―― 経営戦略の観点から変化はありますか。
糸岡 ノジマグループには、数字を追わないという文化があります。これまでのVAIOはファンド傘下の中で数字を設定し、それを追うことが求められていましたから、そこからは大きな転換となります。
重視するのは、行動/アイデア/プロセスの改善です。そこで、社員一人一人の評価をしていくことになります。その取り組みの結果として、ついてくるのが数字です。この文化がVAIOの中にも浸透してきました。
VAIOは、ベンチャースピリットを持ち続けることが強さにつながる企業です。それを忘れたときに業績が悪化する。ソニーがモノ作り企業としてのスピリットを発揮してきた経験は、今のVAIOの中にも生き続けています。これを活性化させ、新たなモノ作りの世界を作っていきたいと思っています。
私は社長に就任して以降、社員には「日本のモノ作りを元気にしたい。その一翼を担う存在にならなくてはいけない」と話をしています。
―― 2025年12月の社長就任直後に、安曇野本社で開催した説明会において、糸岡社長はソニーグループ本社に展示してあるソニーの設立趣意書の写真を持ち出し、「VAIO独立時の思いは、ソニーのモノ作りのDNAをVAIOが引き継ぐということだった」と述べ、その姿勢を改めて明確に示したのが印象的でした。VAIOでも、「自由闊達なる理想工場の建設」を目標に掲げましたね。
糸岡 VAIOは、ソニーから独立した際に、工場をそのまま継承し、その工場を本社にしました。また、法人向けPC事業を開始するのに合わせて、お客さまやパートナーに対して、この工場を公開することにしました。
それまでは、ほとんどやってこなかったことではあったのですが、予想外だったのはモノ作りの現場を見ていただくと、「これはいいね、すごいね」と言っていただくことが多く、「現場の力」が、みなさんに伝わることに手応えを感じたのです。
また、現場での質問などを通じて、お客さまの関心がモノ作りのどこにあるのかということも直接知ることができました。お客さまに育てられて、現在の本社工場の形ができあがったともいえます。
一方で、日本全体を見ると、こういったモノ作りの現場の強さというものが、大切にされていないことも感じます。私たちは、モノ作りの現場をもっと強くしていきたい。これがVAIOの差別化につながっていくと考えています。
中小企業を含めて、日本のモノ作りの現場には多くの匠の技が息づいています。人材不足や後継者不足によって、これが継承されないという課題もありますが、モノ作りの現場さえあれば、AIによって継承することができますし、より強いモノ作りにつなげることができると考えています。メーカーが、日本にモノ作りの現場を持っていることは、これからのAI時代において大きな強みになります。それをVAIOが証明していきたいと思っています。
―― ソニーが設立趣意書の中で示した「理想工場」の姿と、VAIOが目指す「理想工場」の姿はどこが違いますか?
糸岡 現場で意見をぶつけ合いながら、いいモノを作り上げるという在り方は、一緒だと思います。ただ、時代に即した「理想工場」の姿があり、そこに違いがあります。今はAIをいかに取り込むかが重要なテーマですし、かつての働き方とも違います。
「理想工場」の実現は容易なものではないと思っています。しかし、VAIOならではの新しい「理想工場」を目指すというメッセージは、社内に向けて、しばらく発信していこうと思っています。これは、ソニーの文化の中で育ってきた社員が多いVAIO社内には伝わりやすく、理解されやすいメッセージだと思っています。
―― ソニー出身の社長は、VAIOが独立したときの関取高行氏以来、2人目です。現在、ソニー出身者が社長に就くことで何が起きますか。
糸岡 理想工場の話やVAIOが持つモノ作りやDNAの話を、しっかりと語れるという点では、ソニー出身の私が社長に就くことによって起こる変化の1つだと思っています。VAIOはモノ作りの企業であるということを徹底するという点でも、私が適しているのかもしれませんね。
―― 確かに、理想工場の話やDNAの話など、ソニー時代から大切にしている姿勢や考え方などを多く発信しているように感じます。こうしたメッセージはあえて発信しているのですか。
糸岡 いや、それは自然と出ていることです。ノスタルジーに浸っているのではないかという批判があるかもしれませんが(笑)、前を向くためのポジティブなメッセージだと受け取ってもらえるといいですね。
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