企業や業種の垣根を越えるコミュニティ「印刷女子」が提示する、“推し”から始まる新しい価値創造と印刷ビジネスの可能性(4/5 ページ)

» 2026年07月20日 06時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

「推しポイント」の共有が企画の種に!? “好き”から広がる印刷の世界

 プログラム後半に行われたのは、「刷って、語って、つながって。」という、印刷女子のキーワードそのままテーマにしたワークショップだ。

ワークショップのテーマ ワークショップのテーマ

 参加者は事前に「印刷の“魅力/楽しさ”を体現している」と考える印刷サンプルを持参し、その魅力や推しのポイントを、8つに分かれたテーブル(グループ)ごとに他の参加者へ向けてプレゼンテーションを行う。

 その後、テーブルごとにアイテムを1つ選定し、その印刷物が持つ特性を生かして、どのように新たな価値や企画へと発展させられるかをディスカッションし、まとまったアイデアをワークショップの最後に発表するというものだ。

推しプレゼンの一場面 推しの印刷物をプレゼンしている場面。これはOHP(オーバーヘッドプロジェクター)用紙に印刷して、メタリック調の既存の紙と合わせることで「自宅でも豪華な(同人誌の)表紙を作れる」というもの

 時間の都合上、3グループからの発表しか聞くことができなかったが、同人誌文化の発展についてのものは、かなり興味深かった。

 というのも、昔から人気のあるBLジャンルの同人誌は、国によって国内で流通できないため、わざわざ大規模同人即売会の時期に合わせて来日して購入し、その国へ持ち込むということがなされており、同人誌文化や同人誌即売会は他国でも広がりを見せている。

 しかし、「全員が参加者」という日本独自のルールやマナーが保たれた文化は特異なものであり、他国から高い関心が寄せられている。「同人誌文化だけでなく、マナーを守るという素晴らしい文化も世界へ広げていきたい」と、発表は締めくくられた。

同人文化 日本の同人文化を世界へ発信したいと、友人作の「セル結合を許さない」Excel同人誌を手に熱く語る参加者。実際は「オタク最高!」で締めくくっていた

 その他、100円ショップのクリスタルプレートと家庭用プリンタを組み合わせた推し活グッズ、活版印刷のプレスによる凹凸がもたらす触覚へのアプローチなど推したい印刷物は多岐にわたった。

300円程度で作る推し活グッズ 自宅のプリンタを使い、サービス判サイズで印刷した写真を100円ショップのクリスタルプレートで挟み込み、さらにマスキングテープで側面を覆った。「ライブ会場などで展開しても良いのでは?」という声が上がっていた

 司会者から「推し」や「推しポイント」という言葉が出るたびに、「何を言っているのだろうか」と、想像もつかなかったのだが、印刷を中心に世界が広がっていくのを感じることができた。

なぜ「女性」コミュニティなのか? 業界の課題と実践的な学びの場

 印刷業界やPC周辺機器メーカーの製造現場、開発部門、営業部門は、現在も男性比率が高い職場が多い。そのため、女性がキャリアモデルを描きにくく、孤立しやすいという構造的な課題がある。

 また、女性同士であればフラットに本音を語り合えるというメリットもある。本会は、女性同士が率直に働き方やキャリア形成について語り合い、学び合うための実践的な場となっているのだ。

印刷業界の女性割合は? こちらは、参加者が感じる「印刷業界の女性従事者の割合」アンケート結果。赤いシールはエプソングループからの参加者によるもので、さほど低くないことが特徴的だ。とはいえ、過半数の参加者は女性の割合が20%以下であると考えている

 同時に、印刷事業自体はデザインや物作りと親和性が高く、産業という分野であるにもかかわらず、女性の起業や独立に適した領域でもある。

 どの業界であれ、大量生産から多様な顧客ニーズへの対応に移行しているが、男性が「モノ」を重視するのに対し、女性は「コト」に気を配る傾向にあり、女性の場合、求められている品質や効率化以外の部分――生活者視点に立った企画力やコミュニケーション力を発揮しやすいという。

 女性の持つ“コト作り”の発想を取り入れることが、既存の事業領域を拡張し、業界全体の閉塞感を打破するための重要な鍵というわけだ。

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2026年07月21日 更新
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