ものづくり

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