続けて、Snapdragon X2 Elite搭載のSurface Laptop 13.8インチ(第8世代)とSurface Pro 13インチ(第12世代)の全体的な処理能力、AI性能、グラフィックス性能、熱挙動、バッテリー駆動時間をベンチマークテストを通してチェックしていく。
今回は一部のテストにおいて、筆者が普段使っている富士通クライアントコンピューティング製ノートPC「FMV Note U(UA-K1)」のCTOモデル(WU1-K1)との比較も実施した。WU1-K1のスペックは以下の通りだ。
ArmアーキテクチャとIntelアーキテクチャで特性に違いがあるのかどうか、結果が楽しみだ。なお、ベンチマーク結果は電源設定、室温、ファームウェア、テスト実行時のバックグラウンド処理によって変動する。ここでは絶対値そのものよりも、同一条件で並べた際の傾向を見るためのデータとして考えてほしい。
まずはCPUコアの性能をチェックしていく。今回はIntelおよびArmの両アーキテクチャに対応している「Cinebench 2026」を使ってシングルスレッド/マルチスレッドのテストを数回ずつ実施した。各機種のベストスコアは以下の通りとなった。
シングルスレッドのスコアは、いずれのモデルも十分に高いポイントを記録している。シングルスレッド性能が重要なアプリの実行には問題ないだろう。
一方で、マルチスレッドのスコアはSnapdragon X2 Elite(X2E-80-100)を搭載するSurfaceシリーズの方が優位に立った。ベストスコアベースで約2.1倍のパフォーマンスだ。
そもそも、X2E-80-100はCore Ultra 7 258Vと比べてCPUコアが4基多い上に、「全てパフォーマンスコア(しかも6基は最大クロックのより高いプライムコア)」という構成なので、有利なのはある意味で当然といえる。
アプリが“ネイティブ”であるという前提は付くが、動画エンコードや重い並列処理といったマルチスレッドを要求する作業ではSnapdragon X2 Eliteは強みを発揮しやすい。
余談だが、Cinebench 2026は今までのCinebenchシリーズよりも高負荷なテストだ。連続でテストを走らせるとスコアにブレが出る。Surfaceの2モデルではCPUコアが最大3.3GHz程度で駆動するのだが、発熱が大きくなると最大クロックが2.8GHz程度に下がる現象も見られた。システム側で適切な出力調整(サーマルスロットリング)が行われているものと推測される。
日常的なアプリ操作やビジネス処理を模した「UL Procyon」の各種スコアでは、CPUアーキテクチャによる“得意分野”の違いが表れた。
アプリの起動やファイル操作、Web閲覧を中心とした基本動作をチェックする「Essentials」の総合スコアは以下の通りで、Snapdragon X2 Elite搭載のSurfaceシリーズがわずかに上回っている。
個別テストのスコアを見てみると、アプリ起動とファイル操作での応答性においてSurfaceシリーズの優位性が高い。逆に、Webブラウザのタブ操作のテストではFMV Note Uが大差を付けて優位に立った
一方で、Microsoft Officeの主要アプリの実効速度を測る「Office Productivity」を実行してみると、Intel CPUを搭載するFMV Note Uが基本的に優位だ。
個別のテストを見てみると、Wordのテストは3機種共にスコアは僅差だが、ExcelとPowerPointのテストではFMV Note Uが“ぶっちぎり”だ。恐らく、アプリのArmアーキテクチャへの最適化がまだ十分でないことが原因なのだろう。
ただし、かなりヘビーなExcelシートやPowerPointプレゼンテーションを扱わない限りは、そこまでの性能差は感じられないだろう。
続けて、UL Procyonにある各種AIベンチマークのうち「AI Computer Vision 2」を試してみよう。
このテストでは、Web会議の背景ぼかしや顔認証、画像の分析/自動分類といった画像認識系のAI処理速度を測定できる。テストは複数のAPIで実行できるのだが、今回は3機種のNPUが共通して利用できる汎用(はんよう)API「Windows ML(WinML)」で試す。
スコアは以下の通りとなった。
