世界でも異例の「マイル相続」――ANAとJALが死後のポイント引き継ぎを認める理由:古田雄介のデステック探訪(1/2 ページ)

» 2026年06月17日 12時00分 公開
[古田雄介,ITmedia]
ANAマイレージクラブの会員規約 ANAマイレージクラブの会員規約

マイル相続は国際的に見ると例外的

 今の日本で暮らしていると、ポイントと無縁でいる方が難しい。

 ショッピングモールや家電量販店で買い物をすれば、会員アカウントにポイントが付与されて、クレジットカードで払えばそちらにもポイントが加算される。広告を見たりキャンペーン中のコンテンツを消費したりすれば、お金を使っていなくてもポイントがもらえる。

 そのようにして別々にたまったポイントを交換して一カ所にまとめたり、円の代わりにしたりできる。矢野経済研究所の調べによると、2024年度の国内のポイントサービス市場は2.8兆円超の規模だという。

矢野経済研究所による「国内ポイントサービス市場規模推移・予測」(2025年12月リリース) 矢野経済研究所による「国内ポイントサービス市場規模推移・予測」(2025年12月リリース)

 ただ、この巨大市場の源泉たるポイントは、持ち主が亡くなってしまうと消滅することが大半だ。預金や証券のように相続を保証する法律はなく、他者への譲渡を認めるか否かは提供する運営元の裁量による。そして、多くの運営元は会員の死と共にポイントを行使する権利が消失する設計を採用している。

 そうした中で「相続」(※)できるポイントとして古くから知られているのが、航空会社のマイレージサービスで貯まる「マイル」だ。

※日本の法律に基づいた一般的な定義の相続ではなく、各企業が定めたルール上の相続のため、カギカッコで表記した。以降は便宜上カギカッコなしで表現する。

 日本航空(JAL)の場合、法定相続人であれば相続できると「JALマイレージバンク一般規約第14条」に明記している。全日本空輸(ANA)も、「ANAマイレージクラブ会員規約第21条」により当人の死亡から180日以内という条件の下で、法定相続人の相続を認めている。いずれも相続人間での分割はできず、1人が引き継ぐ形でのみ対応する。

JALマイレージバンク(JMB)一般規約 第14条 JALマイレージバンク(JMB)一般規約 第14条
ANAマイレージクラブ(AMC)会員規約 第21条 ANAマイレージクラブ(AMC)会員規約 第21条

 しかし、実のところ2社のスタンスは国際的にみれば例外的といえる。海外のほとんどの航空会社はマイルの相続を想定していない。例えば、現存する最も古いマイレージサービスは1981年にアメリカン航空が始めた「AAdvantage」だが、同社もマイルの相続については原則非対応のままだ。「AAdvantage」の利用規約にはこうある。

 「会員またはその遺産の財産を構成するものではなく、いかなる残存財産権価値も有せず、アメリカン航空が独自の裁量で明示的に許可した場合を除き、死亡時に譲渡することはできません」

AAdvantage利用規約 AAdvantage利用規約:G. AAdvantage会員の死亡

 ブリティッシュ・エアウェイズのように、家族でマイルを貯められるオプションを用意しているプログラムであれば、死亡時のマイル消失を回避できる余地がある。しかしそれも少数派だし、死後のことを想定して設けられたわけでもない。マイルを相続対象とみなすこと自体が普通ではないのだ。

 ではなぜ、そしていつから日本の航空会社はマイル相続を決めたのだろうか?

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