SSDの性能と信頼性を下支えする“コントローラー”の最新動向をチェック 変わり種やPCIe 6.0を見据えた動きも:COMPUTEX TAIPEI 2026(1/3 ページ)

» 2026年06月18日 12時00分 公開
[すまさ,ITmedia]

 台湾・台北市で行われる「COMPUTEX TAIPEI」というと、どうしてもPC本体やPCパーツに目が行きがちだが、これらを支える半導体(チップ)に関するブースも少なからず設置されている。この点で「COMPUTEX TAIPEI 2026」も例外ではなかった。

 価格の高騰が続いているSSD(Solid State Drive)に関連する展示ブースを見て回ると、今回はPCI Express 5.0(PCIe 5.0)対応のメインストリーム製品向けのSSDコントローラーの進化や、製品メーカーによる新たなユースケースの提案が交差する、見どころの多い内容となった。

 この記事ではSSDコントローラーの最新トレンドをレポートする。

PCIe 5.0対応SSDのスイートスポットは「毎秒48億転送(4800MT/s)」に

 SSDコントローラーメーカーにおける最大のトレンドは、PCIe 5.0対応のメインストリームモデル向け製品の拡充だ。各社の戦略の核となっているのが「4チャンネル構成のまま、「毎秒48億転送(4800MT/s)の高速NANDフラッシュに対応する」というアプローチを取っている。

 なぜ、「4チャンネル構成」と「4800MT/sの高速NANDフラッシュ」の組み合わせが“スイートスポット”となるのか。それはNANDフラッシュの「速度」と「チャンネル数」、そしてSSD内部における「オーバーヘッド」の関係から説明ができる。

 SSDでデータの読み書きが行われる際には、純粋な「データ」に加えて、その誤りを訂正するための「ECCパリティー」や、管理情報を格納する「予備領域」もセットで転送されている。近年の高密度/高速な3D NANDでは、強力なエラー訂正も欠かせず、この予備領域の比率が10〜15%に達することも珍しくない。

 これにコマンド処理などの通信オーバーヘッドなどの要因が重なることで、直近のPCIe 5.0対応SSDでは、NANDの理論上の最高速度から約25〜30%もの実効ロスが発生してしまうのが現実だ。

 例えば、従来のメインストリームモデル向けSSDコントローラー(4チャンネル×毎秒36億転送)の場合、NAND側の理論帯域は毎秒14.4GBだが、オーバーヘッドを差し引いた実効速度は毎秒10GB前後にとどまってしまう。実際に、この構成の現行SSD(PHISON Electronicsの「PS5031-E31T」コントローラーの搭載モデルなど)で読み書きの速度をテストをすると、シーケンシャルの結果は毎秒10GB前後になる。

 もし、速度を稼ぐためにチャンネル数を2倍の8チャンネルに増やせば、4レーンのPCIe 5.0バスにおいて実効速度を極限まで引き出せるようになる(毎秒約14.5GB)。しかし、その分だけ消費電力とコストが跳ね上がってしまい、排熱面の制約が大きいノートPCへの搭載は難しくなってしまう。

 加えて、8チャンネルのままNANDを毎秒48億転送に高速化すると、理論帯域が毎秒38.4GBとなり、今度は4レーンのPCI Express 5.0バスの理論最高速度(毎秒16GB)を大幅に超過してしまう。言い換えればオーバースペックすぎる状況だ。

 そこで導き出された“最適解”が、この段の冒頭で触れた「4チャンネル構成のまま、毎秒48億転送のNANDに対応する」という手法だ。これにより、NAND側の理論帯域を毎秒19.2GBに広げることができる。オーバーヘッドが30%ほど発生するものの、それを差し引いても実効速度は毎秒14GB超となり、4レーンのPCIe 5.0バスの理論性能をフルに引き出せるようになる。

 忘れてはならないのは、この「毎秒48億転送」という速度はコントローラーメーカー単独で達成したわけではないという点だ。キオクシアが開発した毎秒48億転送(Toggle DDR 6.0)対応の次世代NAND「第9世代BiCS FLASH」を始めとして、フラッシュメモリの着実な技術進化もあって、初めて実用化される。

 つまり、コントローラーメーカーとNANDメーカーがエコシステムとして歩調を合わせ、次世代NANDのポテンシャルをいち早く引き出す形で協調して完成させたのが今回の新しい設計なのだ。

キオクシア キオクシアの台湾法人のブースでは、現行の第8世代BiCS FLASHから、第9/第10世代へのポートフォリオが展示されていた

 「速度」「コスト」「消費電力」の全てを最適化できる“新設計”にいち早く対応し、今回のCOMPUTEX TAIPEIで実製品としてアピールできたのは、クライアントPC向けSSDコントローラー市場をけん引し続けるPHISON ElectronicsとSilicon Motionの2社だ。

 一方で、これまでローエンドのPCI Express 4.0(PCIe 4.0)規格にとどまっていたRealtek Semiconductorがコストパフォーマンスを武器にPCIe 5.0のエントリーSSDコントローラー市場についに参入し、InnoGritは次世代のサーバ向けPCI Express 6.0(PCIe 6.0)対応SSDコントローラーに注力するなど、各社の戦略の違いがより明確になる展示となった。

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