理論上の性能では、Snapdragon X2 EliteのNPU「Hexagon」(80TOPS)は、Core Ultra 7 258VのNPU「Intel AI Engine」(47TOPS)の約1.9倍ある。オーバーヘッドのある汎用APIを使ったせいか、スコア差は1.67倍程度に収まった。
ともあれ、Snapdragon X2 EliteのNPUが従来のCopilot+ PC準拠のCPU(SoC)と比べて高性能であることに変わりはない。画像認識やAIパイプラインにおける処理効率が高く、AIタスクやWeb会議時のNPUによるリアルタイム処理において強みを発揮できるのは間違いない。
3Dグラフィックスは、ULのベンチマークアプリ「3DMark」で行った。
3DMarkといえばDirectX 11ベースの「Fire Strike」と、DirectX 12ベースの「Time Spy」が定番だが、これらはArmアーキテクチャに対応していない。そこで今回はArmアーキテクチャにも対応しているDirectX 12ベースのテスト「Spped Way」「Steel Nomad」「Steel Nomad Light」の3種類で比較することにした。
レイトレーシング(RT)を含むDirectX 12 Ultimateの各種描画機能を駆使するSpeed Wayでは、FMV Note Uが403ポイントと、Surfaceシリーズの最大275ポイントを上回った。グラフィックスドライバの熟成が進むIntel Arc 140V GPUのポテンシャルが垣間見える結果ともいえる。
一方で、Snapdragon X2 EliteのGPUコア(Qualcom Adreno GPU)では16基のハードウェアRTアクセラレーターを新たに搭載した。これによりArmアーキテクチャPCにおけるグラフィックス能力の“底上げ”が期待される。
実際のゲームベースのベンチマークテストとしては、スクウェア・エニックスが配信している「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(FF14ベンチマーク)を実行してみた。すると、Surfaceシリーズの方が良好なスコアを記録した。
少なくとも今回試した範囲では、一般的なゲーム描画やFSR(アップスケーリング)を併用した動作においてAdreno GPUの実用性を確認できた。
なお「ArmアーキテクチャのCPUで大丈夫なの?」という心配もあるかと思う。その辺の検証は後で改めて行う。
今回比べているPCは、いずれもモバイルカテゴリーに属するものだ。外出先で使う際のバッテリー駆動時間は気になるだろう。
そこで今回は、UL Procyonに内包されている「Video Playback Battery Life」テストでバッテリー駆動時間を計測した。
今回は条件による画面輝度の不意な変動を抑えるため、環境光センサーによる輝度の自動調整をオフにした上で、画面輝度を200ニトに“固定”している。輝度の設定にあたっては、画面表面に照度計を密着させた際の目安値(E+π×L≒628ルクス)を参照し、照度計アプリで約628ルクスとなるようにしている。
バッテリー残量100%(満充電)からスタートしたテストにおいて、クラムシェル型のSurface Laptop 13.8インチ(第8世代)、強制的に休止状態に入るまで22時間42分駆動した。使い方にもよるが、長時間の移動や屋外作業でも、ほとんどのケースでACアダプターなしで1日は十分に持つだろう。
一方、消費電力面で液晶ディスプレイよりも不利とされがちな有機EL(OLED)ディスプレイを搭載するSurface Pro 13インチ(第12世代)でも、19時間15分は駆動できた。Snapdragon X2 Eliteの省電力性能の高さがうかがえる。
では対抗機のFMV Note Uはどうだったかというと、26時間2分とより長く稼働した。というのも、筆者のFMV note Uは64Whの大容量バッテリー構成であるのに対して、Surfaceシリーズは53〜53Wh程度の容量である。1Wh当たりの駆動効率を計算すると、Surface Laptop(1Wh当たり約25.2分)とFMV Note U(1Wh当たり約24.4分)は極めて近い水準にある。少なくとも、動画再生のような低負荷シナリオでは両プラットフォーム共に十分すぎる電力効率を備えている。
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